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先週の話になりますが、2019年10月18日に北陸新幹線の被害状況についての公式情報と全線復旧目途と運転本数についてのリリースがありました。

まず被害状況から見てみましょう。

台風19号の影響による千曲川の氾濫等の影響で、北陸新幹線では長野~飯山間の線路、長野新幹線車両センター構内および新幹線車両が冠水するなど設備等に甚大な被害を受けました。

台風19号による北陸新幹線の設備等の主な被害状況について , 2019年10月18日東日本旅客鉄道株式会社 (引用:2019年10月21日)

別紙にある通り、大きく下記3点に分けられています。

(1)本線の被害
(2)長野車両センターの被害
(3)車両の被害

本線は信号用電源設備の交換が必要そうな様子が画像からわかります。車両センターも既報の通り営業車両のメンテナンスができるような状態ではないことがわかります。車両もやはり室内まで冠水し、おそらく構体内部まで浸水していると思われ、安心して運用できる状態ではないのではないかと推測されます。これは主に過去のQA+記事や他の予測情報でも推測されていた内容です。

注目するべきなのは同日発表された直通運転再開に関する情報です。

台風19号の影響 により、 北陸新幹線の一部区間(長野~上越妙高間)で運転を見合わせておりますが、復旧作業および安全確保の見通しが立ったことから、10月25日より北陸新幹線(東京~金沢間)の直通運転を再開する見込みです。

北陸新幹線(東京~金沢間)の直通運転再開見込みについて , 2019年10月18日東日本旅客鉄道株式会社 (引用:2019年10月21日)

過去のリリースで復旧目途は1~2週間、信号関係以外の復旧が必要な場合には更に期間を要するとの発表がありました。

現時点で信号関係の電源装置に甚大な被害が確認されており、この電源装置の復旧には概ね1~2週間程度かかる見込みです。ただし、信号制御装置等このほかの設備に不具合が認められた場合には、設備の復旧まで更に時間を要することになります。

北陸新幹線及び中央本線(高尾~大月間)の現況と今後の見通しについて , 2019年10月15日東日本旅客鉄道株式会社 (引用:2019年10月21日)

これは当初の調査以上の不具合はなかったということでしょう。まさに当初の見積もり通りの復旧目途となります。更に同じリリースの中で東京~金沢間の直通運転についても言及されています。

長野新幹線車両センターにおける新幹線車両の浸水被害により、限られた車両数での運用となり ます。 北陸新幹線の列車本数 は約8割となりますが、東京~金沢間の直通列車については約9 割の運転本数を確保いたします。

北陸新幹線(東京~金沢間)の直通運転再開見込みについて , 2019年10月18日東日本旅客鉄道株式会社 (引用:2019年10月21日)

上越新幹線用のE7系を優先して投入しても8割程度の本数となるということですが、興味深いのは東京~金沢間の直通列車については9割を確保するという点です。

北陸新幹線には富山~金沢間の区間運転列車である「つるぎ」があります。おそらくこの「つるぎ」の運用を減らして、直通列車の「かがやき」「はくたか」として富山以遠へも足を伸ばす形で走らせるものと思われます。その部分が「列車全体の本数は8割だが直通列車に関しては9割」という部分と思われます。

災害対応から復旧する時には暫定的に少ない輸送量から運用を再開し、設備状態を万全の体制まで復旧させるのが最善ではありますが、「つるぎ」は関西方面から北陸方面(富山)へのアクセス改善のために存在する列車です。「つるぎ」の本数が削減されるということは、多少ではあっても大阪~富山間のアクセスを悪化させる施策です。

ではなぜそこまでして直通列車を優先して走らせるのでしょうか。そもそも高速鉄道自体が長距離大量輸送のために存在するので、直通列車を優先するというのが当たり前ではあります。でも今回の判断が取られた背景には理由が2点あると考えます。

[1]航空路線対策

今回の北陸新幹線の被災に対応して、国内航空会社2社から北陸~東京便の増便が行われていました。10月18~19日の2日間にわたってANAは東京(羽田)~富山線で、JALは東京(羽田)~小松線で増便と機材の大型化を実施しています。

台風19号の影響で北陸新幹線の一部区間が不通となり、東京と北陸地方の間での移動に支障が出ていることから、ANA(全日本空輸)とJAL(日本航空)では臨時便を設定するなどしている。

ANAでは、羽田空港~富山空港間で臨時便を運航。JALでは、羽田空港~小松空港間で臨時便を運航するほか、機材の大型化も実施している。

ANAとJAL、北陸新幹線の一部不通に伴い臨時便設定 , トラベルWatch, 2019年10月17日 11:59 (引用:2019年10月21日)

以下の通り、機材変更(大型化)ならびに臨時便の設定を実施いたしますのでご案内をさせていただきます。

東京(羽田)-小松線、機材変更(大型化)ならびに臨時便設定のお知らせ , 2019年10月18日 日本航空 ,(引用:2019年10月21日)

増便・臨時便のお知らせ

ANA, (引用:2019年10月21日)

新幹線は高速での長距離大量輸送が使命で、航空路線が競合になることが多いものですが、おそらく今回も被災時の対応ではあるものの、JRとしてはそのまま航空路線の利用が定着することは避けたいと考えると思います。そのためには一刻も早く全線での運転を再開するべきというのがJRの判断としてあったと考えられます。

[2]東京からの直通乗客の多さ

「被災した北陸新幹線の営業面への影響を考える」でも引用したデータを見るとわかりますが、北陸新幹線の高崎~上越妙高間(JR東日本区間:2018年度:37,056人/日)と上越妙高~金沢間(JR西日本区間:2018年度:23,001人/日)の平均通過人員ではJR東日本区間に対してJR西日本区間は約60%程度になります。

そのデータで北陸本線の平均通過人員を見ると、米原~金沢間で2018年度には25,825人だったことが分かります(データで見るJR西日本: 区間別平均通過人員および旅客運輸収入(2018年度) )。つまり、関西方面から北陸方面への輸送量を考えても東京直通列車を優先した方がよいということになったと思われます。

北陸新幹線の10月中の直通運転再開により、新幹線の便利さと存在感が再認識されたといってもいいのではないかと感じます。これから年末に向けた首都圏からの輸送力の完全復旧に向けて、おそらく製作中の上越用E7系の納入前倒しなども検討されることと思います。

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