品質からビジネスと経営を考える
5S、製造業や現場がある業種に勤務経験がある方は必ず聞いたことがある言葉ですよね。その内容 […]
中堅社員向け 人材 改善活動 新入社員向け 現場向け5S、製造業や現場がある業種に勤務経験がある方は必ず聞いたことがある言葉ですよね。その内容を暗唱できる方も少なくないでしょう。5Sとは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾」の5つですね。
「うちでは5Sなんてなかなか…ようやく3Sをやってます」という会社も少なくないでしょう。5Sでも3Sでも大丈夫ですが、実行するステップとしては「整理」「整頓」「清掃」の3つが先、「清潔」「躾」の2つが後で、実際3Sを実施している会社でもそうなっているでしょう。
なんでそんなことを改めて申し上げるかというと、前半3Sと後半2Sで取り組みの意味が変わってくるからです。
見ての通り「整理」「整頓」「清掃」はそれぞれ人の行動です。つまり実務プロセスなのです。
整理することで要不要の選別をし、整頓して廃棄し、清掃してきれいにする、この動作・行動を会社・組織として適切に繰り返すことが大事です。
適切にというのは、ただ担当者個々人が行うのではなくて、組織として定期的に実施することが必要です。そのために必要なのが後半の2Sになります。
後半の2Sは「清潔」「躾」です。
「清潔」とは前半3Sと違い状態を示しています。不要品を捨てて掃除が終わってきれいになった状態が「清潔」ですよね。更に「躾」というのはつまり教育のことで、更に平たく言えば情報を共有することです。ここで共有するべき情報とはなにかと言えば自分が整理整頓、清掃してきたプロセスを共有するのです。
整理整頓のプロセスとは、例えばこのようなものです。
つまり「自分は3Sをやる時にこういうことに注意したよ」「こういう風に考えてこの状態を作ったよ」ということを職場の人に説明してあげて欲しいのです。
この結果として、職場のメンバーが3Sに取り組んだ方法が情報として共有されること、これからやる人やあるメンバーが取った方法を知らなかった人が情報としてその方法を知ることができることが挙げられます。それらを活用して、自分の実務の効率や質を上げることが可能になります。
要するに、2Sまでつなげて実施することで、組織における業務改善のプロセスが完成するのです。
お分かり頂けたでしょうか。「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾」で示される5Sは「業務改善プロセス」だったのです。
業務改善はご存知の通り職場の環境保全などで留まるものではないです。本質的に改善しなければならないのは本業に関わる実務内容であり、それらを支える設備の使用や治具・備品などの扱い、新しく職場に入ってきた人に対する教育など多岐にわたります。これらに対して企業の中で働く方々は日々それらについてより良いやり方がないかを考えているはずです。
これからはその考え、検討しているプロセスを5Sに当てはめて考えてみて下さい。一度改善した実務が後戻りしない、担当者によってばらばらにならないためのヒントが見つかるかも知れません。
新製品開発を手掛けたいと思う企業やエンジニアは多いと思います。では実際に開発するために何が […]
中堅社員向け 品質保証 品質管理 技術者向け 新製品を開発する 管理者向け 経営者向け 開発プロセス新製品開発を手掛けたいと思う企業やエンジニアは多いと思います。では実際に開発するために何が必要かと考えると、設計環境や部材、加工するための環境や工具が必要というイメージになることが多いと思います。
では製品を作る、そもそも物を作るとはどういうことでしょうか?
作っただけで、はい終わり!とならないのは当たり前で、作る目的だった機能が希望の性能で動作していることが重要です。しかもそれを販売する場合、ユーザの使用環境で動作すること、更にはユーザがその製品を購入した目的を達成するまで機能を満たして動き続けることが求められます。
ここに大きな問題があります。作り手はその目的を達成することを自身の目で見届けることができません。もちろん自社で耐久試験として長時間動作させている!というメーカはあるでしょう。しかしユーザから見てそれで確認が済んでいるとして安心して使って頂けるでしょうか?購入後の故障に対して、充分にご理解頂けるでしょうか?
ユーザは試験環境ではなく実使用環境でどうなのか、ユーザが使用したい対象物(ワークなど)で製品を構成している部品が持つのか、どのように動作するのか確認した結果を求めるのではないでしょうか?
では、あなたが考えたオリジナルの製品を、あなたの顧客が使いたい環境とワークで適切に動作することを測定できる測定器はどこにあるでしょうか?
答えは、そんな測定器はない、ということです。
ではどうするか?自分の製品の機能の検証はどうしたらできるのか?それは、自身で独自の製品を作りたいあなたが自分で自分で考えるしかない問題です。
考え方の順序としては、
(1)製品の機能と耐環境、耐久条件を設定し、それに対する安全率を決める
(2)製品状態で検証できる方法を考え評価方法を検討、実施方法を設定する。同時にどうしても製品状態や自社環境でできない内容を洗い出す。
(3)製品レベルの機能を実現するための要件を部品ごと、ユニットごとに設定し、評価方法を考える。製品レベルでできない評価も、部品・ユニットレベルで代替手法で実施できないか検討する。
(4)部品レベルの評価、測定箇所を規定する
そして部品の加工方法、製品の組立方法は、上記の順で構成された測定・評価プロセスで確認された品質を阻害しない方法であるべきで、それは他部署の問題ではありますが品質部門が監査の対象とすべきものです。
もちろん生産上の手順は効率も重要ですし、何より安全への配慮も大事ですが、それらをフォローして品質を維持できる方法を作ります。
そう聞くと「そんなことできない…」と思われる方や工場も多いと思いますが、そこは安心してください。品質を維持できる作り方を構築すると、実はそれが効率や安全性も満たす方法だったりするものです。心配せず、とりあえず品質を軸に考えて生産行程を見直してみましょう。
このようにして、製品の品質を測定する方法を考えて、かつ、品質を分解して工程内に組み込んでいくことで製造の段階から品質を作り込んでいくことができます。これをすると工程内検査の開発も楽になるはずです。ぜひやってみてください。
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3Dモデルは設計~設計検証で導入しているメーカも多いと思います。また、作ったモデルに対して […]
イベントレポート 中堅社員向け 事例と考察 品質保証 品質管理 技術者向け 新製品を開発する 検査 管理者向け 開発プロセス3Dモデルは設計~設計検証で導入しているメーカも多いと思います。また、作ったモデルに対してメッシュを切り評価に適用するなどすることも頻繁に行われていると思います。実物における評価に対する前段階として重要な位置を占めている要素です。
一方でそのメッシュの切り方についての評価、切られたメッシュの品質について語られることはあまり多くないと思います。また、状況によってはメッシュの切り方が職人技になっています。機械化を推進するはずの3Dモデルによる評価手法が、属人的な技能による作業を経ないと適用できないとなると本末転倒ではないでしょうか。
今回の横浜での人と車のテクノロジー展ではそのメッシュを評価対象にしたソフトウェアのアプローチを特徴とする製品群がアルテア社ブースにて紹介されていましたのでご紹介します。
1. すでに切られたメッシュの品質を評価する
複数のモデルをカタログラインナップに持つ企業の場合はモデルを流用しながら設計していることもあります。その場合にすでに切られたメッシュと、新しく作ったモデルに切られたメッシュの差があると正確な評価ができなくなってしまうことがあります。
それを解消するため、同じメッシュであるべき同一の形状をAIで自動抽出してくれる「Shape AI による形状比較」として紹介されていました。
ほぼすべての3D CADのフォーマットにも対応しているので、既に自社で持っている膨大な3Dモデルの中から似た形状を抽出し、作業を効率化できる製品だと思われます。
2. 作業者によるメッシュの切り方を評価する
担当者によってメッシュの切り方が異なったり、製品に応じてケースバイケースでメッシュ作成のコツが社内ノウハウになっていたりすることがあります。それをアルテア社では作成されたメッシュに対して各要素を設定して、ソフトに学習させ、その会社独自の、もしくはその部門で習熟した作業者のメッシュの切り方をソフトに覚えさせ、他の作業者のばらつき具合を評価して、作業者間のメッシュの切り方を安定させるなどの適用の仕方が考えられます。
シミュレーションでの評価を行う上でモデルとメッシュが複雑になる一方で、メッシュの切り方は属人性の高い領域だったと思います。それが定量的に評価できることで、技術継承と業務効率向上、最終的には作業品質の安定につながるかと思います。
製造業の各業務においても自動化が進められ、設計から加工まで一連の流れに組み込んできました。一方でその中での作業者間のばらつきやそもそもそこで扱われるデータの品質、それを使って行われる評価の品質に関しては社内ノウハウに依存して自動化・一般化が進められてきた(もしくはそれが中途半端で止まっていた)かと思います。
今後はいずれの現場でもこのような3Dデータの品質を可視化することで、最終的な製品品質の安定を目指す必要があるでしょう。
フォルビアグループ傘下のヘラー社は11日(ドイツ現地)、完全電子制御ブレーキとなるブレーキ […]
ニュース 事例と考察 技術者向け 新製品を開発する 経営者向けフォルビアグループ傘下のヘラー社は11日(ドイツ現地)、完全電子制御ブレーキとなるブレーキ・バイ・ワイヤ・ペダルの開発を受託したことを発表しました。これにより、従来のブレーキ制御とは異なり、ペダルへの入力は完全に電子的にブレーキ系に伝達されることになります。
同社はブレーキ・バイ・ワイヤによって以下のようなことが可能になるとしています。
▪ ブレーキ指令は、バイ・ワイヤー技術により電子的に伝達される
▪ 完全電子制御で自動運転機能やブレーキ機能のカスタマイズ設定に対応
▪ 軽量素材の使用と部品点数削減により車両重量の低減に貢献
▪ バイ・ワイヤー技術を使用したペダルは、コックピット・オブ・ザ・フューチャーをデザインする
新しい長期的な可能性を切り開く
生産開始は2025年に欧州から開始する予定で、ドイツの自動車メーカに納入される予定とのことです。電気式ブレーキペダルセンサーはドイツ・リップシュタットのヘラー本社で開発されているとのことです。
ブレーキ指令は、バイ・ワイヤー技術により電子的に伝達される
「ブレーキ・バイ・ワイヤ・ペダルはペダルがロットを介してブレーキシステムに機械的に接続されている従来のブレーキシステムの操作感を再現している」としています。
その一方で「ブレーキ指令の制御は、完全に電子的にのみ行われるため、自動運転の機能も同時にサポートされます。また、ブレーキ機能のカスタマイズ設定が可能となり、あらゆる走行シーンに対応したブレーキ力を実現します。」としています。
完全電子制御で自動運転機能やブレーキ機能のカスタマイズ設定に対応
同様に完全電子制御だからこそ「ブレーキ機能のカスタマイズ設定が可能となり、あらゆる走行シーンに対応したブレーキ力を実現します。」としています。
軽量素材の使用と部品点数削減により車両重量の低減に貢献
同機能のペダルにはプラスチックのみを使用するとし、部品重量を最大で20%削減するとしています。これは「電気自動車の航続距離を延ばし、内燃機関やハイブリッド駆動の自動車のCO2 排出量を削減すると同時に、高い性能と機能的な安全性を維持することができます。さらに、取り付けコストや部品点数の削減にも貢献します。」とし、いずれの駆動方式に対しても燃費向上と組み立てコスト、部品点数の低減によるコスト低減に貢献するとしています。
バイ・ワイヤー技術を使用したペダルは、コックピット・オブ・ザ・フューチャーをデザインする新しい長期的な可能性を切り開く
「ブレーキ・バイ・ワイヤーペダルでは、この点を解決することで、自由度の高い車室設計の新しい可能性を創出することができました。このように、電気式ブレーキペダルセンサーは、コックピット・オブ・ザ・フューチャーに欠かせない存在となっているのです。フォルシアのディスプレイとインテリアのソリューション、そしてヘラーのライティングとエレクトロニクスの専門知識とともに、我々はこの未来の分野におけるシステムプロバイダーとしての基盤を強化しています。」としており、車内の設計の自由度の向上と自社グループの優位性を元にこの分野の強化するとしています。
プレスリリース(英語版)
https://www.hella.com/hella-com/en/press/Technology-Products-11-07-2022-20408.html
【View of QA+】ブレーキバイワイヤの効果
電子制御ブレーキは従来からいくつかの車種に搭載されていたものの、昨今の自動運転車の制御も視野に入れたプロダクト化のリリースが出てきました。実際に電子制御化した方がペダルからの入力(手動操作)と自動運転時の操作(自動制御)の切り替えや相互の介入もしやすいように思われます。
同時に福祉車両などの手動ブレーキレバーなどの配置がより自由になったり、バイ・ワイヤであることから配線のスペースのみ考えればいい(ブレーキ装置とのリンク機構を入れるスペースが必要ない)ことから、より追加工事がしやすくなるなどのメリットもあるように思います。対応はメーカに委ねられますが、場合によってはメーカ・ディーラーオプションでの追加も可能になるかも知れません。
電子制御化によるメリットと、従来の「自動車を運転する」という行為そのものの自由度が上がるメリットの双方がありそうです。
2022年4月20日~22日の3日間に渡り東京ビッグサイトにてMedtec Japanが開 […]
事例と考察 企画者向け 品質保証 品質管理 外注先との連携 技術者向け 新製品を開発する 管理者向け 経営者向け 製品を販売する2022年4月20日~22日の3日間に渡り東京ビッグサイトにてMedtec Japanが開催されました。同時開催の見本市も含めて医療・製薬に関する技術とサービスが集積された展示会となっていました。今回はその中から特に工業系を中心に、医療向けとして提供されているものの中から一般の工業分野にも適用できそうなもの、また一般向けからアプローチを変えることで医療にも適用できる形になっているものなどを展示していたブースを主としてご紹介していきたいと思います。
日本ゼオン株式会社は樹脂材料を製品メーカに販売する企業です。近年は材料メーカが一部加工まで手掛けて販売するケースもよく見られますが、同時に既存の顧客と競合しないように異なる分野や加工方法を探すことが求められるため、展開の幅が狭まることがよくあります。日本ゼオンではそれを新しい領域に展開することで回避しています。
日本ゼオンは成型済みの樹脂材料に切削でマイクロ流路を製作するサービスを展開。マイクロ流路とは医学・生物・理学分野の他、一部工業分野でも求められている微細な流路です。実験する際などは最適なパターンを求めるため様々な流路パターンが作られます。パターンを変えやすい加工方法がとられるため、エッチングなどで作ることが多いです。
日本ゼオンではこれを切削で行うことで試作品1個からの対応が可能、トライアルで実験して最適な流路パターンで量産に入れる形になります。一方で切削するための刃物の寸法で流路の幅が決まるなどの制約もあるので、求める仕様とマッチするかの確認が重要になります。しかし切削で作る分パターンはきれいなため、量産時の品質はエッチング等の成型技術と比較すると高いレベルで安定すると思われます。
名古屋商工会議所エリアにブースを構えていたダイワ化工株式会社は今までは自動車メーカ向けのゴム製品製造に強みを持っていましたが、ゴム成型に長けたその技術力で他の業界にもアプローチしています。ダイワ化工ではゴムの成型部品の中に別部材を仕込む二色成型やインサート成型などの方法にも対応可能で、硬度や弾性の違う面を同一部品の中に作ることもできることになります。
成型可能なゴム材料の種類も多く、また3Dプリンタを導入しているため、ゴムライク樹脂を用いた従来の成型・切削に留まらない形状が実現可能、大藪代表は「3Dプリンターと射出成型を組み合わせた加工方法で作った製品は今後増やしていきたい」とのこと。
このラーメンは様々なゴムを使用して作られているため、ゴム材料の使用方法のサンプルとしてもよくできていると思います。理工系の学生さんはこれでそれぞれのゴムの硬度や成型状態の特徴なども勉強できるのではないでしょうか。丼もゴムでできていて、本来はここに液体ゴムのスープが入りますが、展示会出展時は運べないためスープは入っていない。
このゴムのラーメンは、昨年2021年10月2日に配信されたくだらないものグランプリ2021の出展作品。くだらないものグランプリは今年も第三回が開催予定、今年も各企業が業務の枠を超えて技術を使う様子が見られるのを期待しましょう。
同じく名古屋商工会議所エリアから、株式会社オーケーシーはチタン製の医療用ドリルを出展。砥石による研磨で作られた微細な刃物はステンレスより高い硬度を実現しており、金属アレルギーへの影響も小さいチタンの医療用向けのメリットを生かした製品になっています。
チタンなので製品そのものに色を付けることが可能。用途別やサイズ別など目視で確認することができるので、手術中などの交換する時間が制限されやすい医療現場
応用先に合わせて異なる形状も用意できるため、適用範囲は広そうです。インプラント手術用など歯科用途を前提としたPRをしていましたが、材料費がSUSと比較すると高めなこともあり、個人開業医よりも大きめの病院での使用例の方が多そうです。
チタンというと高価なイメージがあり、実際に単価は高くなりがちですが、性能としてチタンだからこそ作れるものもあるので、その性能にマッチした市場や使い方をするユーザには最適なツールとなると思われます。また砥石での切削・研磨での製造ということで、サイズは小さいものの形状のバリエーションなど今後の展開も考えられる製品の様に思います。
名古屋商工会議所エリアから3社目のご紹介です。サン樹脂は樹脂の切削を専門として、PC(ポリカーボネート)などの樹脂材料からCFRPなどの繊維強化樹脂にも対応。最近では3Dプリンタと切削による後加工を組み合わせた高精度なプラスチック部品の製造にも対応し、今回もそのサンプルを展示していました。積層で形状を作る3Dプリンタは穴形状の正確な出力が困難(積層方向に潰れるなど)なケースがありますが、切削であればその心配もなく高精度な加工が可能になるなど、加工の組み合わせのメリットをアピールしていました。
切削なのでバルクからの削り出しで1個からの製造も可能。実験や試作なども含め、何らかの疑問や求めることがありながら困っているなら一度問い合わせてみてもいいのではないでしょうか。
生産工程の品質管理というと仕上がりを工程内検査で確認したり製品データや機械の動作データに対して管理図を導入するなどがイメージしやすいところではありますが、あえて「製薬メーカ向け」とする理由は何なのでしょうか。
株式会社ユニオンシンクによると、製薬メーカでは改ざんに対する記録の厳密さを求められるということで、同社がそれらの業界に納める際には変更管理の部分に重点が置かれたり、工程中の逸脱管理や評価等で発覚した品質不良に関する情報をリンクさせて管理するなど変更点とその結果を結び付けた管理を強く求められるという点が特徴的でした。
同社の品質管理システムは業界向けに特化したものも多く、それに付随して業務管理や人材教育に関する情報もシステム内でリンクできるようにしているなど、品質情報に関して必要な要素を社内から収集しようとする製品構成になっているように感じました。
メーカ向けに測定器をアピールしていたのはカールツァイス株式会社です。同社の測定器は測定顕微鏡の光学測定器から接触式の三次元測定機、X線CTによる非破壊三次元測定まで網羅し、素材や製品形状などの特性に合わせた測定器を選択できるようになっています。
最後にご紹介するのはマナブデザイン株式会社と株式会社リサシステムの合同ブースです。同ブースでは医療機器の稼働状況の常時監視システムを展示、システム開発をリサシステムが、デザインをマナブデザインが手掛けた合作の商品です。
マナブデザインでは設計段階での商品のデザインを請け負う形ではなく、顧客の課題と向き合い、どの様に考えクリエイティブに展開していくか、最終的には顧客の組織にどのように落とし込むかまでを顧客に伴走しながら提供しています。
日本の中小企業は特定の技術分野で開発や生産の受託を主とする企業が多いので、開発・企画フェーズや要素技術と製品開発の橋渡し、製品設計へのユーザニーズの反映などに対応できないケースも見られます。それらの課題意識を持つ企業にとっては有効なサービスなのではないでしょうか。
金属加工や実験器具などで医療分野と工業は近いものがありましたが、2022年のMedtecで受けた印象としては、医療分野に進出したい企業、医療分野が求めている技術ともに広がりがあるように感じました。医療分野は最近ではコロナ禍における治療やワクチン接種などの設備の運用やオペレーションの構築などが話題に上りましたが、それにとどまらず医療分野の変化に沿って既存の産業にも新しい対応の仕方が求められるかもしれません。
現状で受注状況が安定している業種も今後の展開のために違うアプローチを考えておく、例えばより小さいロットサイズに対応する、取り扱う製品サイズの幅を広げる、製品安全や品質の安定レベルを上げる(狙う業界によっては下げる)ことなども含まれてくると思います。自社で取り組めることから始めることと、顧客の業界が求めることの両面から調査と取り組みを始めるのがいいと思います。
4月ですので、今回はちょっとだけ新入社員のみなさんのお役に立てそうなお話をします。 筆者の […]
中堅社員向け 人材 品質保証 技術者向け 新入社員向け 検査 現場向け4月ですので、今回はちょっとだけ新入社員のみなさんのお役に立てそうなお話をします。
筆者の新人時代の話ですが、研修期間(一応それなりの規模の企業にいたので新人研修がありました)も終わって職場にいる時間が長くなると雑用から任せ始めるのはどこの職場でもある話だと思います。
ある程度慣れてきたころ、他の人が担当していた仕事にアサインされて仕事を覚えることになりました。まず最初にすることになったのは機械加工から上がってきた部品の寸法測定でした。各寸法のみではなく幾何公差や加工部位ごとの位置関係も重要な部品だったので、座標を作りながら測定しました。
まずはもらってる図面を見ながらそこに書かれている寸法を測っていきます。それらを測り終わって書類に書き込み、関係者の承認をもらって発行するという流れです。
・次工程はお客様
製造業に勤めていれば誰でも聞いたことがある言葉、「次工程はお客様」。私がその言葉の意味を最初に実感したのがその時でした。
部品の寸法を測って、その「データを使用する=データを確認して参考にしながら次の仕事の進め方を決める」のは次の仕事を担当する部署の人たちです。寸法を測ってデータを提示する人は、その次の仕事をする人たちに参考になるデータを出す必要があります。
そのためには自分がデータを測定する時にも後の人のことを考えた測定をするべきですし、その時基準にする情報である図面にも、後工程に影響を与えるような内容の不備や不足がないかを確認しながら、必要に応じて問い合わせます。
測定する前にも各部門間で相談をしながら設計業務が進んでいるものですが、往々にして実際に形になったものだけでは情報が不足するなど、何らかの追加業務や確認が必要になるものです。
自分が作業を終わらせるだけでなく、その終わった仕事を更に活用することを考えながら仕事をすることで、効率と品質が上がります。
・目の前にある事実をデータ化し、情報として扱えるようにする
寸法を測定する対象である部品は、図面を元に加工されて目の前に存在する事実です。みなさんの課題は、この目の前にある事実である部品を、製品に組み込んで活用する(機能させる)ことです。
部品の寸法を測ることで部品の形がデータになります。更には、そのデータを次に使う人が使いやすいようにすることで、それは情報になります。つまり、情報とデータ、それらで説明される事実は常にセットで取り扱われます。
みなさんの周りではこれらが別々に使われていることはありませんか?もしくは目的に合ったデータや情報がセットになっていますか?場合によっては目的に合っていないデータを、無理やり目的に合わせようとしていませんか?
先の寸法測定の話でいえば、
「あ、図面に書かれている寸法から外れてしまった。でもこの寸法が図面と違っては困る。次工程の人のために図面で指定された情報に合っている寸法を書こう!」
これは改ざんといい、悪い事です。
事実を正確に表すデータを採取し、それがどのような意味を持つ情報なのか、別の角度から意味のある情報は存在しないのか、多面的に考えて自分の仕事に生かしていくことが必要になります。
適切なデータ採取の方法と情報、一緒に仕事をする人たちとのコミュニケーションを大事にして、仕事をして頂けたらと思います。
大変ご無沙汰しております。QA+の吉田です。長い間本サイトを放置する形で更新の間が空いてし […]
お知らせ大変ご無沙汰しております。QA+の吉田です。長い間本サイトを放置する形で更新の間が空いてしまい、大変申し訳ございませんでした。この様な状態ではございますが、サイト更新の方向性等で少々考えるところがあり、約2年の時間を費やしてしまいました。
2020年から現在までの間の日本と世界の状況をみると、製造業の役割、品質を考える意味の重要性は増してきていると思います。COVID-19用のワクチン開発で名前が挙がったような製薬ベンチャー、物理的なコミュニケーションが取れなくなったことに代わるネットワークを介したサービスの利用の広まりはこの後も残って社会の中で影響を発揮し続けると思います。
反対に商品を作り、販売する企業には悩ましい事態も多く発生し、その影響は今でも尾を引いています。港湾が閉鎖されサプライチェーンが不安定になり部品や材料の供給が滞りました。更には2022年2月24日から始まったロシアによるウクライナ侵攻に端を発する戦争の影響もあり、原材料不足とサプライチェーンの影響は、小さく見積もっても長引き、場合によっては更に大きな制約を受けそうな状況でもあります。
それであっても(もしくはそうだからこそ)生産できること、企画できること、何かを形にできることが重要な時代になっているとも感じます。エネルギーやサービスでは代替機能の開発が求められることもあります。輸入や外部調達に頼っていたものを、可能であれば内製に変えることもあり得ると思います。そういう時に生産能力があることは大事なことです。
今の日本は最後の転換点にいると考えています。何の転換点かというと日本が製造業などの生産を前提とする産業で稼ぎ続ける国でいられるかどうかの転換点です。この機を逃すと観光などの資源の活用を主とする産業のみしか国内に残らないと思います。直近10年間の日本はその観光などを盛り上げようとする経済的な施策を打ち続けてきましたが、それもCOVID-19でなくなりました。今後国家間の摩擦が大きくなれば、人の往来はより困難になるかも知れません。
そうなった場合、別の外貨を稼ぐ産業が必要になってきます。その時に(主にこのサイトを見て下さっている製造業の)「生産できる」「製造能力がある」ことが活きてきます。海外からユーザが来なくても、商品はユーザの元に送ることができるからです。外貨を稼ぐ必要性は、言うまでもなく1990年代から突入した少子高齢化による人口オーナス(経済的に人口負荷が高い=稼ぐ人より養われる人が多い状態)によるものです。
日本は1990年代に突入するまでは人口が増え続けていたので内需が増え、労働力の確保も国内のみで完結し、生産した物も国内で一定量が消費されていました。しかし今は労働力が確保できず、稼ぐ人が減った分だけ内需も減ったので生産量を確保できず、国内のみでは満足な事業収益を得ることができない国になっています。すると国内に仕事がなくなるため、労働力の国外流出が加速します。海外に行くと建設作業員などに移民が従事するケースが見られます。日本の若者が、その移民の立場で海外で働くということです。
これを解消する方法のひとつは海外も顧客にし、日本国内の自社での生産を増やすことです。事業収益が上がれば雇用の確保につながり、労働者=消費者が国内に留まります。その労働者が国内で結婚・出産すれば次の世代につながります。
私は製造業による日本経済の復興の可能性は、まだ消えてはいないのではないかと考えています。その理由としては、災害などをはじめとした日本の自然環境の特徴に対応してきた技術があること、まだ様々な企業規模の製造業が国内に残っていることがあげられます。それらを通して考えると、まだまだ日本が開発して世界に訴えられる商品や技術はあるのではないでしょうか。高度経済成長期からバブル経済、バブル崩壊にかけて日本企業の海外進出と併せて国内のサプライチェーンと生産能力の衰退が進んできました。各企業でも後継者問題など事業継続に関する問題を抱えているケースも多くあります。それでも、まだなくなったわけではないのです。
QA+では、これからは品質と技術に関する領域だけではなく、販売、マーケティング、工業のみではない工芸などの領域の生産者に関する情報も含めた各技術領域のテーマなどにも幅を広げて、記事を掲載していくことを考えています。また読者層も日本国外にもいることが分かってきました。何らかの形で、読者の皆様の今後のビジネス、ひいては人生を豊かにするために必要な情報をお送りできたらと思っております。
改めまして、何卒よろしくお願い申し上げます。
この度、QA+ではQA+ Engineering Overviewsというチャンネルを開設 […]
お知らせ 品質保証この度、QA+ではQA+ Engineering Overviewsというチャンネルを開設することとなりました。動画内でQA+についてからご説明を始めますと、品質を軸にビジネスや事業を考えるという軸をテーマにして運営してるサイトになります。
・QA+とは
品質はよく聞く言葉だと思いますが、「日本の製品は品質が高い」ですとかそういう意味合いで使われる言葉ですけど、物を作る上で気になる要素であり、ある程度は満たさないといけない要素で、その中で品質を作っていくっていうところが高いものを作っていく上で、またそれ以外の、物を作る以外の事業でもそうですけど非常に重要ではあるのでそれを軸に、テーマに事業を考えられたらなぁというのがもともとの立ち上げの理由ということになっております。
・QA+とチャンネル立ち上げの理由
私自身が製造業で10年ほど品質保証の仕事してた経験がありまして、その中で社内も含めていろんな人と関わる中で品質っていう切り口と品質保証っていう仕事のアプローチというのはやっぱり大事だなぁと、大事と感じた理由はなんだろうというのを改めて深堀りしようとして始めたのがQA+になります。
このチャンネルなんですけれどもQA+の派生コンテンツとして「QA+ エンジニアリングオーバービュー(QA+ Engneering Overviews)」ということで、もともと品質と一言でいっても事業の形とか作っている製品、プロダクトやサービスの形で色々な捉え方があります。かついろんな取り組み方が企業それぞれでやられている。そういう取り組みとか、企業と業界ごとの品質というものの切り口とか使われ方っていうのがどういうものなのかなというのを、私自身もっと詳しく知りたいと思ったのがあり、基本的には企業さんに取材をするというのを前提にして立ち上げたチャンネルです。
・当面のコンテンツについて
今回は最初のご挨拶というのも含めてそういうご説明をさせて頂きたかったというのと、今新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行でなかなか外出も出来ないというところがある中で、まずは実際に取材活動というのも今稼働している企業さんというのはどうしても必要だから稼働しているわけで、その中でもやっぱり感染症に罹患しない保証があってやってるわけではないので、やはりそういうところに取材に行くというのはやはり今現時点ではちょっと難しい部分もあるので、やはり何らかの形で少し幅広い情報をご提供できるようにしたいなと思ってるのも一つの理由としてあります。これ以外に関しても私がお話しする動画を撮らせて頂こうと思っております。
・品質を柔軟にとらえる
そういった中で、どうしても品質と考えるとどうしても堅苦しくなりがちだったりもするんですが、実は品質ってそういうものではないんだよというか、もっとフレキシブルに捉えて事業全体を構築する上で必要なキーワードであるというのを、もうちょっとわかりやすくお話できたらいいのかなと思っております。
どうしてもその会社のやり方ですとかその会社の今までやってきたことのある内容っていうのがどうしても会社全体、組織全体に染み付いていて、そこからはみ出るというのはものすごく難しいことだったりもします。その一方で今の時代っていうのは新しいことを求められてもいるので、その難しい中でも新しい事をやらなければいけないっていう状況の中でそちらに踏み出すにはどうしたらいいのかっていうのを皆さんと一緒に考えるっていう意味も含めてテーマを探っていきたいと思っています。
・品質保証を考える
どうしても品質っていうお話はあるんですけど、品質保証っていう切り口についてはなかなかの情報がないというのが現実的なところで、私もサラリーマンをやっていた時に一番困ったのはその部分です。品質保証ってそもそも何だというのと「品質管理はちゃんとしていますよ」という会社さんはすごくたくさんあるんですけど「保証って何ですか」となった時には実際にはその区別がつかないとか区別があるとまで認識していないとか、なかなかどうしてもそれまでのお仕事の内容ですとかお仕事の仕方っていう所にとらわれる、その延長線上で考えざるを得ないっていうのが品質でもあるので、日常のお仕事からちょっと外れて、改めて「ではどういうことをやって行ったらいいだろう」「その時に品質はどう考えたらいいだろう」、そういう意味合いで情報を提供しつつ一緒に考えていけたらいいのかなと思っております。というわけで今後ともQA+をよろしくお願い致します。
またこのチャンネルでもまぁできれば定期的に週1回ぐらい程度で情報というか動画をお出しできればいいかなと思っておりますので、そちらの方もご覧頂けたらありがたいです。それではよろしくお願い致します。今回はこれで失礼します。
2020年3月現在、世界は新型コロナウイルスに起因する感染症(COVID-19)拡大の渦中 […]
中堅社員向け 事例と考察 企画者向け 技術者向け 改善活動 新入社員向け 新製品を開発する 管理者向け 経営者向け2020年3月現在、世界は新型コロナウイルスに起因する感染症(COVID-19)拡大の渦中にあり、各国政府からの行動制限と重症患者の治療のニュースが連日流れている状況です。それに伴い予定されていた東京オリンピック・パラリンピックも延期を含めた検討をIOCが始めるというニュースも流れました。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて東京オリンピック・パラリンピックの開催に懸念が広がるなかIOC=国際オリンピック委員会は22日に臨時の理事会を開き大会の延期を含めた具体的な検討を組織委員会と始めることがわかりました。
東京五輪・パラの開催 延期を含めた検討へ IOC臨時理事会 (NHK NEWS WEB: 2020年3月23日 1時31分 )
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200323/k10012344641000.html
行動制限の結果世界中で産業が停止し、経済不安に陥っており、日本国内でも大規模なイベントは自粛を要請され、一部は開催に踏み切る会や団体もあるものの、多くは中止もしくは延期、開催するとしても会場への入場を禁止し様子はオンライン配信されるなど、観客が集まることがないような環境を作ることが前提となっています。
その結果従来のイベント主催者、またその関連企業や旅行会社などは経営的に厳しい状況に直面しています。前年の消費税改正に輪をかけるような行動自粛と日本にとって唯一と言っていいほど明るい話題だったオリンピックの2020年中の開催可否が問われるという不遇とも思える時期に、あえて2030年以降の話をしたいと思います。
・2030年は満州事変から約100年経過する
満州事変の口火を切った柳条湖事件が起こったのは1931年です。ここから日本は満州の占領に突き進むこととなります。更に10年後の1941年には太平洋戦争が勃発します。国際関係としては1945年に連合国側の勝利として戦争は終わりますが、かつてのこの期間、主に戦地に起こった道具の使われ方は後の世界に大きな変化をもたらします。
それまで歩兵の支援が主だった戦車が単体で戦闘に起用されるように、航空機は急速な発展とともに戦力の一角を担うようになります。その結果、戦後の世界では、かつて大砲の大きさを各国が競い合うように大きくしていった戦艦は跡形もなく消え失せ、艦隊の主役は航空母艦になります。
戦車も航空機も空母も発案されてからそれまで各国で作られていました。それが第二次世界大戦の頃には使い方が大幅に変わったのです。何が境になって使われ方が変わったのでしょうか。そもそも以前のそれらは性能が足りなかったのでしょうか?実戦で大勢で使うにはそもそも数が足りなかったのでしょうか?生産技術が未熟だったから数が作れなかったのが問題でしょうか?そういう部分もあるでしょうが、問題の本質はそこにはないように思います。
・使い方は使う人が決める、という事実
そもそも、それ以前の時代にはそれらを実戦で主力として使うという発想になっていたでしょうか?言い換えれば、「これがこのように改善されれば実戦に投入可能である」という発想が起こらずして、新しい使い方が生み出されることはないのではないかという話です。
過去の使い方に縛られ、それを前提として作戦を組むことが習慣になっている人には、新しい使い方は生み出せなかったでしょう。その新しい発想につながる環境に身を置けるかということが、物事の新しい局面に切り込むために必要なことなのではないかと思います。そして、新しい使い方をイメージで来た人だけが、そこで必要な技術に目を向け、アップデートに必要な要件を考え、その要件を満たす要素技術の改善をなし得るのではないでしょうか。
・次の100年に必要な要素の萌芽はもう既にある
かつてそうであったことが次の100年にも共通するのなら、次の時代に主力になる技術や道具、材料はもう既に社会に存在するのではないでしょうか。次の100年がどのような世界になるのかを想像し、その時我々には、もしくは我々の子や孫の世代には何が必要かを考え、今手元にある材料から何かを生み出すのは我々の想像力以外にないのではないかと思います。
人と会うことができなくなって気持ちが落ち込んでいる人も多いと思います。ある人は仕事がなくなって明日の食費にも困る状況に陥っているかもしれません。またその下降線の渦中にあり気が気ではない日々を過ごしている人もたくさんいると思います。
こんな時だからこそ、その暗い気持ちを少しの間でも脇に置き、未来を思い描き、その未来のためになるであろうことをどんなに小さなことでも一つ一つ積み重ねていけたらと思います。
自社にない機能は自分で始めてみることで内製化を進めることが一般的になるというお話をしました […]
中堅社員向け 人材 企画者向け 品質保証 技術者向け 管理者向け 経営者向け 開発プロセス自社にない機能は自分で始めてみることで内製化を進めることが一般的になるというお話をしました。では業務の内製化は既に組織の機能面に不足がない企業はする必要がないのか考えてみましょう。
・組織に不足がない企業はスキルを内製し始める
組織面から当面機能の不足を感じることがない企業の場合は各職場内にあるスキルに不足を感じることが考えられます。何故なら新しいことをやろうと思ってもその新しいことに対応するスキルがないからです。ここで、新しいスキルを社内に取り込むときに取りうる方法は2つあります。そしてそれぞれにメリットとデメリットが存在します。特に人材の観点から考えてみましょう。
(1)そのスキルを持った人材を採用する
(2)社内で新しいスキルに対応するための人材を選び教育する
(1)のメリットとデメリット
・メリット
提示できる待遇にもよりますがその道のプロフェッショナルを雇うことも可能です。その点でスキル単体の品質を高めやすい方法ではあります。
・デメリット
仮にスキルが高い人を確保できても自社の方法にマッチするかどうかが分かりません。採用した人材が「自社の文化に合わない」と思われた経験がある企業も多いと思いますが、採用された方も「自分とは合わない」と感じています。
ここで、採用した企業側が「自社の文化に合わない」と感じた場合には注意が必要です。もしかしたら、採用に当たり検討していた事業を行っていく上では新しく入社した方の考え方やアプローチの方が適切であるケースもあるからです。今まで自社で行ったことのない事業や商品を扱っていく上では、社内の文化や風土、やり方を変える必要があるかもしれないのです。もしその可能性を想定しないまま、今まで社内にない技術を持った人を雇った場合、その方が離職してしまうかもしれません。これでは、組織が変わろうとしている意欲そのものを潰してしまいかねません。新しい事業のための新しい技術やそれが使える新しい人材が欲しいならば、その事業に当たる受け入れ側の企業が、入社した方を守らなければいけません。
それに加えて、新しく入社した方が言う事とやる事を、もともといる従業員(まずは受け入れ職場)が理解できるようになるまで新しい分野の勉強をする必要があります。むしろその勉強の時間が、新しい分野を社内に取り込むための礎になります。決して、人材採用のみで新しい分野への進出が完了するわけではありません。
(2)のメリットとデメリット
・メリット
社内で新しい分野の担当者を任命して一から構築することで、外部から採用する時に発生しがちな人材側のスキルと企業側の求めているもののミスマッチを防ぐことができます。ただし、社内にノウハウがない状態は同じなので、新しい事業・商品の学習と構築を進める方向を整理しながら進めることが大事になります。
元々いる従業員が担当者になるため、社内の雰囲気が理解できないなどという問題は最小限に抑えられますが、その担当者にすべてを任せすぎると、その担当者が孤立無援になって(いると当人が感じて)しまい、本人の中に無力感や諦めのような気持ちが起きることがあります。そうすると逆効果なので、社内で担当者を選出する場合でも組織的な支援の体制は必要です。
担当者がほぼ0の状態から立ち上げるので自社にあった形を作っていくプロセスをはじめから追うことができるので、それを明文化すれば教育資料とまではならなくても簡易的に手順化ができます。担当者に余裕がなければ別の人をあてがうことも検討すべきです。その方が状況を客観的に把握できるメリットもあります。
・デメリット
社内に新しく導入したい分野や技術に関する適性のある人がいるかどうかが問題になります。数名から数十名程度しかいない中小企業の場合新しい分野を勉強するのは社長の仕事になりがちですが、それより大きい組織になると、担当者を付けることが選択肢に入ります。その場合誰に任せるかが大きなポイントになります。
この時、一度に複数人を選出したてチームで学習を進める方法や、一人が不向きだった場合に別の人物を選出するということもあり得ます。それぞれの方法に応じて組織的なケアが必要であるのは変わりません。
・内製化を本質的に進める時に取る方法論
先の記事で書いた「自分でやる」を実践することを優先して考えるならば、(2)の社内で人材を確保して立ち上げることが望ましいと思います。小さい組織が「自分でやる」ことは社長がやる事を意味するのであれば、大きい組織にとっての「自分でやる」は「自社内でやる」「自分達でやる」だからです。
自社で実施する事によってノウハウを蓄積することができれば、応用もさせやすくなりますし、これから市場が新しく興ってくる場合には既存の人材だけでは対応できない場合も考えられ、その場合はいずれにせよ自社で対応することが必要になるからです。その結果地盤ができれば外部から人材採用を行っても取り組みが評価されて採用しやすくなることも考えられます。
社内に体制を構築していく上では、もちろん外部のセミナーなどの勉強会を活用することは充分に考えられます。社内に担当者を作ることでその内容を組織として消化しやすい土壌を作ることにもつながるでしょう。
・適切な投資を行う
注意すべき点は社内に担当者を作ることは最初から大規模な投資をする負担を軽減することにつながりますが、必要な投資をしなくてもいい事にはならない点です。新しく始めたい内容について設備や資産が必要であれば購入しなければそもそも何もできませんし、新しい分野の学習を進めるにしても資料やセミナーの受講もなしで始めることはできません。
新しく始める分野に必要なことは何か、そのためにどの程度の予算が必要かはある程度最初から見積もっておく必要があります。学習や構築を進めるにつれて見積もりの精度も上がると思います。