品質からビジネスと経営を考える
3Dモデルは設計~設計検証で導入しているメーカも多いと思います。また、作ったモデルに対して […]
イベントレポート 中堅社員向け 事例と考察 品質保証 品質管理 技術者向け 新製品を開発する 検査 管理者向け 開発プロセス3Dモデルは設計~設計検証で導入しているメーカも多いと思います。また、作ったモデルに対してメッシュを切り評価に適用するなどすることも頻繁に行われていると思います。実物における評価に対する前段階として重要な位置を占めている要素です。
一方でそのメッシュの切り方についての評価、切られたメッシュの品質について語られることはあまり多くないと思います。また、状況によってはメッシュの切り方が職人技になっています。機械化を推進するはずの3Dモデルによる評価手法が、属人的な技能による作業を経ないと適用できないとなると本末転倒ではないでしょうか。
今回の横浜での人と車のテクノロジー展ではそのメッシュを評価対象にしたソフトウェアのアプローチを特徴とする製品群がアルテア社ブースにて紹介されていましたのでご紹介します。
1. すでに切られたメッシュの品質を評価する
複数のモデルをカタログラインナップに持つ企業の場合はモデルを流用しながら設計していることもあります。その場合にすでに切られたメッシュと、新しく作ったモデルに切られたメッシュの差があると正確な評価ができなくなってしまうことがあります。
それを解消するため、同じメッシュであるべき同一の形状をAIで自動抽出してくれる「Shape AI による形状比較」として紹介されていました。
ほぼすべての3D CADのフォーマットにも対応しているので、既に自社で持っている膨大な3Dモデルの中から似た形状を抽出し、作業を効率化できる製品だと思われます。
2. 作業者によるメッシュの切り方を評価する
担当者によってメッシュの切り方が異なったり、製品に応じてケースバイケースでメッシュ作成のコツが社内ノウハウになっていたりすることがあります。それをアルテア社では作成されたメッシュに対して各要素を設定して、ソフトに学習させ、その会社独自の、もしくはその部門で習熟した作業者のメッシュの切り方をソフトに覚えさせ、他の作業者のばらつき具合を評価して、作業者間のメッシュの切り方を安定させるなどの適用の仕方が考えられます。
シミュレーションでの評価を行う上でモデルとメッシュが複雑になる一方で、メッシュの切り方は属人性の高い領域だったと思います。それが定量的に評価できることで、技術継承と業務効率向上、最終的には作業品質の安定につながるかと思います。
製造業の各業務においても自動化が進められ、設計から加工まで一連の流れに組み込んできました。一方でその中での作業者間のばらつきやそもそもそこで扱われるデータの品質、それを使って行われる評価の品質に関しては社内ノウハウに依存して自動化・一般化が進められてきた(もしくはそれが中途半端で止まっていた)かと思います。
今後はいずれの現場でもこのような3Dデータの品質を可視化することで、最終的な製品品質の安定を目指す必要があるでしょう。
フォルビアグループ傘下のヘラー社は11日(ドイツ現地)、完全電子制御ブレーキとなるブレーキ […]
ニュース 事例と考察 技術者向け 新製品を開発する 経営者向けフォルビアグループ傘下のヘラー社は11日(ドイツ現地)、完全電子制御ブレーキとなるブレーキ・バイ・ワイヤ・ペダルの開発を受託したことを発表しました。これにより、従来のブレーキ制御とは異なり、ペダルへの入力は完全に電子的にブレーキ系に伝達されることになります。
同社はブレーキ・バイ・ワイヤによって以下のようなことが可能になるとしています。
▪ ブレーキ指令は、バイ・ワイヤー技術により電子的に伝達される
▪ 完全電子制御で自動運転機能やブレーキ機能のカスタマイズ設定に対応
▪ 軽量素材の使用と部品点数削減により車両重量の低減に貢献
▪ バイ・ワイヤー技術を使用したペダルは、コックピット・オブ・ザ・フューチャーをデザインする
新しい長期的な可能性を切り開く
生産開始は2025年に欧州から開始する予定で、ドイツの自動車メーカに納入される予定とのことです。電気式ブレーキペダルセンサーはドイツ・リップシュタットのヘラー本社で開発されているとのことです。
ブレーキ指令は、バイ・ワイヤー技術により電子的に伝達される
「ブレーキ・バイ・ワイヤ・ペダルはペダルがロットを介してブレーキシステムに機械的に接続されている従来のブレーキシステムの操作感を再現している」としています。
その一方で「ブレーキ指令の制御は、完全に電子的にのみ行われるため、自動運転の機能も同時にサポートされます。また、ブレーキ機能のカスタマイズ設定が可能となり、あらゆる走行シーンに対応したブレーキ力を実現します。」としています。
完全電子制御で自動運転機能やブレーキ機能のカスタマイズ設定に対応
同様に完全電子制御だからこそ「ブレーキ機能のカスタマイズ設定が可能となり、あらゆる走行シーンに対応したブレーキ力を実現します。」としています。
軽量素材の使用と部品点数削減により車両重量の低減に貢献
同機能のペダルにはプラスチックのみを使用するとし、部品重量を最大で20%削減するとしています。これは「電気自動車の航続距離を延ばし、内燃機関やハイブリッド駆動の自動車のCO2 排出量を削減すると同時に、高い性能と機能的な安全性を維持することができます。さらに、取り付けコストや部品点数の削減にも貢献します。」とし、いずれの駆動方式に対しても燃費向上と組み立てコスト、部品点数の低減によるコスト低減に貢献するとしています。
バイ・ワイヤー技術を使用したペダルは、コックピット・オブ・ザ・フューチャーをデザインする新しい長期的な可能性を切り開く
「ブレーキ・バイ・ワイヤーペダルでは、この点を解決することで、自由度の高い車室設計の新しい可能性を創出することができました。このように、電気式ブレーキペダルセンサーは、コックピット・オブ・ザ・フューチャーに欠かせない存在となっているのです。フォルシアのディスプレイとインテリアのソリューション、そしてヘラーのライティングとエレクトロニクスの専門知識とともに、我々はこの未来の分野におけるシステムプロバイダーとしての基盤を強化しています。」としており、車内の設計の自由度の向上と自社グループの優位性を元にこの分野の強化するとしています。
プレスリリース(英語版)
https://www.hella.com/hella-com/en/press/Technology-Products-11-07-2022-20408.html
【View of QA+】ブレーキバイワイヤの効果
電子制御ブレーキは従来からいくつかの車種に搭載されていたものの、昨今の自動運転車の制御も視野に入れたプロダクト化のリリースが出てきました。実際に電子制御化した方がペダルからの入力(手動操作)と自動運転時の操作(自動制御)の切り替えや相互の介入もしやすいように思われます。
同時に福祉車両などの手動ブレーキレバーなどの配置がより自由になったり、バイ・ワイヤであることから配線のスペースのみ考えればいい(ブレーキ装置とのリンク機構を入れるスペースが必要ない)ことから、より追加工事がしやすくなるなどのメリットもあるように思います。対応はメーカに委ねられますが、場合によってはメーカ・ディーラーオプションでの追加も可能になるかも知れません。
電子制御化によるメリットと、従来の「自動車を運転する」という行為そのものの自由度が上がるメリットの双方がありそうです。
2022年4月20日~22日の3日間に渡り東京ビッグサイトにてMedtec Japanが開 […]
事例と考察 企画者向け 品質保証 品質管理 外注先との連携 技術者向け 新製品を開発する 管理者向け 経営者向け 製品を販売する2022年4月20日~22日の3日間に渡り東京ビッグサイトにてMedtec Japanが開催されました。同時開催の見本市も含めて医療・製薬に関する技術とサービスが集積された展示会となっていました。今回はその中から特に工業系を中心に、医療向けとして提供されているものの中から一般の工業分野にも適用できそうなもの、また一般向けからアプローチを変えることで医療にも適用できる形になっているものなどを展示していたブースを主としてご紹介していきたいと思います。
日本ゼオン株式会社は樹脂材料を製品メーカに販売する企業です。近年は材料メーカが一部加工まで手掛けて販売するケースもよく見られますが、同時に既存の顧客と競合しないように異なる分野や加工方法を探すことが求められるため、展開の幅が狭まることがよくあります。日本ゼオンではそれを新しい領域に展開することで回避しています。
日本ゼオンは成型済みの樹脂材料に切削でマイクロ流路を製作するサービスを展開。マイクロ流路とは医学・生物・理学分野の他、一部工業分野でも求められている微細な流路です。実験する際などは最適なパターンを求めるため様々な流路パターンが作られます。パターンを変えやすい加工方法がとられるため、エッチングなどで作ることが多いです。
日本ゼオンではこれを切削で行うことで試作品1個からの対応が可能、トライアルで実験して最適な流路パターンで量産に入れる形になります。一方で切削するための刃物の寸法で流路の幅が決まるなどの制約もあるので、求める仕様とマッチするかの確認が重要になります。しかし切削で作る分パターンはきれいなため、量産時の品質はエッチング等の成型技術と比較すると高いレベルで安定すると思われます。
名古屋商工会議所エリアにブースを構えていたダイワ化工株式会社は今までは自動車メーカ向けのゴム製品製造に強みを持っていましたが、ゴム成型に長けたその技術力で他の業界にもアプローチしています。ダイワ化工ではゴムの成型部品の中に別部材を仕込む二色成型やインサート成型などの方法にも対応可能で、硬度や弾性の違う面を同一部品の中に作ることもできることになります。
成型可能なゴム材料の種類も多く、また3Dプリンタを導入しているため、ゴムライク樹脂を用いた従来の成型・切削に留まらない形状が実現可能、大藪代表は「3Dプリンターと射出成型を組み合わせた加工方法で作った製品は今後増やしていきたい」とのこと。
このラーメンは様々なゴムを使用して作られているため、ゴム材料の使用方法のサンプルとしてもよくできていると思います。理工系の学生さんはこれでそれぞれのゴムの硬度や成型状態の特徴なども勉強できるのではないでしょうか。丼もゴムでできていて、本来はここに液体ゴムのスープが入りますが、展示会出展時は運べないためスープは入っていない。
このゴムのラーメンは、昨年2021年10月2日に配信されたくだらないものグランプリ2021の出展作品。くだらないものグランプリは今年も第三回が開催予定、今年も各企業が業務の枠を超えて技術を使う様子が見られるのを期待しましょう。
同じく名古屋商工会議所エリアから、株式会社オーケーシーはチタン製の医療用ドリルを出展。砥石による研磨で作られた微細な刃物はステンレスより高い硬度を実現しており、金属アレルギーへの影響も小さいチタンの医療用向けのメリットを生かした製品になっています。
チタンなので製品そのものに色を付けることが可能。用途別やサイズ別など目視で確認することができるので、手術中などの交換する時間が制限されやすい医療現場
応用先に合わせて異なる形状も用意できるため、適用範囲は広そうです。インプラント手術用など歯科用途を前提としたPRをしていましたが、材料費がSUSと比較すると高めなこともあり、個人開業医よりも大きめの病院での使用例の方が多そうです。
チタンというと高価なイメージがあり、実際に単価は高くなりがちですが、性能としてチタンだからこそ作れるものもあるので、その性能にマッチした市場や使い方をするユーザには最適なツールとなると思われます。また砥石での切削・研磨での製造ということで、サイズは小さいものの形状のバリエーションなど今後の展開も考えられる製品の様に思います。
名古屋商工会議所エリアから3社目のご紹介です。サン樹脂は樹脂の切削を専門として、PC(ポリカーボネート)などの樹脂材料からCFRPなどの繊維強化樹脂にも対応。最近では3Dプリンタと切削による後加工を組み合わせた高精度なプラスチック部品の製造にも対応し、今回もそのサンプルを展示していました。積層で形状を作る3Dプリンタは穴形状の正確な出力が困難(積層方向に潰れるなど)なケースがありますが、切削であればその心配もなく高精度な加工が可能になるなど、加工の組み合わせのメリットをアピールしていました。
切削なのでバルクからの削り出しで1個からの製造も可能。実験や試作なども含め、何らかの疑問や求めることがありながら困っているなら一度問い合わせてみてもいいのではないでしょうか。
生産工程の品質管理というと仕上がりを工程内検査で確認したり製品データや機械の動作データに対して管理図を導入するなどがイメージしやすいところではありますが、あえて「製薬メーカ向け」とする理由は何なのでしょうか。
株式会社ユニオンシンクによると、製薬メーカでは改ざんに対する記録の厳密さを求められるということで、同社がそれらの業界に納める際には変更管理の部分に重点が置かれたり、工程中の逸脱管理や評価等で発覚した品質不良に関する情報をリンクさせて管理するなど変更点とその結果を結び付けた管理を強く求められるという点が特徴的でした。
同社の品質管理システムは業界向けに特化したものも多く、それに付随して業務管理や人材教育に関する情報もシステム内でリンクできるようにしているなど、品質情報に関して必要な要素を社内から収集しようとする製品構成になっているように感じました。
メーカ向けに測定器をアピールしていたのはカールツァイス株式会社です。同社の測定器は測定顕微鏡の光学測定器から接触式の三次元測定機、X線CTによる非破壊三次元測定まで網羅し、素材や製品形状などの特性に合わせた測定器を選択できるようになっています。
最後にご紹介するのはマナブデザイン株式会社と株式会社リサシステムの合同ブースです。同ブースでは医療機器の稼働状況の常時監視システムを展示、システム開発をリサシステムが、デザインをマナブデザインが手掛けた合作の商品です。
マナブデザインでは設計段階での商品のデザインを請け負う形ではなく、顧客の課題と向き合い、どの様に考えクリエイティブに展開していくか、最終的には顧客の組織にどのように落とし込むかまでを顧客に伴走しながら提供しています。
日本の中小企業は特定の技術分野で開発や生産の受託を主とする企業が多いので、開発・企画フェーズや要素技術と製品開発の橋渡し、製品設計へのユーザニーズの反映などに対応できないケースも見られます。それらの課題意識を持つ企業にとっては有効なサービスなのではないでしょうか。
金属加工や実験器具などで医療分野と工業は近いものがありましたが、2022年のMedtecで受けた印象としては、医療分野に進出したい企業、医療分野が求めている技術ともに広がりがあるように感じました。医療分野は最近ではコロナ禍における治療やワクチン接種などの設備の運用やオペレーションの構築などが話題に上りましたが、それにとどまらず医療分野の変化に沿って既存の産業にも新しい対応の仕方が求められるかもしれません。
現状で受注状況が安定している業種も今後の展開のために違うアプローチを考えておく、例えばより小さいロットサイズに対応する、取り扱う製品サイズの幅を広げる、製品安全や品質の安定レベルを上げる(狙う業界によっては下げる)ことなども含まれてくると思います。自社で取り組めることから始めることと、顧客の業界が求めることの両面から調査と取り組みを始めるのがいいと思います。
4月ですので、今回はちょっとだけ新入社員のみなさんのお役に立てそうなお話をします。 筆者の […]
中堅社員向け 人材 品質保証 技術者向け 新入社員向け 検査 現場向け4月ですので、今回はちょっとだけ新入社員のみなさんのお役に立てそうなお話をします。
筆者の新人時代の話ですが、研修期間(一応それなりの規模の企業にいたので新人研修がありました)も終わって職場にいる時間が長くなると雑用から任せ始めるのはどこの職場でもある話だと思います。
ある程度慣れてきたころ、他の人が担当していた仕事にアサインされて仕事を覚えることになりました。まず最初にすることになったのは機械加工から上がってきた部品の寸法測定でした。各寸法のみではなく幾何公差や加工部位ごとの位置関係も重要な部品だったので、座標を作りながら測定しました。
まずはもらってる図面を見ながらそこに書かれている寸法を測っていきます。それらを測り終わって書類に書き込み、関係者の承認をもらって発行するという流れです。
・次工程はお客様
製造業に勤めていれば誰でも聞いたことがある言葉、「次工程はお客様」。私がその言葉の意味を最初に実感したのがその時でした。
部品の寸法を測って、その「データを使用する=データを確認して参考にしながら次の仕事の進め方を決める」のは次の仕事を担当する部署の人たちです。寸法を測ってデータを提示する人は、その次の仕事をする人たちに参考になるデータを出す必要があります。
そのためには自分がデータを測定する時にも後の人のことを考えた測定をするべきですし、その時基準にする情報である図面にも、後工程に影響を与えるような内容の不備や不足がないかを確認しながら、必要に応じて問い合わせます。
測定する前にも各部門間で相談をしながら設計業務が進んでいるものですが、往々にして実際に形になったものだけでは情報が不足するなど、何らかの追加業務や確認が必要になるものです。
自分が作業を終わらせるだけでなく、その終わった仕事を更に活用することを考えながら仕事をすることで、効率と品質が上がります。
・目の前にある事実をデータ化し、情報として扱えるようにする
寸法を測定する対象である部品は、図面を元に加工されて目の前に存在する事実です。みなさんの課題は、この目の前にある事実である部品を、製品に組み込んで活用する(機能させる)ことです。
部品の寸法を測ることで部品の形がデータになります。更には、そのデータを次に使う人が使いやすいようにすることで、それは情報になります。つまり、情報とデータ、それらで説明される事実は常にセットで取り扱われます。
みなさんの周りではこれらが別々に使われていることはありませんか?もしくは目的に合ったデータや情報がセットになっていますか?場合によっては目的に合っていないデータを、無理やり目的に合わせようとしていませんか?
先の寸法測定の話でいえば、
「あ、図面に書かれている寸法から外れてしまった。でもこの寸法が図面と違っては困る。次工程の人のために図面で指定された情報に合っている寸法を書こう!」
これは改ざんといい、悪い事です。
事実を正確に表すデータを採取し、それがどのような意味を持つ情報なのか、別の角度から意味のある情報は存在しないのか、多面的に考えて自分の仕事に生かしていくことが必要になります。
適切なデータ採取の方法と情報、一緒に仕事をする人たちとのコミュニケーションを大事にして、仕事をして頂けたらと思います。
大変ご無沙汰しております。QA+の吉田です。長い間本サイトを放置する形で更新の間が空いてし […]
お知らせ大変ご無沙汰しております。QA+の吉田です。長い間本サイトを放置する形で更新の間が空いてしまい、大変申し訳ございませんでした。この様な状態ではございますが、サイト更新の方向性等で少々考えるところがあり、約2年の時間を費やしてしまいました。
2020年から現在までの間の日本と世界の状況をみると、製造業の役割、品質を考える意味の重要性は増してきていると思います。COVID-19用のワクチン開発で名前が挙がったような製薬ベンチャー、物理的なコミュニケーションが取れなくなったことに代わるネットワークを介したサービスの利用の広まりはこの後も残って社会の中で影響を発揮し続けると思います。
反対に商品を作り、販売する企業には悩ましい事態も多く発生し、その影響は今でも尾を引いています。港湾が閉鎖されサプライチェーンが不安定になり部品や材料の供給が滞りました。更には2022年2月24日から始まったロシアによるウクライナ侵攻に端を発する戦争の影響もあり、原材料不足とサプライチェーンの影響は、小さく見積もっても長引き、場合によっては更に大きな制約を受けそうな状況でもあります。
それであっても(もしくはそうだからこそ)生産できること、企画できること、何かを形にできることが重要な時代になっているとも感じます。エネルギーやサービスでは代替機能の開発が求められることもあります。輸入や外部調達に頼っていたものを、可能であれば内製に変えることもあり得ると思います。そういう時に生産能力があることは大事なことです。
今の日本は最後の転換点にいると考えています。何の転換点かというと日本が製造業などの生産を前提とする産業で稼ぎ続ける国でいられるかどうかの転換点です。この機を逃すと観光などの資源の活用を主とする産業のみしか国内に残らないと思います。直近10年間の日本はその観光などを盛り上げようとする経済的な施策を打ち続けてきましたが、それもCOVID-19でなくなりました。今後国家間の摩擦が大きくなれば、人の往来はより困難になるかも知れません。
そうなった場合、別の外貨を稼ぐ産業が必要になってきます。その時に(主にこのサイトを見て下さっている製造業の)「生産できる」「製造能力がある」ことが活きてきます。海外からユーザが来なくても、商品はユーザの元に送ることができるからです。外貨を稼ぐ必要性は、言うまでもなく1990年代から突入した少子高齢化による人口オーナス(経済的に人口負荷が高い=稼ぐ人より養われる人が多い状態)によるものです。
日本は1990年代に突入するまでは人口が増え続けていたので内需が増え、労働力の確保も国内のみで完結し、生産した物も国内で一定量が消費されていました。しかし今は労働力が確保できず、稼ぐ人が減った分だけ内需も減ったので生産量を確保できず、国内のみでは満足な事業収益を得ることができない国になっています。すると国内に仕事がなくなるため、労働力の国外流出が加速します。海外に行くと建設作業員などに移民が従事するケースが見られます。日本の若者が、その移民の立場で海外で働くということです。
これを解消する方法のひとつは海外も顧客にし、日本国内の自社での生産を増やすことです。事業収益が上がれば雇用の確保につながり、労働者=消費者が国内に留まります。その労働者が国内で結婚・出産すれば次の世代につながります。
私は製造業による日本経済の復興の可能性は、まだ消えてはいないのではないかと考えています。その理由としては、災害などをはじめとした日本の自然環境の特徴に対応してきた技術があること、まだ様々な企業規模の製造業が国内に残っていることがあげられます。それらを通して考えると、まだまだ日本が開発して世界に訴えられる商品や技術はあるのではないでしょうか。高度経済成長期からバブル経済、バブル崩壊にかけて日本企業の海外進出と併せて国内のサプライチェーンと生産能力の衰退が進んできました。各企業でも後継者問題など事業継続に関する問題を抱えているケースも多くあります。それでも、まだなくなったわけではないのです。
QA+では、これからは品質と技術に関する領域だけではなく、販売、マーケティング、工業のみではない工芸などの領域の生産者に関する情報も含めた各技術領域のテーマなどにも幅を広げて、記事を掲載していくことを考えています。また読者層も日本国外にもいることが分かってきました。何らかの形で、読者の皆様の今後のビジネス、ひいては人生を豊かにするために必要な情報をお送りできたらと思っております。
改めまして、何卒よろしくお願い申し上げます。
この度、QA+ではQA+ Engineering Overviewsというチャンネルを開設 […]
お知らせ 品質保証この度、QA+ではQA+ Engineering Overviewsというチャンネルを開設することとなりました。動画内でQA+についてからご説明を始めますと、品質を軸にビジネスや事業を考えるという軸をテーマにして運営してるサイトになります。
・QA+とは
品質はよく聞く言葉だと思いますが、「日本の製品は品質が高い」ですとかそういう意味合いで使われる言葉ですけど、物を作る上で気になる要素であり、ある程度は満たさないといけない要素で、その中で品質を作っていくっていうところが高いものを作っていく上で、またそれ以外の、物を作る以外の事業でもそうですけど非常に重要ではあるのでそれを軸に、テーマに事業を考えられたらなぁというのがもともとの立ち上げの理由ということになっております。
・QA+とチャンネル立ち上げの理由
私自身が製造業で10年ほど品質保証の仕事してた経験がありまして、その中で社内も含めていろんな人と関わる中で品質っていう切り口と品質保証っていう仕事のアプローチというのはやっぱり大事だなぁと、大事と感じた理由はなんだろうというのを改めて深堀りしようとして始めたのがQA+になります。
このチャンネルなんですけれどもQA+の派生コンテンツとして「QA+ エンジニアリングオーバービュー(QA+ Engneering Overviews)」ということで、もともと品質と一言でいっても事業の形とか作っている製品、プロダクトやサービスの形で色々な捉え方があります。かついろんな取り組み方が企業それぞれでやられている。そういう取り組みとか、企業と業界ごとの品質というものの切り口とか使われ方っていうのがどういうものなのかなというのを、私自身もっと詳しく知りたいと思ったのがあり、基本的には企業さんに取材をするというのを前提にして立ち上げたチャンネルです。
・当面のコンテンツについて
今回は最初のご挨拶というのも含めてそういうご説明をさせて頂きたかったというのと、今新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行でなかなか外出も出来ないというところがある中で、まずは実際に取材活動というのも今稼働している企業さんというのはどうしても必要だから稼働しているわけで、その中でもやっぱり感染症に罹患しない保証があってやってるわけではないので、やはりそういうところに取材に行くというのはやはり今現時点ではちょっと難しい部分もあるので、やはり何らかの形で少し幅広い情報をご提供できるようにしたいなと思ってるのも一つの理由としてあります。これ以外に関しても私がお話しする動画を撮らせて頂こうと思っております。
・品質を柔軟にとらえる
そういった中で、どうしても品質と考えるとどうしても堅苦しくなりがちだったりもするんですが、実は品質ってそういうものではないんだよというか、もっとフレキシブルに捉えて事業全体を構築する上で必要なキーワードであるというのを、もうちょっとわかりやすくお話できたらいいのかなと思っております。
どうしてもその会社のやり方ですとかその会社の今までやってきたことのある内容っていうのがどうしても会社全体、組織全体に染み付いていて、そこからはみ出るというのはものすごく難しいことだったりもします。その一方で今の時代っていうのは新しいことを求められてもいるので、その難しい中でも新しい事をやらなければいけないっていう状況の中でそちらに踏み出すにはどうしたらいいのかっていうのを皆さんと一緒に考えるっていう意味も含めてテーマを探っていきたいと思っています。
・品質保証を考える
どうしても品質っていうお話はあるんですけど、品質保証っていう切り口についてはなかなかの情報がないというのが現実的なところで、私もサラリーマンをやっていた時に一番困ったのはその部分です。品質保証ってそもそも何だというのと「品質管理はちゃんとしていますよ」という会社さんはすごくたくさんあるんですけど「保証って何ですか」となった時には実際にはその区別がつかないとか区別があるとまで認識していないとか、なかなかどうしてもそれまでのお仕事の内容ですとかお仕事の仕方っていう所にとらわれる、その延長線上で考えざるを得ないっていうのが品質でもあるので、日常のお仕事からちょっと外れて、改めて「ではどういうことをやって行ったらいいだろう」「その時に品質はどう考えたらいいだろう」、そういう意味合いで情報を提供しつつ一緒に考えていけたらいいのかなと思っております。というわけで今後ともQA+をよろしくお願い致します。
またこのチャンネルでもまぁできれば定期的に週1回ぐらい程度で情報というか動画をお出しできればいいかなと思っておりますので、そちらの方もご覧頂けたらありがたいです。それではよろしくお願い致します。今回はこれで失礼します。
2020年3月現在、世界は新型コロナウイルスに起因する感染症(COVID-19)拡大の渦中 […]
中堅社員向け 事例と考察 企画者向け 技術者向け 改善活動 新入社員向け 新製品を開発する 管理者向け 経営者向け2020年3月現在、世界は新型コロナウイルスに起因する感染症(COVID-19)拡大の渦中にあり、各国政府からの行動制限と重症患者の治療のニュースが連日流れている状況です。それに伴い予定されていた東京オリンピック・パラリンピックも延期を含めた検討をIOCが始めるというニュースも流れました。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて東京オリンピック・パラリンピックの開催に懸念が広がるなかIOC=国際オリンピック委員会は22日に臨時の理事会を開き大会の延期を含めた具体的な検討を組織委員会と始めることがわかりました。
東京五輪・パラの開催 延期を含めた検討へ IOC臨時理事会 (NHK NEWS WEB: 2020年3月23日 1時31分 )
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200323/k10012344641000.html
行動制限の結果世界中で産業が停止し、経済不安に陥っており、日本国内でも大規模なイベントは自粛を要請され、一部は開催に踏み切る会や団体もあるものの、多くは中止もしくは延期、開催するとしても会場への入場を禁止し様子はオンライン配信されるなど、観客が集まることがないような環境を作ることが前提となっています。
その結果従来のイベント主催者、またその関連企業や旅行会社などは経営的に厳しい状況に直面しています。前年の消費税改正に輪をかけるような行動自粛と日本にとって唯一と言っていいほど明るい話題だったオリンピックの2020年中の開催可否が問われるという不遇とも思える時期に、あえて2030年以降の話をしたいと思います。
・2030年は満州事変から約100年経過する
満州事変の口火を切った柳条湖事件が起こったのは1931年です。ここから日本は満州の占領に突き進むこととなります。更に10年後の1941年には太平洋戦争が勃発します。国際関係としては1945年に連合国側の勝利として戦争は終わりますが、かつてのこの期間、主に戦地に起こった道具の使われ方は後の世界に大きな変化をもたらします。
それまで歩兵の支援が主だった戦車が単体で戦闘に起用されるように、航空機は急速な発展とともに戦力の一角を担うようになります。その結果、戦後の世界では、かつて大砲の大きさを各国が競い合うように大きくしていった戦艦は跡形もなく消え失せ、艦隊の主役は航空母艦になります。
戦車も航空機も空母も発案されてからそれまで各国で作られていました。それが第二次世界大戦の頃には使い方が大幅に変わったのです。何が境になって使われ方が変わったのでしょうか。そもそも以前のそれらは性能が足りなかったのでしょうか?実戦で大勢で使うにはそもそも数が足りなかったのでしょうか?生産技術が未熟だったから数が作れなかったのが問題でしょうか?そういう部分もあるでしょうが、問題の本質はそこにはないように思います。
・使い方は使う人が決める、という事実
そもそも、それ以前の時代にはそれらを実戦で主力として使うという発想になっていたでしょうか?言い換えれば、「これがこのように改善されれば実戦に投入可能である」という発想が起こらずして、新しい使い方が生み出されることはないのではないかという話です。
過去の使い方に縛られ、それを前提として作戦を組むことが習慣になっている人には、新しい使い方は生み出せなかったでしょう。その新しい発想につながる環境に身を置けるかということが、物事の新しい局面に切り込むために必要なことなのではないかと思います。そして、新しい使い方をイメージで来た人だけが、そこで必要な技術に目を向け、アップデートに必要な要件を考え、その要件を満たす要素技術の改善をなし得るのではないでしょうか。
・次の100年に必要な要素の萌芽はもう既にある
かつてそうであったことが次の100年にも共通するのなら、次の時代に主力になる技術や道具、材料はもう既に社会に存在するのではないでしょうか。次の100年がどのような世界になるのかを想像し、その時我々には、もしくは我々の子や孫の世代には何が必要かを考え、今手元にある材料から何かを生み出すのは我々の想像力以外にないのではないかと思います。
人と会うことができなくなって気持ちが落ち込んでいる人も多いと思います。ある人は仕事がなくなって明日の食費にも困る状況に陥っているかもしれません。またその下降線の渦中にあり気が気ではない日々を過ごしている人もたくさんいると思います。
こんな時だからこそ、その暗い気持ちを少しの間でも脇に置き、未来を思い描き、その未来のためになるであろうことをどんなに小さなことでも一つ一つ積み重ねていけたらと思います。
自社にない機能は自分で始めてみることで内製化を進めることが一般的になるというお話をしました […]
中堅社員向け 人材 企画者向け 品質保証 技術者向け 管理者向け 経営者向け 開発プロセス自社にない機能は自分で始めてみることで内製化を進めることが一般的になるというお話をしました。では業務の内製化は既に組織の機能面に不足がない企業はする必要がないのか考えてみましょう。
・組織に不足がない企業はスキルを内製し始める
組織面から当面機能の不足を感じることがない企業の場合は各職場内にあるスキルに不足を感じることが考えられます。何故なら新しいことをやろうと思ってもその新しいことに対応するスキルがないからです。ここで、新しいスキルを社内に取り込むときに取りうる方法は2つあります。そしてそれぞれにメリットとデメリットが存在します。特に人材の観点から考えてみましょう。
(1)そのスキルを持った人材を採用する
(2)社内で新しいスキルに対応するための人材を選び教育する
(1)のメリットとデメリット
・メリット
提示できる待遇にもよりますがその道のプロフェッショナルを雇うことも可能です。その点でスキル単体の品質を高めやすい方法ではあります。
・デメリット
仮にスキルが高い人を確保できても自社の方法にマッチするかどうかが分かりません。採用した人材が「自社の文化に合わない」と思われた経験がある企業も多いと思いますが、採用された方も「自分とは合わない」と感じています。
ここで、採用した企業側が「自社の文化に合わない」と感じた場合には注意が必要です。もしかしたら、採用に当たり検討していた事業を行っていく上では新しく入社した方の考え方やアプローチの方が適切であるケースもあるからです。今まで自社で行ったことのない事業や商品を扱っていく上では、社内の文化や風土、やり方を変える必要があるかもしれないのです。もしその可能性を想定しないまま、今まで社内にない技術を持った人を雇った場合、その方が離職してしまうかもしれません。これでは、組織が変わろうとしている意欲そのものを潰してしまいかねません。新しい事業のための新しい技術やそれが使える新しい人材が欲しいならば、その事業に当たる受け入れ側の企業が、入社した方を守らなければいけません。
それに加えて、新しく入社した方が言う事とやる事を、もともといる従業員(まずは受け入れ職場)が理解できるようになるまで新しい分野の勉強をする必要があります。むしろその勉強の時間が、新しい分野を社内に取り込むための礎になります。決して、人材採用のみで新しい分野への進出が完了するわけではありません。
(2)のメリットとデメリット
・メリット
社内で新しい分野の担当者を任命して一から構築することで、外部から採用する時に発生しがちな人材側のスキルと企業側の求めているもののミスマッチを防ぐことができます。ただし、社内にノウハウがない状態は同じなので、新しい事業・商品の学習と構築を進める方向を整理しながら進めることが大事になります。
元々いる従業員が担当者になるため、社内の雰囲気が理解できないなどという問題は最小限に抑えられますが、その担当者にすべてを任せすぎると、その担当者が孤立無援になって(いると当人が感じて)しまい、本人の中に無力感や諦めのような気持ちが起きることがあります。そうすると逆効果なので、社内で担当者を選出する場合でも組織的な支援の体制は必要です。
担当者がほぼ0の状態から立ち上げるので自社にあった形を作っていくプロセスをはじめから追うことができるので、それを明文化すれば教育資料とまではならなくても簡易的に手順化ができます。担当者に余裕がなければ別の人をあてがうことも検討すべきです。その方が状況を客観的に把握できるメリットもあります。
・デメリット
社内に新しく導入したい分野や技術に関する適性のある人がいるかどうかが問題になります。数名から数十名程度しかいない中小企業の場合新しい分野を勉強するのは社長の仕事になりがちですが、それより大きい組織になると、担当者を付けることが選択肢に入ります。その場合誰に任せるかが大きなポイントになります。
この時、一度に複数人を選出したてチームで学習を進める方法や、一人が不向きだった場合に別の人物を選出するということもあり得ます。それぞれの方法に応じて組織的なケアが必要であるのは変わりません。
・内製化を本質的に進める時に取る方法論
先の記事で書いた「自分でやる」を実践することを優先して考えるならば、(2)の社内で人材を確保して立ち上げることが望ましいと思います。小さい組織が「自分でやる」ことは社長がやる事を意味するのであれば、大きい組織にとっての「自分でやる」は「自社内でやる」「自分達でやる」だからです。
自社で実施する事によってノウハウを蓄積することができれば、応用もさせやすくなりますし、これから市場が新しく興ってくる場合には既存の人材だけでは対応できない場合も考えられ、その場合はいずれにせよ自社で対応することが必要になるからです。その結果地盤ができれば外部から人材採用を行っても取り組みが評価されて採用しやすくなることも考えられます。
社内に体制を構築していく上では、もちろん外部のセミナーなどの勉強会を活用することは充分に考えられます。社内に担当者を作ることでその内容を組織として消化しやすい土壌を作ることにもつながるでしょう。
・適切な投資を行う
注意すべき点は社内に担当者を作ることは最初から大規模な投資をする負担を軽減することにつながりますが、必要な投資をしなくてもいい事にはならない点です。新しく始めたい内容について設備や資産が必要であれば購入しなければそもそも何もできませんし、新しい分野の学習を進めるにしても資料やセミナーの受講もなしで始めることはできません。
新しく始める分野に必要なことは何か、そのためにどの程度の予算が必要かはある程度最初から見積もっておく必要があります。学習や構築を進めるにつれて見積もりの精度も上がると思います。
もう2020年も最初の一か月が終わろうとしていますが、ここでこれから先の時代に向けたプロセ […]
マーケティング 中堅社員向け 人材 企画者向け 品質保証 外注先との連携 技術者向け 新入社員向け 新製品を開発する 現場向け 生産プロセス 管理者向け 経営者向け 製品を販売する 開発プロセスもう2020年も最初の一か月が終わろうとしていますが、ここでこれから先の時代に向けたプロセス構築のため、今まで既に動きがあり、今後加速していくように思われることについて書き留めておきたいと思います。
製造業、特に機械加工等や大きな生産工程が必要な工業製品の分野では、自社のコアになる技術を伸ばして、それ以外の生産設備や開発能力は外注化するのが一般的だったと思います。少なくとも1980年代以降はそのような動きが徐々に進んできた時代であり、海外への移管も視野に入り、時代が進むにつれて完成品メーカも部品メーカも量産フェーズでは海外で作って海外で売る時代になりました。
今まで海外に出た企業や工程、製品の販売ルートなどの一部はまだ海外で維持されると思いますが、2020年を迎え、更には2030年代から次の100年に向けて、しばらくは「内製化」が大きなキーワードになると筆者は予測しています。その理由をSCMの成り立ちをおさらいしながらご説明します。
・SCMという言葉の裏にあるもの
製造業では専門性の高い業務を外注先として活用し、供給網を形作りますが、その例としてよく自動車メーカが上げられます。完成車メーカの供給網は強固ですが、他の業種にもこれに類する形態があります。
発注元である完成品メーカはSCM(サプライチェーンマネジメント)と呼び管理対象としています。完成品メーカが意識するのは完成品メーカが直接見ることができ統括できる稼働状況(コスト・納期・品質)ですが、一方でそれらを満たすために活動している各企業の経営状態なのかはおおもとの発注元にとっては関知しない、もしくはできないことでもあります。特にコストダウンについては毎年のように「企業努力」としながら値下げを求められている企業も少なくないと思います。
その結果、その会社の仕事をこなすことを主体にする企業が出来上がります。同じ業界、同じ顧客、類似の製品の対応を延々と続けていると、それ以外の業界や市場の開拓、新しい顧客の獲得、新規の製品や技術開発に対応するコストが上がります。経営上、実際に工数や費用も掛かりますが、取り組もうとするマインドがないと動けなくなります。有り体に言えば億劫になります。何故なら今までと同じ仕事をしていれば売り上げはあがるので、無理に新しいことをする必要はないからです。
一社依存度、業界依存度の高い系列内の「下請け企業」の出来上がりです。
・大企業、中小企業とも組織構造に不足を感じるようになる
日本の場合時代を追ってこの状況をより加速させてきたわけですが、この状況を維持しきれない状況がやって来ます。時代によって売れる商品が変わるので、必然的にサプライチェーンの組み換えが起こります。特に殊更言われるのは電気自動車の例です。自動車の原動機が内燃機関で動いていた時代から電池とモータになれば当然部品の構成が変わります。すると調達先も変わる可能性が出てくるということです。
売れ筋商品が変わると、それが取引先に発注数量の増減や新規契約や契約の終了などの形で波及します。ここまでに動向を把握し次の手を打っていれば主力商品や主要顧客を切り替えることも可能でしょうが、領域を広げる取り組みをしていなければそれも難しくなります。
大企業であれば新しい取引先を探したり、資本力に物を言わせて新しい取り組みをしている企業や商品を買うという選択肢もあります。同業種の企業を買収したりOEMで販売商品を揃えることに切り替えるなどの手です。この場合、同程度の性能の製品や、同じ外観の付属品や本体が別ブランドで流通している、などの状況が見られることもあります。これらは企業規模を問わず新しい商流、新しい取引先、新しい技術と商品を求めてサプライチェーンを飛び出さないといけない時代に入っていることにほかならず、実際に各企業がその風を肌で感じていると思います。
中小企業の場合、今までお世話になっていたサプライチェーンから出たとき、従うルールや報告する先がなくなる一方でいろいろな業務が主に自分たち(多くの場合社長)の手元に山積します。事業や商品を企画するのも、新事業の担当者の面倒を見るのも、外注先に頼むならその交渉も、商品の営業にいくのも社長の仕事です。もし売れた商品に不備があったならユーザがクレームしてくるかもしれません。その対応も受け付けはできても対応ができるのは社長である場合が多いでしょう。
・内製化が進むのは中小企業から
予算面の余裕から外注先に頼める部分があるのならまだよくて、資本力のない企業は「自分でやる」しかありません。中小企業の場合、特定の技能を持つ人材や目的にあった出力が可能な加工機などの設備を保有しています。しかし、新規の顧客をつかむ営業部隊や、ユーザクレームに対応するコールセンターは持っていないならば、それらは企画者(事実上権限が集まる社長)の仕事になります。
つまり、今までSCMの最上流に位置していた完成品メーカの品質保証体制と営業力に頼りなにもしていなかった部分がすべて自社で内製化すべき作業になります。決して一つの製品を作る上で必要な隣接した工程を内製化するのではないのです。ビジネスを進める上で必要になる組織の機能を、自社内に作ることから内製化が始まるのです。自分のスマートフォンで商品の写真を撮り、自分でチラシを作り自分の手で配るのです。
「デザイナーに頼めばやってくれるんじゃないのか?こっちには予算がないんだから安くやってくれるように頼んで、デザイナーが何か作りたいときに手伝えばいい」とお思いでしょうか?それはSCMの中で生きてきた企業が発注元の企業にやられてきたことではないですか?それで苦しくはなかったでしょうか?何故人は自分が「苦しい」「嫌だ」と思っていたことを、立場が変わったら他人にしてしまうのでしょうか?外注先に依頼する予算があっても、依頼内容を考え、適正かどうか判断をするのは発注者です。外注すれば終わるわけではありません。
仮にそう思っていないとしてもまず自社でやってみることは有効です。何故なら、一度自分でやることで外注した際にも外注先でどのようなプロセスやタスクが発生するかの想像がつくようになるからです。それらが想像できることは納期やコストの予測がついたり、依頼時のコミュニケーションがスムーズになったりと、発注者に必要な想像力の源泉になります(逆説的ですが、外注先の工程の想像がつかない大企業の若手社員が上司の指示通りの無茶を言うこともここに原因の一部があります)。
・内製することで得られるノウハウと力がある
実際に今行動している中小企業も多くある中で、それらの企業のうち一部でも自社の事業で売上を作り既存のサプライチェーンを完全に離脱せずとも複数の収益源を持つことができたならば、サプライチェーンの中でほぼ特定の顧客に依存しながら生きている企業は得ることができない他の業界の知識やたの技術分野のノウハウが手に入ります。そして、仮に自身の力のみで商品を企画し営業と品質保証業務を適切に遂行できるようになれば、日本には規模を問わずとも「完成品メーカ」として経営できる企業が爆発的に増えることになります。
それらの企業と新事業の中から規模拡大が図れるものが出れば、その企業が主体となり新しいSCMを構築するきっかけにもなり得ます。海外に生産プロセスや開発プロセスを展開するケースが起こるかもしれません。今まで同じ工業団地の中にいながら取引がなかった企業とも取引が開始できるかもしれません。同業者の仲間に仕事を発注できるかもしれません。中小企業が各々にサプライチェーンを持つことは共に生きる時代にとても必要なことのように思うのです。
そうなることは、2030年以降の日本にとって、確実に国力を増進させる一翼を担う力になると思います。そうなれば、また日本人が世界中の人々と手を取りあい、共に新しい価値を産み出すことができると私は信じています。
明けましておめでとうございます。旧年中は9月のQA+リリースより大変お世話になりました。今 […]
お知らせ 中堅社員向け 企画者向け 技術者向け 新入社員向け 管理者向け 経営者向け明けましておめでとうございます。旧年中は9月のQA+リリースより大変お世話になりました。今年も宜しくお願い申し上げます。 2020年の年始でQA+および筆者自身としても一度書き記しておこうと思います。
・2019年、営業内容の見直しと自社の存在意義と方向性の見直し
2019年は大幅な方向転換を求められる年でした。株式会社コルプとしては写真・映像制作を軸に、本(冊子)やWebサイトなどのプロダクトの制作まで広げて営業してみたりもしました。
そんな中で、ほぼ1年を通して関わりそうだったプロジェクトのために年始から準備を始めたものの、夏前にそれがなくなったために夏はほぼ案件がなく、当然売り上げベースでもそれなりの影響を受けました。受託業務はクライアントを含めた外部の状況に左右されることを痛感しました。
とは言え、それで時間ができたためにもともと企画を考えていた本サイト、「品質保証からビジネスと経営を考えるメディア QA+( https://qa-plus.net/ )」をはじめられたり、ある学生向けNPO法人でボランティアワークをさせてもらったりできたのは怪我の功名でした。
それを通じてプロジェクトマネジメント、品質マネジメント、マーケティングの意味と、それらを機能的に持つことの意味と価値を再認識しました。
・初の展示会出展(それも業界で国内最大)
10月は株式会社コルプとして初めての展示会出展としてアパレル系のB2B即売会『PLUG IN』に出展させて頂きました。そこでは 初めての自社企画製品であるMY STAGE( http://q-l-p.com/mystage/ ) の量産型のお披露目をしました。多くの方にご注目頂き、またいろいろなコメントを頂戴することができました。
また、案件がなくなり空いた時間で短時間ながらも情報収集に行った展示会で、友人からの紹介を受けて知り合った方にお誘い頂き、映像放送関係の国内最大の展示会であるInterBEEにお手伝いとして参加させて頂きました。まさか開業2年目で出展側で参加できるなど想像もしていない規模の展示会でした。
そのInter BEEでもMY STAGEのデモ展示をさせて頂きましたが、MY STAGEは生産も、現時点では私が作業しているので大々的なプロモーションができません(なのでプレスリリースも出せていません)が、まずは細々とでも在庫と新製品開発を進めたいと思います。
もしご興味がおありの方がいらっしゃったらお声掛け下さい。訪問してのデモ動作なども承ります。
・株式会社コルプとQA+の2020年
2020年は2019年の反省を反映して撮影にフォーカスします。映像は一昨年、昨年と撮ってきましたが、今年からは写真でも同様ですが、筆者の得意な機械や工業製品をライティングを活かしたカッコいい雰囲気の映像表現も試みます。
まだまだ小さい規模ではありますが、本サイト、QA+も初めの2か月はほぼ毎日2000字程度の文章を書き続け、当初から皆様に見て頂き大変ありがたく思っております。そして3か月くらい経ってから検索エンジン経由の閲覧に関する数字も動き始めました。もしかしたら自分の書いたものがまだあったこともない誰かに読まれているかもと思うとなかなか不思議な感覚ですが、読者にお会いするなどして、この感覚が実感になる日を楽しみに発信し続けようと思います。
今年(からしばらく続きますが)の筆者のキーワードは【自分の中のイメージの具現化と「あたりまえ」の明文化】です。その一つが、筆者名義のYouTubeチャンネル、「Takahiro Yoshida Photography」です。
Takahiro Yoshida Photographyでは、主に3つの軸で動画を制作しております。
(1)写真作品をスライドショー化した動画(8K対応の試みの実行)
(2)写真セミナー動画(リアルのセミナーの補完、参照できる情報の拡充)
(3)カメラに関する雑談、話題の動画(筆者の興味・趣味的な観点の情報発信)
(1)については、写真を撮っているうちに見せ方として動画にした方がいい場合もありそうであると感じたこと、また編集ソフトもYouTubeも8Kに対応していたため、素材さえ8K解像度で用意できれば8K動画が製作可能であることを実証することの2点が目的としてあります。
写真用カメラは(録画し続ける間ずっとデータが貯まっていく映像用カメラと違い)1枚しか画像を撮らないため、解像度は大幅に大きいのが通例です。弊社の写真撮影業務で使用しているカメラも縦横比が違うため8Kサイズに収まらないものを、枠を付けることでクリアし、8K化しています。
(2)は、昨年初めて協業先企業が企画したセミナーに講師としてお招き頂き製品を販売したい企業様向けの「商品写真の撮り方講座」を行いました。その講座を補完する情報を自分から発信できていないことに気づいたのが、セミナー動画を始めたきっかけです。
株式会社コルプが主軸にしている撮影は商品を含めた広報・広告を目的とした写真ですので、それらにつながる方法や知識もゆくゆくはご提供できたらと思っておりますので、もしご関心がある方はチャンネル登録をして頂けますと幸いです。
(3)については、かつて筆者が趣味で運営していたカメラと写真を話題にしたブログのコンテンツの動画化という意味合いで公開しています。もしセミナー動画等を通じてカメラにご興味をお持ちになられた方がいらっしゃいましたらご覧頂けますと幸いです。
QA+は今のところ文字コンテンツだけですが、近いうちに映像コンテンツの配信を開始します。そちらの企画については実際に公開を始める際に改めてお知らせさせて頂きたく存じます。
10年スパンで考えれば2010年代が終わり2020年代に入ったということになります。筆者にとっての2010年代は環境に合わせて自分を変えていく時代でした。2011年、29歳の時に会社で座ってるのも苦しいくらいに身体を壊し、あまり他の方に話したことはありませんが、自分の担当の機種の量産立上げにも行けないという醜態を晒しました。 そこから休日などに社外の空気に触れるようにした結果、色々な方々に出会い、会社以外、自分の業界以外の色々な世界を知ったのが2010年代の前半の自分でした。
2010年代の後半にはその様々な方面の人が、何らかの形でつながり始めるという動きが見られました。そんな動きの中で自分でも独立という選択肢を2017年、35歳のタイミングで取り、2019年には自分が勤めていた業界に近い分野の展示会に出るなどといった展開を得たことは先に書いた通りです。
特に2019年などは新しくもめぐりめぐって元の所に戻るような展開もあり、どこか帰る場所があるような、またそこから何かを始められそうな感覚を得ています。2020年代は、自分と自社からも変化を作り出せる時代にしたいと思います。その中でQA+を通じてつながった皆様ともご一緒できることを心待ちにしております。
2020年も、株式会社コルプとQA+を何卒宜しくお願い申し上げます。