品質を保証するということ

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品質に関わる職場にお勤めの方は多くいらっしゃると思いますが、ご自身の部署のお名前は何でしょうか?「品質管理」でしょうか。「品質保証」でしょうか。もしかしたら「検査」という名前がついているかもしれません。

ちなみに、お勤めになっている企業ではどのような業務を行っているでしょうか?顧客から図面や仕様を受け取り加工したり実装したりして納品している企業は多いかもしれません。中には自社で企画し、提案・受注している企業もあるかもしれません。もしかしたら主な顧客は一般ユーザで、自社で企画、開発した製品を製造して販売している会社にいらっしゃる方もいると思います。

これらはどれも似ている言葉のように聞こえますが、違う意味を持ちます。特に組織の中で要求される要素としては大きく違う意味を持ちます。今回は簡単にそれらの違いを確認しておきたいと思います。

・管理と検査

検査とは決められた検査項目に対して検査基準を満たしているかどうか、対象物(出来上がった製品など)の合否判定を下すことです。検査でわかるのは検査基準を満たしてるかどうかのみです。検査をする前に、検査をする項目と検査基準を決めておく必要があります。

そして管理は検査項目と検査基準に対する検査結果の変動を管理します。工程内検査や日常管理の状況を把握して、基準値から逸脱もしくは逸脱する可能性が見られたときは改善活動を実施して、安定状態に戻るようにします。

根本的な管理と検査はこのようなところで、多くの企業や業種でそれぞれのやり方があるでしょう。特に製造業関連では日常管理や検査データなどを顧客企業から求められている方も多いと思うので、より業務の中で取り組まれている方は多いと思います。

・管理基準はなぜできるか

ではそれらの管理基準はどのように作られるのでしょうか。そもそもそれらはなぜ管理しなければいけないと考えられているのでしょうか。

部品などを加工して納入している製造業などの業種の方は、顧客企業からオファーがあった時「ここの部分をこうしておいてほしい」とか「これは相手方の部品とここであたるからこの部分は精度を高く」とかいうオーダを同時に受けていると思います。

これらはみなさんの顧客である完成品メーカの設計者が製品設計をした時に「そこを管理するべき」であったり、「ここを部品の機能上このように使う」などと考えて作っているわけですが(加工方法と部品設計がマッチしていないケースが多いといわれる加工業者さんも多いかもしれませんが…)、そもそもその製品が図面になるまでの過程があります。

その過程を開発中と仮定して大雑把に書き出すとこのようなります。

 商品企画 → 要件定義 → 仕様 → 製品設計(ここで図面化)

そしてそのあとも、

 部品検査 → 組立(工程設計)→ 評価 → 量産性検証 → 量産可否判断

という流れを追います。その結果として、販売できる商品としての形になるわけですが、ここでそもそもの商品企画の中で達成したい目的(商品を販売することで提供できる価値)を実現するために、要件が定義され、仕様が決定され、製品が設計されます。

つまり、加工段階まで形になった部品というのは組み込まれる製品を通して価値を社会に届ける使命を帯びています。そしてその使命は品質管理と検査として、部品加工を受注した企業に対して要求されます。

・品質保証が保証するもの

完成品メーカの品質保証担当者はよく「最後の砦」的な表現をされますが、それはあまり正しくありません。なぜなら上記の開発プロセスにある工程すべてに品質に影響する要素があるからです。

要件定義で定義されているべき価値を実現するための機能に曖昧さがあれば仕様の精度が上がりません。仕様の精度が上がらなければ製品設計時に不確定要素が入り込みます。設計上の不確定要素は管理項目の定義ミスや工程設計への遅れ要素となります。当然評価するべき機能の実現も怪しくなります。

部品加工時に完成品メーカの品質保証担当者が話をしているのは部品の寸法精度とその管理の話だけでも、実はその先に製品への影響と、社会へ提供できる価値の話が含まれています(品質保証担当者の仕事はもちろんそれだけではありません)。

翻っていえば、今まで受託でのビジネスしか行っていなかった企業が自社の企画を立ち上げ、直接社会に対して製品やサービスを立ち上げる際には、今完成品メーカがやっていることと同じことは最低限考えるべきことです。

それが「品質管理」から「品質保証」へ移行する第一歩となるでしょう。

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