品質とは、制御されるべきもの

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過去3回にわたって「品質とは」という記事を書き続けました。

品質とは定義されるべきもの
品質とは設計されるべきもの
品質とは管理されるべきもの

品質とは、つまるところ制御されるべきものと言えます。その制御の主体とはその品質を持つ製品やサービスを作っている企業、組織です。企業や組織は、企画した製品やサービスの品質を定義して、それを実現するのに必要な知識や技術、材料を集め社会に提供できる形にします。

「そんなことわかってるよ。うちはちゃんといい品質に維持できてるよ」と思われた方、ちょっと待ってください。「いい」とはどういう意味でしょうか。

・品質はよければいいわけじゃない

よければいいわけじゃないと書いたもののよくするのは実際大変なのでなかなかそこまで行けないんですが…

少なくとも顧客企業から部品の製造を頼まれ、何らかの部品の加工と製造のみを担当するのであれば、顧客の要求を実現することができればそれは「いい」品質と言えます。実際に顧客の要求を実現するのも大変なことがたくさんあると思いますし、その状態を維持するのも簡単なことではないと思います。

しかし、自社で製品やサービスを企画しそれを社会に対してリリースする場合にはちょっと事情が違ってきます。

品質をよくするために何をすればいいでしょうか?
材料をよくしますか?そうすると価格が高くなりますよね。
加工を丁寧にしますか?そうすれば時間がかかります。すると一日の稼働時間を同じにするのであれば一日に作れる個数が減ります。稼働時間を伸ばすのであれば加工の前後の段取りのために作業者を付けなければいけないかもしれません。すると人件費が上がります。

つまり、品質を変えることによってコストと納期が変わります。

・自社におけるQCDの相互作用を理解する

もうお分かりいただけたと思いますが、品質(Quality)というのはQCDの他の二つのパラメータであるコスト(Cost)と納期(Delivery)と相互に影響しあう関係にあります。

コストを削減し、納期を早めたければ品質も抑えることを検討せざるを得ませんし、納期に余裕があれば加工の手間もかけられるかもしれません。むしろ品質を上げることが最優先事項で、多少納期がかかったり販売価格が上がったりすることも許容できるケースもあるかもしれません。


むしろ高級ブランドなどは価格が高くても、納品に時間がかかっても、場合によっては生産数量が少なくてもそのブランドとその商品に見合った品質になっていれば顧客が待ってくれるビジネスというのも存在します。この場合にはむしろ品質は下げてはいけないパラメータになります。

では自社におけるQCDの相互作用というのはどのように見極めればいいのでしょうか。そのための情報は要件定義に落とし込まれる前の企画段階にあります。企画を作った時には以下のようなことが念頭にあるはずです。

  • その企画は誰に向けたものか
  • どのように提供されるのか
  • どのくらいの期間使えるものなのか
  • ユーザはどのように使うものなのか
  • ユーザはそれにいくらくらい払うと考えられるのか

つまり、製品やサービスとして出来上がった時、品質はこれらの項目をすべて含み、すべて合致していなければならないのです。

子供向けの商品であれば子供が使用した時に怪我なく使用できるように、高齢者向けのサービスであればユーザの対象年齢に合わせたサービス内容になっているようにしなければなりません。同じ商品で大人も子供も使う場合が考えられるならば、使用条件がどちらかに偏っていてはいけません。

そして開発され、生産が決まった商品は販売期間中ずっとその企画を実現するために品質が維持された状態で出荷されなければいけません。

しかし「出荷検査で不良がなくても良品率100%にはならない」でも書いている通り、工程に投入される部品の品質は変動するものです。変動するからこそ管理が必要なのですが、品質はその管理によって企画当初に想定された状態に制御されるということになります。

つまり、品質というのは組織によって「制御(Control)」されなければいけないのです。

・“ Quality Control ”を「品質管理」と訳す不思議

どういうわけか日本ではQCというと品質管理と訳されます。でもここまでの話の通り、品質とは「定義」され「設計」され「管理」されることによって「制御される」ものなのです。

ちゃんと品質管理している、いい状態を維持しているということは素晴らしいことですが、その内容はこの順番に従って制御されている結果であることが本来は求められています。

そして組織は品質が制御された結果目標としていた企画を実現するものとなっていることを、品質管理し続けることを通して社会に対して「保証」します。

ISO9001を取得している企業では、組織は品質マネジメントシステム(QMS)を構築し運用することを求められています。システムというのは入力の結果何らかの出力を得るもののことを言います。企業というのは企画をインプットすることで商品やサービスを出力するシステムですと言えます。

つまりこの「品質マネジメントシステムを運用する」ということが、「品質に対して管理値(制御対象となる値)を用いたフィードバック制御を行う」ということを意味するのです。

もしこの話を読んで意外な感じがした方は、ぜひ今一度「自社で行っている品質保証や品質管理は品質を制御できているか?」と立ち止まって考えてみてください。

もしかしたら今まで想像もしてなかったことができる余地があるかもしれません。

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