攻めの品質保証へ -1

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今、新製品を企画して思うこと。の記事の中で以下のように書きました。

現時点では目的を達成できる最小限の仕様と構造を検討し、ユーザに要求するオペレーションもシンプルに目的が達成される使い方を提供すべき

今、新製品を企画して思うこと。

また別の記事では品質は開発の初期段階から積み重ねることもお話ししました。

品質が定義できないのはそもそも初期段階で目標が決まっていない、つまり製品が社会に与える価値が見えていないということ

品質とは定義されるべきもの

逆に、この2つを抑えると、過去に類似製品の開発経験がない(アップデートの形式ではない)製品の開発についても、アプローチしやすいハードウェア製品の開発プロセスが作れるのではないかなと思っています。

今回は、2019年9月現在弊社で開発している製品で対応している方法を踏まえてお話ししたいと思います。

・新規の開発はわからないことだらけでもお客様のことを考えて

今までに自社内のみならず社会的にも開発実績のない製品というのはわからないことだらけです。そもそも「 社会的にも開発実績のない製品 =社会に存在しない製品」ですから、それというのは作れないか、欲しい人がいないかのどちらかだと思うのが普通でしょう。

本当に新しい製品で市場があるかどうかわからないレベルの物であれば、企画上中心になる機能などでサンプル品や簡単な調査などを計画して、一部のユーザを対象に意見を募った程度の情報しかないこともあります。そのような状態だと中心機能以外はどうしたらいいかとか実際に購入したお客様はどんなところでどんな使い方をするかとかの情報はまだ入手できません。

ですので、昨日達成する最低限の仕様を設定します。その状態ではお客様が実際に製品を使うときに行う行為をできるだけコンパクトにしてわかりやすいようにします。それによってお客様がスムーズに使用状態にたどり着けます。今までにない製品であればお客様は使うのが初めてですから使い方がシンプルでないと対応できない可能性があります。また、説明書は必ずつけます。そこには使い方もそうですが、まず製品仕様上絶対にやってはいけないこと、やってほしくないことの記載が必要です。

ユーザは必ずメーカの想定外の使い方をします。想定外のことなのでどんな使い方をするのかは実際にそういう使い方をして起こった故障品を見たり、実際にクレームを受けてみないと分からないのですが、どういうときにどういう故障が起こる可能性があるのか、それによってお客様にどのような不利益があるのかは説明書に記載が必要です。

・開発を最短距離で実施する

試作品をできるだけ早く作り機能検証をすること、実際に量産用の部品形状を早めに確定し組立ての仕方や梱包の仕方を確認することがより早い段階で必要です。ここが遅くなるとリリースのための検証が遅くなります。

開発上のポイントは機能開発と製品開発を分けることです。機能が実現できるかどうかと、その機能が製品に実装できるかどうかは別の問題だからです。また、実装できるかどうかとそれを組み立てる工程が成立するかどうかも別なので、厳密に言うと工程設計も別に必要です。下の図のように、必要があれば工程設計の段階で生産技術開発も実施します。

矢印がそれぞれ途中から始まっているのには理由があります。できるだけ早く検討は始めたいものの、機能の開発がある程度進まないと製品に乗せられるかわからず、製品のイメージが固まらないとどう組み立てるかも検討できません。一方でそれぞれの仕事が終わってから次に進むのでは遅すぎますので、ある程度のタイミングまで前倒します(フロントローディング)。

この時、何機種か製品を開発していると、どのような状態になったら次の段階に進めるかがわかってきますので、次の段階に進む条件を定義します。そうすると自社にとっての開発プロセスが定義できます。

・評価は検討できる最小限でもいいからする

上記の使われる範囲の制限を設定すると、その周辺の使ってほしくない条件が出てきますので、それらの条件で評価用の試験を検討します。新規の試作品だと台数も作れず破壊ができないので、実施するのは後回しになると思います(試作品を壊してしまったら他の確認ができませんので)。

簡単な製品だとそんな評価なんてする必要ないと思われる方もいるかもしれませんが、全く評価が0の状態で試作を終了するというのは考えづらいです。使用環境や使用条件が考えられる以上、その条件での動作耐久試験など、何らかの方法はあるはずです。

そして何らかの評価は必ず実施しておくべきです。なぜなら、販売後に市場で不具合や品質事故が発生した場合に、試作品でどうなっていたかを後から確認することは不可能だからです。逆に試作品の時点で確認できている不具合が販売後にも発生しているのであれば、試作時の対策が不十分だったことが考えられますので、対策を打つべきポイントを見つけるのが早くなるなど、クレーム対応や在庫商品への対応が早くなります。

企業は製品と通じて社会とかかわります。ということは製品の品質のうち ユーザから見える部分とは、企業が社会に訴えかける主張の部分になります。そこで可能な限り不備なく、また余剰のない開発リソースを無駄にしないような開発プロセスの構築を目指すことを考えるべきなのだと思います。

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