NoWarranty#4-1

自社製品開発は「商品開発」だけではない

「自社製品を作りたい」という話を聞くと、多くの方はまず製品の企画やデザイン、あるいは販売チャネルのことを思い浮かべるのではないでしょうか。どんな機能を持たせるか、どこで売るか…いくらで出すか…たしかにそれらは重要です。しかし、自社製品開発の本質はそこだけにはありません。

実際に自社製品を立ち上げようとすると、すぐに気づくことがあります。部品をどこから調達するのか。加工はどこに出すのか。組立の工程はどう設計するのか。検査は誰がどの基準で行うのか。完成品をどのルートで届けるのか。製品そのものの設計と並行して、それを実現するための供給の仕組み全体を設計しなければなりません。

つまり、自社製品を持つということは、単に製品を持つことではありません。部品調達から加工、組立、検査、出荷に至るまでの供給の仕組みそのものを持つということです。この認識がないまま「自社製品を作ろう」と走り出すと、試作品はできたものの量産できない、量産できたものの採算が合わないという事態に陥りかねません。製品のアイデアだけでは足りないのです。そのアイデアを、繰り返し安定的に形にするための仕組みまでセットで持てるかどうか。それが自社製品開発の成否を分けます。自社製品開発とは、商品企画ではなくサプライチェーンの設計なのです。

なぜサプライチェーン構築の責任は完成品メーカー側にあるのか

では、そのサプライチェーンを誰が構築するのか。答えは明確で、完成品メーカー側にあります。

理由はシンプルです。「自分たちが何を作りたいのか」という目的を持っているのが完成品メーカーだからです。何を作りたいかがあるから、どんな部品が必要で、どんな加工が求められ、どの品質水準を満たさなければならないかが決まります。つまり、必要な調達ルートや品質要件を定義する責任は、発注する側にあるのです。

外注先はあくまでもその目的を実現するためのパートナーであり、目的そのものを決める存在ではありません。部品メーカーや加工業者は、自分たちの得意な技術や設備を持っていますが、完成品としてどう成立させるかを考えるのは彼らの役割ではありません。どのようなルートで、どのような品質のものを、どのように調達するか。その全体像を描く責任は、完成品メーカーにあります。この責任を認識しないまま外注に頼ると、サプライチェーンの主導権を他社に握られる結果になりかねません。

外注とは"仕事を投げること"ではなく"接点を作ること"

ここでよくある誤解があります。外注とは「自社でできない作業を他社に投げること」だと思われがちですが、本質はそうではありません。

外注とは、自分たちの製品工程に他社の仕事をどう接続するかという接点を設計する行為です。自社の工程と他社の工程をどこで、どのようにつなぐのか。その接点設計が甘ければ、品質も納期も価格も崩れていきます。

たとえば、加工を外注するとして、図面や情報の渡し方ひとつをとっても、どの情報をどの形式でどこまで明記して渡すかで結果は変わります。検査基準の共有方法、納品物の受入ルール、不具合発生時の連絡フロー、変更があった場合の通知プロセスまで含めて、一つひとつが接点です。これらの精度がサプライチェーン全体の安定性を左右します。外注は仕事を減らす行為である一方で、自社の業務において設計すべき項目を増やす行為でもあるのです。

外部接続は、自社の実力を客観視する機会になる

外部と接続することには、もう一つ大きな意味があります。それは自社を客観視する機会になるということです。

社内だけで回していると、「うちはこれが当たり前」という感覚が固定化されます。その当たり前が世の中でも通用するのかどうか、検証する機会がないまま年月が過ぎてしまいます。ところが外部の企業と接続した瞬間に、自社の要求が曖昧だったこと、工程設計に抜けがあったこと、前提の共有が不十分だったことが次々と露呈します。

これは恥ずかしいことではなく、むしろ貴重な成長の機会です。自社だけで開発を続けていると気づけない弱点が、他社という鏡を通して見えてきます。つまり外注は、他社の力を活用する行為であると同時に、自社の現在地を正確に知るための手段でもあるのです。社内の常識を疑い、外からの目線で自社を見直す。その繰り返しが、企業としての基礎体力を底上げしていきます。外に出てはじめて、自分たちの輪郭がはっきり見えてくるのです。


自社製品を持つとは、製品を持つことではありません。自社の思想でサプライチェーンを組み上げる立場に立つことです。次回は、そのサプライチェーンをつなぐ中心にあるもの、品質について掘り下げます。

著者プロフィール

Takahiro Yoshida
Takahiro Yoshida株式会社コルプ代表 / QA+編集長 Founder & CEO, QUALP Inc. / Editor-in-Chief, QA+
2008年より精密機器メーカにて民生機器の製品開発における品質保証業務に従事。機械部品を中心としたハードウェアの保証業務5年、機器に搭載するファームウェアの品質保証を4.5年経験。設計部門と連携した開発プロセスからの品質向上、量産を見越した品質構築を実現する。ハードウェア経験も活かしつつソフトウェアの品質向上を実現し、開発会社と連携した担当機種で不具合の低減を達成。
2018年に株式会社コルプを設立、代表取締役就任。写真・映像などのPRコンテンツの製作と品質保証を中心とした業務改善で中小企業を支援。潜在的不良リスクの低減から不測のコスト増に対応できる組織構造の構築にノウハウを持つ。YouTubeチャンネル運用支援では顧客が自立してチャンネルを運用できるよう育成まで行う。業務改善支援では中小企業の30代中堅社員の業務管理方法の改善指導をした上、業務標準化を進めるなど管理面に関する支援を行う。
「判断と構造で、未来に舵を切る人のためのメディア」QA+を立上げ、編集長として各種コンテンツの製作・ディレクションを行う。
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