品質を上げるために一番必要なこと
これについては結論から書きます。これは業務や作業への慣れであり、品質を上げるために一番重要な資産は業務や作業に慣れたベテラン従業員の方々です。
理由は簡単で、作業の確実さ、技術の習熟度、職場環境の熟知、すべてにおいてベテランの従業員さんやスタッフさんに勝る人はこの世にいないはずです。職場を見回してみてください。その持ち場でその仕事をするのが一番上手な人は誰でしょうか。今そこで働いている方ではないですか?新しく雇った方があなたの会社で、その仕事を、今いる方より上手にできますか?少なくとも似たような作業をした人であっても新しい環境でそこにある道具を使うには少なくともいくつかは覚えることや慣れないとできないことがあるでしょう。ということは、あなたの会社で、その持ち場で、一番高い品質を出せるのは紛れもなく今いらっしゃる方です。
今いるその方の素晴らしさをこれから列挙します。
・作業が確実である
その方は長年その業務に当たられ、最適な道具の選び方も、道具の使い方も、材料の扱い方も、その工程の最適な状態も、すべて把握されています。その方はもはや理屈ではなく、身体でその作業を覚えていますので、自分がどんな状態であれ最適なアプローチで作業を完遂されています。
新しく採用した人材の教育にはその方の仕事を見せるのが一番です。いつどんなタイミングで何をしているか、あの振る舞いにはどんな意味があるか、仕上げたその製品はどのような状態か、それらをなぜ会社は評価しているか、あなたは新しいメンバーの隣に立って説明します。新しいメンバーはそのベテランを見習うべき対象と捉え、自分の業務に必要な情報を学び取ろうとするようになるでしょう。
・技術に習熟している
作業の話につながりますが、その方はとてもスキルが高く、普通であれば困難な案件もやすやすとこなしてしまいます。 その方には難しいことなど何もないようです。その方が働く姿は現場を訪問した顧客には見せるべきではありません。顧客はきっと簡単な作業だと勘違いするでしょう。笑
技術に習熟している方は新しいタスクを目の前にした時に情報を集め、あらゆる条件を考慮し、これからタスクを進めていくうえで起こりうる状況をタスクの完了までの各段階において条件分岐を作り、それぞれについて対策を講じます。そしてベストなソリューションを編み出し、タスクを最短距離で実現します。
もし可能であればあなたはその方の技術を可能な限り明文化して社内にいるメンバーに知らせるべきです。それはその方の技術を奪うことだと思ってはいけません。明文化することは組織の共有財産になり、それを作り上げたその方の功績を組織の中で確固たるものにします。更にはその方の仕事の仕方のポイントが共有されれば、今までは当人しか気にしていなかった事柄が他のメンバー、特に経験が浅いメンバーも知識として情報を得ることで実現に一歩近づきます。組織全体の知識レベルや経験レベルが今までよりも整います。その結果、ベテラン社員も今まで以上に自分の本分であるタスクに取り組むことができるようになり、その結果その方の評価が更に高まります。
・職場環境を熟知している
その方はきっと長年あなたの会社で働き、あなたの会社に来る仕事がどのようなものか、ひいきにしてくれている顧客はどのような人物で何を求めているのかをよく知っているはずです。その上、社内についてもよく目を配っていて、何か問題が起きたとき他のメンバーはどうするか、社長はどのようにしているか、そしてどのように解決するのが得意か熟知しているはずです。
あなたはその方のことを結構頼りにしていませんか?普段と変わらないようでもその方もきっとそのことに気付いていて、あなたと会社に貢献できることを何より喜んでくれているはずです。
会社、職場のメンバー、顧客に対してその方が払っている配慮は普段はなにげないものでも業務内で問題が起こった時、新しい顧客から受注した時など、課題がある中で解決の指標になるかもしれません。もしかしたらその方が率先して課題解決に向けた指針を出してくれるかもしれません。
それらの動きをあなたが受け入れることで組織はよりいい動き方をするかもしれません。もしあなたがリードを取ろうとしているならば、その方に協力を求めたら理解を示しその方の立場の中で最大限のサポートをしてくれるでしょう。
・人柄
あなたの会社でそこまでの実績と配慮を持ちながら日々勤務してくださるその方はきっと素晴らしい人柄の持ち主です。普段は不愛想だったり対応が冷たかったり、厳しく感じたりもするものですが、じっくり話を聞いてみると会社への思いと仕事への責任感を感じることができるはずです。そしてそれらは確固たる技術力に裏付けされて日々会社に還元されています。
あなたと会社ができることはその方への感謝を示し、その方が仕事をしやすい環境を作ることです。もしかしたらそれは新しい道具かもしれませんし、新しいタスクかもしれません。昇給かもしれませんし、もしポジションを要求されたら相応しい椅子を用意することがあってもいいのかもしれません。最終的にはあなたの判断ですが、その方の気持ちなら会社として受け入れられる範囲ではありますが、応えて損はないと思います。
品質を作り上げるのは人材です。お世話になったすべての方々の取り組みとご理解がなければ、今まで私が関係した製品は品質目標を達成できなかったでしょう。