
- 1. 品質保証とはなにか
- 2. 品質保証と品質管理、検査の違い
- 2.1. 品質保証
- 2.2. 品質管理
- 2.3. 検査
- 3. メーカにおける品質保証業務の構造
- 3.1. 開発・設計業務における品質保証
- 3.2. 量産試作・工程設計業務における品質保証
- 3.3. 評価・検査業務における品質保証
- 3.3.1. 評価と検査の違い
- 3.4. 生産・製造業務における品質保証
- 3.5. 市場における品質保証
- 4. 技術分野と品質保証
- 4.1. ソフトウェアにおける品質保証
- 4.1.1. ソフトウェアの技術特性
- 4.1.2. ソフトウェアにおける品質課題の特徴
- 4.1.3. ソフトウェアの品質保証
- 4.2. ハードウェアにおける品質保証
- 4.2.1. ハードウェアの技術特性
- 4.2.2. ハードウェアにおける品質課題の特徴
- 4.2.3. ハードウェアの品質保証
- 4.3. ソフトウェアとハードウェアを統合した製品の開発
- 5. 品質保証技術者に要求される能力
- 6. 品質保証部門の役割
- 7. マーケティングと品質保証のつながり
品質保証とはなにか
品質保証とは、製品やサービス(以下製品)が本来提供すべき価値を、企画・開発・設計・製造・出荷・市場対応まで含めて継続的に実現し、維持し、必要に応じて説明できる状態にするための活動である。そのため、品質保証は評価・検査業務だけを指す言葉ではない。また、出荷後のサポート業務だけを意味するものでもない。開発段階から市場までを貫いて品質を担保するための仕組みと運用全体を含む概念である。
製品は、市場から顧客要求を顕在化させそれを満足するために作られるが、その目的がプロダクトライフサイクルを通じて確実に達成されることを組織は管理・維持する必要がある。そのためには出荷される製品が要求を満たす状態であることを確認することはもちろん、開発・設計段階からそれらを満たせるような技術および製品であることが確認されなければならない。
そして組織はその確認された事項を記録・保管し、必要に応じてさかのぼることができる状態を維持する責任がある。また市場事故など製品の瑕疵によるユーザの不利益が発生した場合には、記録をさかのぼり該当製品の情報を確認できるようにする必要がある。またその情報を次の業務に活用できる情報として扱い、品質保証体制によって適切にフィードバックすることが重要である。
品質保証と品質管理、検査の違い
品質保証と品質管理および検査には明確な役割の違いがある。
品質保証
組織が製品を顧客に提供する際に、その顧客における価値を実現するために行われる活動が品質保証である。品質保証活動を通じて組織は品質マネジメントを実現する。これはISO9000シリーズにおいて定義される品質保証の概念より広範囲の意味を含んでいるが、現状の企業活動における品質および品質保証活動はより価値の実現にシフトしており、本稿ではこれを品質保証の定義として進める。
- 提供するべき製品の品質の定義
- 品質を実現するための業務とオペレーションの定義
- オペレーションによって生産された物の品質の評価・検証・記録
- 評価した品質における管理項目と管理レベルの設定
- 品質のトレーサビリティの設計、管理手法の開発
- 実施された業務の記録と管理
- 管理状況の監視
- 市場における品質状況の管理・維持
- 上記に含まれないQMS(Quality Management System)の運用
上記のような活動などがあげられ、これ以外にも価値の実現と維持に向けた活動があればそれを含む。これらすべてが品質保証部門の業務になるとは限らず、必要に応じて各担当部門の業務として設定、履行される。したがって、品質保証活動には経営によるコミットメントが不可欠である。
品質管理
事業として製品を提供していく上で、製品の品質が変動する要因が複数発生する。その変動要因の管理と品質の安定化が品質管理の目的となる。
- 品質変動要因の管理
- 管理項目の運用
- 日常管理
- 変動を抑制するための改善活動の立案と実施
- トレーサビリティの運用、記録の実施と管理
- 監査時の情報の提供と是正指示項目の対応
多くの場合、稼働中の現場で日常的に運用される業務は品質管理に該当する業務が多く、品質保証と呼ばれる領域の業務が必要となる場合は少ない。しかし定期的に行われる監査など上位の保証体制の維持のために対応する局面は存在し、多くの場合突発対応に近い形で処理される。この時に監査受け入れ側の業務負荷が少ないように品質保証領域での日常業務を組みやすくする業務や製品、管理項目の作り込みの実施、品質管理側での管理状況の維持と情報の整理が行われることが望ましい。
検査
品質状態を客観的に測定・把握するため、検査が行われる。検査で得られたデータは品質管理における安定化の指標になり、また品質保証におけるトレーサビリティの記録となり、以後の経営及び商品開発に活用される。
- 管理項目に則った検査の実施
- 管理基準に則った検査結果の判定と記録
検査による品質の把握は測定の再現性の確保と記録の作成が重要である。品質は設計で作りこまれ、製造で反映されるものであるから、検査業務、記録業務において規格外れが発生することは設計における課題か、製造における課題か、何らかの上流における課題が検出されている状況であるから貴重な情報として扱う必要がある。品質課題が発生した場合に検査担当者や評価・試験部門のみの責任を追及することは組織の品質保証活動としては不十分と言わざるを得ない。
| 項目 | 品質保証 | 品質管理 | 検査 |
| 主な目的 | 価値の実現と維持 | 変動の管理 | 合否判定 |
| 主な対象範囲 | 開発~EOL | 工程、製造 | 検査対象品 |
| 主な視点 | 品質の最適化 | 品質の安定化 | 品質基準に対する適合 |
| 主な業務 | 管理項目の設定、トレーサビリティの設計、監査、記録 | 管理項目の運用、トレーサビリティの運用、日常管理、改善 | 管理項目に則った評価、測定および判定 |
メーカにおける品質保証業務の構造
完成品メーカにおける品質保証業務は一見して品質保証部門が担当するものであると思われがちである。しかし、品質保証部門が実際に手を下すことができる要素というのはそこまで多くない。一方、製品は開発者によって実現された技術を、製品レベルで使用できるだけの再現性を確保し、設計者の手によって製品設計に落とし込まれる。図面化された技術は加工者、製造者の手により製品の形となり市場に向けて出荷される。その各段階において、品質保証が概念として取り入れられ、業務化されている。
開発・設計業務における品質保証
製品の品質は、開発・設計段階において最も根本的に決定される。この段階では、顧客要求および市場要求が技術仕様として正確に定義され、その仕様が設計に落とし込まれることを確認することが重要となる。近年は市場の変化が早く商品企画立案から量産開始・販売をできるだけ短期間で完了することが経営課題となっており、その中で品質を早い段階で作りこむフロントローディングの実施に伴い、製品設計時点から関係各所に情報が展開され同時進行で開発が進む環境となっている。それに伴い設計業務の品質がより意識されるようになっている。
この期間の品質保証活動としては開発段階の機能試作・技術試作、および設計段階での製品試作における性能評価、市場性評価などが実施されるが、開発期間の短縮のため、それだけでは不十分なケースが発生するようになった。そのような状況に対応するため、具体的にはデザインレビュー(DR)の設計と運用、設計FMEA(DFMEA : 故障モード影響解析)とFTA(故障の木解析)の実施、設計変更管理などが含まれる。
開発・設計段階での品質の作り込みが不十分であれば、後工程での修正コストと期間は指数的に増大する。このことから、開発・設計プロセスにおいて適切に品質保証業務を設計し関与することは最上流でのリスク低減という観点から不可欠である。
量産試作・工程設計業務における品質保証
設計が完了し量産に移行するまでの間で、量産試作と工程設計とその実装を実施する。量産試作は企業によってはプリプロダクション(PP : Pre-Production)やプロダクショントライアル(PT : Production Trial)などと呼ばれることがある。この段階では設計の意図通りに製品を製造できるかどうかを検証するとともに、製造工程自体の品質保証体制を構築する。管理項目や管理レベルはこの段階で確定され、初期流動管理が実施される。また工程FMEA(PFMEA)や品質管理方針の作成もこの段階で行われる。
品質保証部門は試作品と工程に対して評価や監査を計画・実施し、結果の確認と工程および設計へのフィードバックを実施する。量産移行判定により設計品質が製造品質として転写されたことの確認を実施した上、出荷承認などのプロセスを経て製品が上市されることの可否を判断する。
評価・検査業務における品質保証
各開発フェーズにおいて製品が規定の品質基準を満たしているかを客観的に確認する業務が評価業務である。ここで得られたデータは品質管理における変動把握に活用されるとともに、品質保証上の開発途上のトレーサビリティ記録として保管される。この業務は品質を作るものではなく、品質の状態を可視化するものである。したがって、評価・検査業務の設計と運用の質が、品質保証体制全体の情報の信頼性を左右する。
評価と検査の違い
検査は管理基準および品質基準に照らして製品の合否を判定する行為であり、その目的は製品の使用可否の判定にある。一方、評価は製品や工程の特性および状態を定量的に把握することを目的とし、必ずしも合否判定を伴わない。評価で得られたデータは設計や工程の改善に使われる情報として扱われることが多く、品質保証上の判断根拠として機能する。
評価結果により検査にて参照される管理基準・品質基準の妥当性が検証される。言い換えれば、検査は基準を運用する業務であり、評価は知識を生成し、基準を改良する業務である。特に製品開発実務においてこの二つが混同されると、評価データが合否の形式でしか扱われなくなり、改善への活用機会が失われることがある。これを避けるため、組織は適切なフィードバックフローを持たなければならない。
生産・製造業務における品質保証
量産工程においては、設計で定められた品質が継続的、安定的に製品に転写されることを保証することが品質保証の意義となる。そのため、工程の管理状態の維持、変動の検出と対処、トレーサビリティの運用が行われる。量産に移行した後の業務内容や稼働量はその主体が品質管理部門に移行し、品質保証部門は製造現場に直接介入せず管理基準の再設定、工程監査、記録の確認などを通じて製造中の品質管理活動を支援・評価する立場をとることが多い。
量産中は市場環境および調達環境の変化により、製品開発時に確定した状況が維持されない場合がある。その時、設計変更や材料変更を含めた製造条件(4M)変更が発生し、その管理が非常に重要となる。製品の設計変更が入る場合や、製造条件の変更がある場合、通常変更品に対する開発・設計部門・生産技術部門等による技術的妥当性の検証と品質保証部門による品質の再評価を経て変更の承認・実施となる。
市場における品質保証
製品が市場に出荷された後、ユーザが製品を使用することになる。市場における品質保証の中心は、顧客からの品質情報(クレーム、不具合報告、使用実態)の評価と対応の決定、必要に応じて組織内にフィードバックし、製品や工程の改善に結びつけることにある。製品出荷後の市場品質情報は、品質保証体制における唯一のアウトプット検証の場であり、開発・設計から製造までの生産活動に伴走した品質活動とQMS運用の評価である。
また製品に重大な瑕疵が発見された場合の対応体制、リコールや顧客通知のプロセスも市場品質保証の業務に含まれるが、製造物責任に触れる要件などについては、特にリスクマネジメントとして品質マネジメントとは別に枠組みを設定するケースも多い。
技術分野と品質保証
品質保証における考え方と実務は、製品の種別や技術分野によって大きく異なる。製造業における品質保証の枠組みは主にハードウェア製品を前提として発展してきた。しかし現代においてはソフトウェア単独で製品として機能する場合があることと、またハードウェアも制御やユーザーインターフェース等の進化によってソフトウェアが高度に統合され一体化した構成が増加しており、それぞれの特性を理解した製品設計と品質保証が求められる。
ソフトウェアにおける品質保証
ソフトウェアの技術特性
ソフトウェアは情報として構成される成果物であり、開発環境の複製や更新が比較的容易であるという特徴がある。また、ソフトウェアは基本的に物理的な劣化がなく、同一コードから生成される製品は原則として同一であるため、製造ばらつきが発生しにくい。一方でソフトウェアは内部状態や相互作用が把握しにくく、不具合の混入や見逃しが起こりやすい特徴がある。
製品を構成するコードの規模が大きくなればなるほど干渉や不整合の検出の難易度が上がるうえ、それを視覚的に探し出すことは困難である。また、ソフトウェアが実行される環境は様々で、OSやハードウェアの性能、制御条件などの環境要因によってソフトウェアの動作が変わることがある。そのため、レビュー、要件や仕様・設計情報の明示、テスト方法やテスト設計、結果の記録と管理などのプロセス管理と、レビューやテストを通じた品質作り込み状況を管理する必要が生じた。
ソフトウェアにおける品質課題の特徴
品質課題の多くは設計上のバグやミス、仕様の曖昧さに起因する。仕様策定時における漏れの防止や、設計を実装するコーディングの際に不具合を作りこむことを避けることが要求される。それらを検出するため、製品全体の構成の明示や、コーディングを開始する前のルール設定など、要件定義・仕様・設計・実装の各段階における不具合発生の防止に加え、そもそもの想定漏れによる網羅性の低下を防ぐことが重要となる。網羅性も、仕様に対する設計の漏れや、作られたプログラム全体に対して実行するテストの漏れなどが考えられる。
また、製品としてリリースした場合には信頼性や保守性、セキュリティなどの品質課題が存在する。ソフトウェアが取り扱う情報を守れること、保守がしやすいこと、また万が一の事態が発生した場合に復旧が可能であることや、それらを通じて必要な時に使える状態を維持し続けることが非常に重要である。またソフトウェアは開発が終了しても修正や改良がしやすいという特徴があり、運用開始後には、障害報告、ログ、監視情報、利用状況などをもとに、修正や改良の対象が見直される。一定の修正はソフトウェアテストの結果市場環境に投入可能と判断されればバージョンアップという形でユーザに提供される。つまり、市場投入・運用開始後の動作状況の観測と是正も品質保証活動の一部である。
近年では短い周期で開発・評価・改善を繰り返し、運用後のフィードバックを品質向上のため継続的に製品へ反映するアジャイル開発などの手法も広く用いられている。
ソフトウェアの品質保証
ソフトウェアの品質保証における実務は、開発プロセスの管理と各段階でのテスト設計・実施・記録が中心となる。重要なことは、ソフトウェアテストを「最後に不具合を見つける作業」にしないことである。ソフトウェア品質の領域ではウォーターフォール型開発と呼ばれる上流から順次開発作業を実施する業務形態では、確認や検証作業が後工程に偏ると、仕様や設計における不備や課題が開発後半まで顕在化しにくいという課題があった。その後実装フェーズと検証作業の対応関係を可視化する方法としてV字モデル、Wモデルなどが示されてきた。これらは最後に不具合を見つけるだけでは、本質的に品質の作り込みが不可能であるとの経験により検討されてきた歴史と言える。
ソフトウェアは開発環境に関しては整備しやすさがある反面、顧客の使用環境は多岐にわたる場合が多い。近年では携帯端末の普及から、様々な端末環境で使用されても問題が発生しないことが求められたり、使用できる環境を明示することを求められるケースが増えているため、使用環境における評価を実施することが重要である。
またアップデートによる品質変化の管理も重要な課題であり、コードの書き換えはハードウェアの作り替えや設計変更よりも容易であるから、変更点の管理とそれに伴う適切なテストの実施が非常に重要となる。
ハードウェアにおける品質保証
ハードウェアの技術特性
ハードウェアは、材料・加工・組立・環境といった物理的要因の制約を受ける。そのため、ハードウェアにおける製品開発は、それら制約を乗り越え、管理することから始まる。また、ハードウェアは当初計画した動作や機能が適切に設計したとしても問題なく動作するとは限らず、適用される技術も機械工学のみならず、電気工学、電子工学など他の領域が含まれることもある。
ハードウェアは市場投入する際に生産・製造が必要であり、その際には製造バラつきが発生する。そのため、品質管理を通じてそのバラつきを抑制し、品質を安定させる措置が必要になる。近年は設計にも3D-CADが適用され視覚的にも把握しやすくなった。それでもモデル上と実際に形にした場合の差異が発生するケースもあり、また動作も想定通りになるかどうかはある程度は実機で追い込むことが必要になるケースが多い。
そのような特性もあることから、ある程度後工程にならないと製品の詳細を確認できる環境が作れないが、それを前提としフロントローディングを怠ると試作費用が膨張し納期・コストに大きな影響を及ぼす。その状態が過度になると設計変更が多発し手戻りによる納期遅延が常態化するため、事前の検証プロセスの構築と運用が非常に重要になる。
ハードウェアにおける品質課題の特徴
ハードウェアは上述の通り制約条件が多い。そのため、まず目的の機能を達成する技術が実現できるかという技術的課題から開発が始まるケースが多い。機能実現にリソースが投入され、品質作り込みが後回しになるケースがある。それを避けるためにも達成したい機能から考えられる品質要件の決定と、その品質をどのように実現するかを検討する品質設計が重要となる。しかし組織の文化や開発・設計担当部門の認識によっては品質に関わる情報が品質保証部門に展開されにくいケースがある。その場合、品質部門からのフィードバックがない状態のまま状況が進捗することがあり、修正にかかる手戻りコストが増大する。
また、ハードウェアにおいては実使用環境を再現することが比較的難易度が高い。大規模な試験施設を保有していないメーカもあり、開発中必要な評価を実施するためには外部施設を利用する等時間とコストにおいて負担が大きい。その限られた条件下で必要な評価を実施するため、それ以外の調整要素を可能な限り排除した評価用サンプルで評価を実施する必要がある。ただし、出来るだけ万全の状態で評価をするためとはいえ、過度に評価計画を後倒しすると修正の反映にかかるコストが増大したり、場合によっては修正が不可能になったりすることがある。そのため、事前に軽度な評価を小規模な環境で実施したり、上流工程にさかのぼって修正する余地を残したりするケースもある。これらについては製品開発チームが各自の担当領域の職務を理解し、密にコミュニケーションを取りながら手戻りが少なくなるように進める必要がある。
ハードウェアの品質保証
設計された特性値が製造を通じて適切に製品に転写されるためには、材料特性の管理、加工精度の維持、組立プロセスの標準化が必要であり、これらの管理状態を継続的に確認する仕組みが品質保証体制の骨格となる。また経時変化や使用環境による品質変動を見こした信頼性設計の評価も重要な業務である。
ハードウェアは様々な要因の影響を受ける。熱や振動など自身の動作から発生する要因で状態が変化する可能性がある。部品単体や工程作業が規格と公差を満たしていても、組立を想定して累積公差を考えて設計する必要があり、また工程が安定していても個々の製品のバラつきが発生する。さらに経年による摩耗や劣化などの品質の変動からハードウェアは逃れられない。製品を製造している期間が長い場合には、部品や製品の一部の生産を委託してる外注先において製造条件が変更され、変更前の製品とは特性が変わる可能性がある。
この様に、ハードウェア品質保証の実務は無理な設計をしないこと、図面の確定、適切な公差の設定、工程の安定化などが求められる。業種・製品種別によって具体的な手法が大きく異なるが、「変動要因の特定と管理」という本質は共通している。市場で不具合が発生した際、製造時・開発時の情報をさかのぼって確認できることが必要である。そのためにトレーサビリティ体制を構築し、いつ・どこで製造された部品を使って・どこで組み立てられた製品かが分かるようにしておくことが求められる。重要なことは、完成品のみの評価で品質を作りこもうとしない事である。
ソフトウェアとハードウェアを統合した製品の開発
近年の工業製品の多くはハードウェアのみでは成立せず、何らかの形でソフトウェアの影響を受けている。上述の通りハードウェアは自身の動作による熱や振動の発生、経年変化による腐食や摩耗、材料の疲労や劣化から逃れることができない。これらの要因がソフトウェアの動作に異常を来たすことがある。これは当初ソフトウェア開発時に想定していたハードウェア側の変化の幅を超えることによって起こる。またソフトウェアの制御によってハードウェアが破損し、ユーザに不利益を及ぼす可能性も想定される。
そのため、ソフトウェアとハードウェアを統合する際には、それぞれの評価に加えシステムとしての評価計画を立てる必要がある。加えて上述のハードウェアの変化・変動によりソフトウェアが影響を受ける場合や、ソフトウェアの動作によりハードウェアに想定外の変化(局所的な摩耗など)が発生する可能性を踏まえ、それぞれの相互作用を想定した品質設計と評価が必要がある。
これらの問題に対応する方法としては、新製品開発時にハードウェアの不具合がユーザの生命・財産に影響を及ぼす条件をDFMEAなどを用いることで明確にし、その条件に該当するソフトウェアの動作に対して、十分に安全側に倒した設計を持たせたり、ソフトウェアの制御の結果、危険な状態に入る手前で物理的に停止させる機構・システムを構築する等の配慮が必要である。また、ソフトウェアの機能として安全を確保する動作をさせる場合にはシステムを独立させるなど、不具合発生を見過ごすことがない対策を講じるべきである。
品質保証技術者に要求される能力
品質保証技術者は技術的な知識と、業務の構造を把握し問題の根本原因を特定する分析力が求められる。具体的には自社のQMSの理解、統計的品質管理の知識と運用力、製品・工程またそれらの背景にある技術領域に対する技術的理解、トレーサビリティの設計と運用の実務能力、監査の設計と実施能力などが挙げられる。加えて、品質課題が発生した際に組織横断的に機能する調整・説明能力、その前段階で発揮される事象とその要因に対する想像力は実務上不可欠であり、品質保証業務は技術職でありながら組織の機能を横断する管理業務の性質を持つ。品質保証技術者は担当した製品の品質に責任を持つこともさることながら、組織が品質を実現する仕組みの設計と維持、適切に運用することに対して責任を持つという認識が重要である。
品質保証部門の役割
品質保証部門が実際の製品開発業務に対して実施する内容はそれほど多くはない。仕様書や設計に対してのレビュー(DRを含む)と目的の達成、組立に使用する部品の評価と検査、試作品に対する信頼性試験、運用される工程や外注先に対する監査などが直接的に目に見える業務である。品質保証部門は製品に対して直接アプローチし、製品の品質を作る部門ではなく、品質が実現される仕組みを運用またその運用状態を監視し、必要に応じて是正を促す部門である。
製品の開発中、量産製造中、市場での消費の各段階において、品質に関する情報を収集・評価し組織全体の品質保証活動が機能するための基盤の構築・維持、そのために必要なデータの収集と適切なコミュニケーションがその役割である。品質保証部門が評価・検査業務の実務を担っていても、本来の監視・設計機能が希薄になってはいけない。組織の規模や扱っている製品や事業内容によって品質保証部門の具体的な業務領域は異なるが、いずれの場合も経営の品質マネジメントを体制として具体化する機能を持つことには変わりはない。
マーケティングと品質保証のつながり
マーケティングと品質保証はともに統計学を基礎技術とする領域である。また商品企画が作られる基礎情報の収集と企画の立案がマーケティングにおいて主な業務であり、品質保証は商品企画が開発・設計を通じて適切に計画され、製造を通じて設計が製品に正確に転写され、市場に流通することを保証する業務である。さらに市場での評価やサポート情報などは次の製品企画に向けたマーケティングデータとしての意味を持つ。
即ち、マーケティングと品質保証は商品企画を挟んで隣接する業務であり、製品の立案と実現という役割をそれぞれ受け持っているということができる。組織にとって、それらは技術と製品が社会的価値を帯びる上で重要な二大業務と言ってよい。
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著者プロフィール

- 株式会社コルプ代表 / QA+編集長 Founder & CEO, QUALP Inc. / Editor-in-Chief, QA+
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2008年より精密機器メーカにて民生機器の製品開発における品質保証業務に従事。機械部品を中心としたハードウェアの保証業務5年、機器に搭載するファームウェアの品質保証を4.5年経験。設計部門と連携した開発プロセスからの品質向上、量産を見越した品質構築を実現する。ハードウェア経験も活かしつつソフトウェアの品質向上を実現し、開発会社と連携した担当機種で不具合の低減を達成。
2018年に株式会社コルプを設立、代表取締役就任。写真・映像などのPRコンテンツの製作と品質保証を中心とした業務改善で中小企業を支援。潜在的不良リスクの低減から不測のコスト増に対応できる組織構造の構築にノウハウを持つ。YouTubeチャンネル運用支援では顧客が自立してチャンネルを運用できるよう育成まで行う。業務改善支援では中小企業の30代中堅社員の業務管理方法の改善指導をした上、業務標準化を進めるなど管理面に関する支援を行う。
「判断と構造で、未来に舵を切る人のためのメディア」QA+を立上げ、編集長として各種コンテンツの製作・ディレクションを行う。






