「相手はプロだから大丈夫」が危険な理由

自社製品の部品や加工を外注するとき、「相手はその道のプロなのだから、任せておけば大丈夫だろう」と考えたくなる気持ちはわかります。しかし、この姿勢は危険です。

外注先はたしかにその加工や製造のプロです。しかし、あなたの製品の目的や背景を100%理解しているわけではありません。相手は自分の業務を遂行するプロであって、あなたの製品において製造責任を肩代わりする存在ではないのです。

発注側が見ていない工程は、見ていないなりのリスクを常に抱えています。材料のロットが変わった、作業者が交代した、設備を更新した…こうした変化が品質に影響を与えることは日常的に起こりえます。「プロに任せた」つもりでも、品質を担保する責任は発注側から離れることはありません。

不具合が出たとき、責任はどこに残るのか

ここで考えておきたいのが、不具合が発生したときの責任の所在です。

外注先の論理はこうです。「あなたの要求通りに作りました。仕様を決めたのはそちらです」。
完成品メーカー側の論理はこうです。「最終的に製品として市場に出したのは自社だから、品質に問題があれば自社の責任になる」。

そして完成品メーカーはリリースした製品で市場事故が発生した場合、原因究明を実施した上で事故原因の追究と原因の切り分けを実施します。そこで外注先の加工に落ち度があればそちらに修正指示が出るわけですが、その手前でメーカ側が発行している図面が存在します。その図面と実態が異なるケースが時折見受けられます。

これはメーカ側が実態に即して設計見直しを実施していない、もしくは見直しをしたが図面という書類に反映しないというケースがあります。製品が長く続いた場合にこの情報の未反映がメーカと加工者の責任区分の不明確さにつながることがあります。

受発注関係において、どちらの言い分にも筋はあります。しかし、このねじれは発注時に要求が曖昧だったり、責任分担が不明確だったりする場合に深刻化します。特に量産に入ってからこの問題が顕在化すると、数百個、数千個という規模で損害が発生する可能性があります。後から「言った・言わない」の争いになる前に、事前の要求整理と責任分担の明確化をしておくこと。これが、不具合発生時の混乱を防ぐ最大の手段です。問題が起きてからでは遅いのです。

品質を担保するための3つの関与方法

発注側は具体的にどのように品質を担保すればよいのでしょうか。方法は大きく3つあります。

1つ目は工程監査です。外注先の製造工程や品質管理体制を直接確認し、取引の可否や継続を判断します。大手企業ではよく行われている方法で、チェックリストや監査基準に基づいて体系的に実施されます。同時に外注先と自社の持っている情報に差異がないかを確認し、最新情報でお互いが仕事できるように情報整備の機会とすることも重要です。

2つ目は日常的なコミュニケーションです。「最近どうですか」「この前のロットはどうでしたか」といった会話の中から、外注先の状態を把握します。形式ばらないやり方ですが、現場レベルでは極めて有効です。書面には現れない微妙な変化を察知できるのは、こうした日常のやりとりがあってこそです。

3つ目は納品物検査です。納入された製品を自社で検査し、合否をフィードバックすることで品質をコントロールします。

形式は違っても、何らかの形で外注先の状態を把握する行為は欠かせません。綿密な情報共有やコミュニケーションとしてそれらを位置付け、外注先と

中小企業における現実的な外注管理

「工程監査なんてうちの規模ではできない」という声もあるでしょう。たしかに、大企業のような重い監査体制を中小企業が敷く必要はありません。

しかし、最低限の接触を絶やさないことは大切です。品質の問題は、書類や検査データの外で兆候が出ることも多いのが現実です。工程の変更、担当者の異動、設備の劣化や材料と生産副資材の調達状況。こうした情報は、継続的な関係の中でしか拾えません。「最近ちょっと納品のバラつきが増えてきたな」という感覚は、数字には表れなくても、日常のやりとりの中で察知できることがあります。

特に量産品では、不良が発生した場合の影響が一気に広がります。何百個、何千個という単位で不良品が市場に出てしまうリスクを考えれば、責任分担を事前に明確にしておくことの重要性は明らかです。

管理負荷を下げる代替策としての加工サービス

とはいえ、すべてを自社で直接管理し切るのが難しい場合もあります。そうした場合は、標準化された部品発注プラットフォームやオンラインの加工サービスを活用するのも一つの手段です。

こうしたサービスでは、指定されたフォーマットに従って発注すれば、一定の品質が担保された部品が手に入ります。自由度は下がりますが、管理コストを大幅に削減できる可能性があります。

リソースが限られている企業ほど、全部を直接管理しようとするのではなく、「任せるところは仕組みに任せる」という設計思想が必要です。すべてを自前で抱え込むことだけが責任を果たすことではありません。何を自社で管理し、何を仕組みに委ねるか。その判断そのものが、外注管理の設計なのです。重要なのは、委ねた部分についても「何が起きているかを知っている状態」を保つことです。完全に手放すのではなく、見える範囲を確保しておく。それが現実的な外注管理の在り方です。


外注とは、責任を外に出すことではありません。他社の力を使いながら、自社の責任をより明確に引き受けることです。最終回では、品質と価格の関係、そして自社製品を事業として成立させるために必要な視点を整理します。

著者プロフィール

Takahiro Yoshida
Takahiro Yoshida株式会社コルプ代表 / QA+編集長 Founder & CEO, QUALP Inc. / Editor-in-Chief, QA+
2008年より精密機器メーカにて民生機器の製品開発における品質保証業務に従事。機械部品を中心としたハードウェアの保証業務5年、機器に搭載するファームウェアの品質保証を4.5年経験。設計部門と連携した開発プロセスからの品質向上、量産を見越した品質構築を実現する。ハードウェア経験も活かしつつソフトウェアの品質向上を実現し、開発会社と連携した担当機種で不具合の低減を達成。
2018年に株式会社コルプを設立、代表取締役就任。写真・映像などのPRコンテンツの製作と品質保証を中心とした業務改善で中小企業を支援。潜在的不良リスクの低減から不測のコスト増に対応できる組織構造の構築にノウハウを持つ。YouTubeチャンネル運用支援では顧客が自立してチャンネルを運用できるよう育成まで行う。業務改善支援では中小企業の30代中堅社員の業務管理方法の改善指導をした上、業務標準化を進めるなど管理面に関する支援を行う。
「判断と構造で、未来に舵を切る人のためのメディア」QA+を立上げ、編集長として各種コンテンツの製作・ディレクションを行う。

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