機能に不足がない企業に「内製化」のメリットはあるか

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自社にない機能は自分で始めてみることで内製化を進めることが一般的になるというお話をしました。では業務の内製化は既に組織の機能面に不足がない企業はする必要がないのか考えてみましょう。

・組織に不足がない企業はスキルを内製し始める

組織面から当面機能の不足を感じることがない企業の場合は各職場内にあるスキルに不足を感じることが考えられます。何故なら新しいことをやろうと思ってもその新しいことに対応するスキルがないからです。ここで、新しいスキルを社内に取り込むときに取りうる方法は2つあります。そしてそれぞれにメリットとデメリットが存在します。特に人材の観点から考えてみましょう。

(1)そのスキルを持った人材を採用する
(2)社内で新しいスキルに対応するための人材を選び教育する

(1)のメリットとデメリット
・メリット
提示できる待遇にもよりますがその道のプロフェッショナルを雇うことも可能です。その点でスキル単体の品質を高めやすい方法ではあります。

・デメリット
仮にスキルが高い人を確保できても自社の方法にマッチするかどうかが分かりません。採用した人材が「自社の文化に合わない」と思われた経験がある企業も多いと思いますが、採用された方も「自分とは合わない」と感じています。

ここで、採用した企業側が「自社の文化に合わない」と感じた場合には注意が必要です。もしかしたら、採用に当たり検討していた事業を行っていく上では新しく入社した方の考え方やアプローチの方が適切であるケースもあるからです。今まで自社で行ったことのない事業や商品を扱っていく上では、社内の文化や風土、やり方を変える必要があるかもしれないのです。もしその可能性を想定しないまま、今まで社内にない技術を持った人を雇った場合、その方が離職してしまうかもしれません。これでは、組織が変わろうとしている意欲そのものを潰してしまいかねません。新しい事業のための新しい技術やそれが使える新しい人材が欲しいならば、その事業に当たる受け入れ側の企業が、入社した方を守らなければいけません。

それに加えて、新しく入社した方が言う事とやる事を、もともといる従業員(まずは受け入れ職場)が理解できるようになるまで新しい分野の勉強をする必要があります。むしろその勉強の時間が、新しい分野を社内に取り込むための礎になります。決して、人材採用のみで新しい分野への進出が完了するわけではありません。

(2)のメリットとデメリット
・メリット
社内で新しい分野の担当者を任命して一から構築することで、外部から採用する時に発生しがちな人材側のスキルと企業側の求めているもののミスマッチを防ぐことができます。ただし、社内にノウハウがない状態は同じなので、新しい事業・商品の学習と構築を進める方向を整理しながら進めることが大事になります。

元々いる従業員が担当者になるため、社内の雰囲気が理解できないなどという問題は最小限に抑えられますが、その担当者にすべてを任せすぎると、その担当者が孤立無援になって(いると当人が感じて)しまい、本人の中に無力感や諦めのような気持ちが起きることがあります。そうすると逆効果なので、社内で担当者を選出する場合でも組織的な支援の体制は必要です。

担当者がほぼ0の状態から立ち上げるので自社にあった形を作っていくプロセスをはじめから追うことができるので、それを明文化すれば教育資料とまではならなくても簡易的に手順化ができます。担当者に余裕がなければ別の人をあてがうことも検討すべきです。その方が状況を客観的に把握できるメリットもあります。

・デメリット
社内に新しく導入したい分野や技術に関する適性のある人がいるかどうかが問題になります。数名から数十名程度しかいない中小企業の場合新しい分野を勉強するのは社長の仕事になりがちですが、それより大きい組織になると、担当者を付けることが選択肢に入ります。その場合誰に任せるかが大きなポイントになります。

この時、一度に複数人を選出したてチームで学習を進める方法や、一人が不向きだった場合に別の人物を選出するということもあり得ます。それぞれの方法に応じて組織的なケアが必要であるのは変わりません。

・内製化を本質的に進める時に取る方法論

先の記事で書いた「自分でやる」を実践することを優先して考えるならば、(2)の社内で人材を確保して立ち上げることが望ましいと思います。小さい組織が「自分でやる」ことは社長がやる事を意味するのであれば、大きい組織にとっての「自分でやる」は「自社内でやる」「自分達でやる」だからです。

自社で実施する事によってノウハウを蓄積することができれば、応用もさせやすくなりますし、これから市場が新しく興ってくる場合には既存の人材だけでは対応できない場合も考えられ、その場合はいずれにせよ自社で対応することが必要になるからです。その結果地盤ができれば外部から人材採用を行っても取り組みが評価されて採用しやすくなることも考えられます。

社内に体制を構築していく上では、もちろん外部のセミナーなどの勉強会を活用することは充分に考えられます。社内に担当者を作ることでその内容を組織として消化しやすい土壌を作ることにもつながるでしょう。

・適切な投資を行う

注意すべき点は社内に担当者を作ることは最初から大規模な投資をする負担を軽減することにつながりますが、必要な投資をしなくてもいい事にはならない点です。新しく始めたい内容について設備や資産が必要であれば購入しなければそもそも何もできませんし、新しい分野の学習を進めるにしても資料やセミナーの受講もなしで始めることはできません。

新しく始める分野に必要なことは何か、そのためにどの程度の予算が必要かはある程度最初から見積もっておく必要があります。学習や構築を進めるにつれて見積もりの精度も上がると思います。

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