カン・コツを明文化する

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以下の記事で、属人化した仕事を組織でまわすためにカンやコツまで明文化すると書きました。

組織を機能させるために必要な3つのこと

そのためのポイントを簡単にご説明します。

・ある人のカンが働くところは他の人が迷うところ

「カンがいい」ということは他の人のカンが働かないところでその人はカンが働くということです。ということは、その人しか気が付いていない視点や状況があるということです。同時に他の人は同じ状況になると迷ったり間違えたりするということです。

カンはその業務を継続して経験している人にだからこそ気が付く部分だったりしますので、その人が業務を遂行する際に注意していることや判断基準などを作成する帳票類に盛り込むことでカンを明文化することができます。

ここで問題があるのは、日常的にその作業をしている方はそのカンを含んだ行動そのものが普通になってしまっていることです。なので、自分が普段仕事をしているときに考えていることのどの部分を書き起こせばいいか気づいていないことが多いです。

その場合は一度本人が手順書の形を完成させ、内容を他者(理想的には上司)がヒアリングをする形で補足する箇所を指定するなど、漏れを極力減らす施策を講じる必要があります。この方法が成立するのは、カンが働くところは本人が必ずしも意識して行動していない可能性があるからです。一度本人が作った手順書を元に内容をさらっていくと、「ここはどうしているの?」と思うところや「こういう時何を考えているの?」と聞き取る側が作業手順に応じて条件分岐を想定して進めることで、その作業者独特の判断基準を拾い上げることができます。

・ある人が「コツがあるんだよ」というところは他の人にできないところ

コツが必要な部分というのはその人が仕事を進める中で「こうしたら上手くいくな」という全体の作業に大きな影響を与えないミクロの範囲でオリジナルの技術を開発して適用している箇所と言い換えることができると思います。

実はコツを明文化する際に「カンの明文化」とは少々異なる部分、具体的には明文化を進めようとする管理者を困らせる可能性がある部分をはらみます。「カンが働くところは本人が必ずしも意識して行動していない可能性がある」と上で書きました。しかしコツというのはその人本人が編み出した方法、開発した技術です。だとするなら、その自分しかできない技術や方法を易々と他の人に教えるでしょうか。

同時にカンと違いコツはどこで適用されるかがわかりません。ですので、コツを明らかにする際には 現場を見学し、作業している本人を観察するのが一番です。管理者の方は「そんな時間ない」と仰るかもしれませんが、そこは少しずつでも現場に出て作業の様子を見ることをお勧めします。コツを明らかにするために現場を見るということは、現場にいる現役の作業者の目線で見ることに他なりません。それは昇進する前のあなたの目線そのものですし、管理職の椅子に座ってから書類と打合せの日々だったあなたに作業者時代の感覚を呼び戻します。そうすると熟練の作業者が適用しているコツを見つけることも、そのコツをどのような時に適用しているかを理解することもより簡単になります。

本当にコツを明文化する必要に迫られたとき、その作業者の持つコツと仕事に対する姿勢を理解した管理者がそのコツを明らかにして職場に展開してほしい旨をその人に説明することがまず必要でしょう。そしてそのコツを明文化した後、仕事の仕方などをどのように変えるかも検討事項です。

この時の明文化の対象になる帳票はオフィスワークでも現場業務でも何らかの作業標準を作ろうと考えている職場であれば、作業手順書などがいいでしょう。

カンは代表的な作業手順書を改定する形で判断基準や方法や考え方を明記する形で対応可能になるケースがあるかと思います。

コツについてはその技術の内容によっては、特定条件下での作業手順として明確にするという方法があります。

これらの明文化によって得られる効果には以下のようなものがあります。
(1)作業者全体の方法が揃う
(2)熟練した作業者の考え方を展開できる
(3)スキルを明示できる

特に(3)のスキルを明示できることは人材育成の観点からもメリットが大きいので、できればここまで展開したいものです。

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