商品を量産して販売したい時につまずくあれこれ

さて、実際に企画を思いついて試作も実施してみて「良くできたからこれを販売しよう!」と思った時に気が付くことがあると思います。特にそれらは一人(自社のみ)でやっていて、しかも今まで商品を販売したことがないとなると特にいざ品物を発送できるようにしようと思った時に気が付く問題だったりします。

そんな問題をいくつかここにリストアップしておきます。「地道に手売りしていくからそんなこと気にしないよ」という方もいらっしゃるかもしれませんが、今はネットでも販売しやすくなっているので、もしかしたらそういうサービスも利用しようとすると何らかの形で影響するかもしれませんので、気に留めておいて損はないかと思います。

  1. 梱包
  2. 取扱説明書
  3. 保証期間と補償範囲
  4. アフターサービス
  5. 環境規制対応
  6. JANコード

1.梱包

何か袋に入れておけばいいだろと思うかもしれませんが、商品がホコリや傷が付きやすかったりするものであれば何らかの保護が必要ですよね。特に静電気を嫌う電子機器などはエアパッキン(プチプチ)も帯電防止用のものを使う必要があります。

手売りなら袋に入れてお渡しすればいいだけかもしれませんが、もしWeb販売などの通信販売を検討されているならば手渡しというわけにいかなくなってくると思います。その場合一般の物流ルートに乗せることになりますが、輸送中の衝撃で壊れないように梱包する必要があります。

箱を用意するにしても中が詰まってないと箱潰れの要因になりますし、上に他の物を積まないように依頼するにしても、自分が同じ商品を複数発送してしまうとそういうわけにいかなくなります。

商品の破損についてはお客様が購入して梱包箱を開けて使い始めるまでは販売者の責任です。お客様が最初に箱を開けた時(=製造業で言えば受入検査に相当)に不備がないようにしましょう。

かといって厳重にすると梱包そのものにかなり高額なコストがかかります。梱包も原価に含める必要がある資材と捉えて販売方法と輸送の計画を立てましょう。

2.取扱説明書

案外おろそかにしがちなのが取説です。「使い方なんて見ればわかるだろ」とは絶対に言ってはいけません。また取説には使い方だけではなく、やってはいけない使い方、その結果起こる可能性のある傷害レベルも記載する必要があります。

これも手売り手渡しの場合は問題になりにくいですが、通信販売で遠隔地に発送する場合はユーザがどんな人か、またどんな使い方をするかが全く想定できません。ですので取扱説明書である程度の指示を出しておく必要があります。

これも全く何も書面での指示がないと何らかの事故が発生した場合に生産者が製造物責任を問われることになりますので注意が必要です。

特に乳幼児が触れるた場合の安全性についても言及が必要です。また実際に触れる可能性を0にすることができないものであれば安全性の確認もしておいた方がいいでしょう。

3.保証期間と補償範囲

通常1年の保証期間を付けることが多いと思います。またその保証期間内であっても生産者の責任範囲の不具合しか補償範囲になりません。買う側でいる時にはそのことを認識しているつもりでも、自分の商品を買った人がすべてその理解でいるとは限りませんので、補償範囲を明示しましょう。

例えば落下による破損などは使用者の不注意で防げる問題なので、通常であれば使用者の責任範囲になると思います。

使用者の環境で起こりそうな事象とその補償のしかたについて決めておくことは自社のビジネスを守る上で必要なことなので、事業を継続する観点からも必ず実施しましょう。

4.アフターサービス

3の話と関連しますが、何らかの故障が起こった場合にどのように対応するかを決めておきましょう。故障した品物を送ってもらう必要があるのか、送ってもらってもどの程度の壊れ方なら修理するのか、もしくはそのまま新品と交換することになるのかなどの基準を作っておきます。

故障に関する問い合わせやクレーム受付窓口も決めて取扱説明書などに記載します。他の商品でも「お客様センター」などの問い合わせ窓口の記載があると思います。

5.環境規制対応

今環境負荷が低くなるように商品を作ることが求められています。欧州のRoHS指令やREACH規則はよく知られていると思いますが、それ以外の各国で規制がかけられていますので、販売対象地域の規制を確認しましょう。

特にREACH規則などは今後追加される予定の物質に対しても徐々に対応方法の検討を各企業に求めます。商品を作ったら一時的に販売して終わることはあり得ませんので、今後の見通しまで含めて確認しましょう。

6.JANコード

これは筆者も知人のデザイナーに言われて気が付いたことでもあります。小売店に卸売り販売する場合はJANコードがないと商品管理ができず受け入れてもらえないことがありますので、事業者登録と商品登録をしましょう。

弊社でもこれから対応予定です。

事業者登録
https://www.dsri.jp/jan/jan_apply.html

商品登録データベース
https://www.dsri.jp/database_service/jicfsifdb/

完成品メーカはこれらの対応をする部門が存在しますが、中小規模のメーカの場合はこれらの対応部門がないことが多いので手さぐりになります。商品を市場に流通させるときには必ず必要になる要素な上、量産開始後では対応が遅いものも多くあります。漏れがあった場合は仕様設計のタイミングまでさかのぼり、設計上対応できているかも含めて確認しましょう。

これらの項目の更に細かい要素はまた別の記事でご説明したいと思います。

発注と品質保証

「自分にできないから誰かにお願いしよう…」と思うことはよくあると思います。製品開発でも、自社で対応できない加工方法や部品の制作や生産はどこか対応可能な工場にお願いしようとするのが普通だと思います。この時「きちんと作ってくださいよ!」と思うのは誰でも同じだと思います。しかし、何をもって「きちんと」しているというのでしょう。

今日は製品を生産する上で「きちんと」するために必要な確認事項などのご説明をしておこうと思います。

・製造条件の4M

4M管理というのは製造業にお勤めなら聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。その4Mの内容と確認事項を簡単におさらいします

  1. 作業者   :Man
  2. 治工具と機械:Machine
  3. 材料    :Material
  4. 方法    :Method

1. 作業者:Man

一つ目はMan、つまり作業者や人材のことです。工程内で作業する作業者が変わらないことを意味しますが、同じ人物が休憩も取らず帰宅もせず長期休暇も取らないで常に業務にあたることは不可能ですので交代は必ずあります。ですので、人材はスキルで管理します。

  • スキルマップやスキルチェックシートがあるか
  • スキルマップやスキルチェックシートの内容が適切か
  • スキルマップやスキルチェックシートの管理方法は定まっているか
  • 作業者が交代しても必ず同じスキルレベルの作業者があたるように管理されているか

生産をお願いする企業にお邪魔した時は、そのような管理がされているかを確認し、可能であればスキルマップやスキルチェックシートを見せてもらいます。

2. 治工具と機械:Machine

次は道具と機械です。「この加工にはこのような機械を使います」というだけでは不十分です。私が自社、他社を含め確認するポイントを今(目の前に部品や機械がない状態で)思いつくだけ簡単に挙げてみます。

  • 機械にセッティングする治工具やアタッチメントの種類
  • その摩耗度や交換時期の管理
  • 機械の設定条件
  • 設定や工具の変更対応の方法
  • 使用方法等の手順書の整備(機械の操作盤等に使い方が書いてあるか、それ以外に作業手順書があるか)
  • 故障時に代替できる機械や方法の有無
  • 日常管理が行われているか(適切な管理スパンを把握しているか)、管理方法は定まっているか
  • 上記のものがない場合にそれを補完する経験や方法の整備があるか

生産する部品や使用する機械を定めていないので一般的な部分ですが、その道具や機械など生産設備に関連する部分に対して重点的に整備します。1のManと重なる部分もありますが、オーバーラップしても構わないので必要と思われるものは全て確認します。

3. 材料:Material

材料は製品そのものに組み込まれる一部になりますので非常に大事なものです。ですので、同じものが使われるのが前提ですが、この時に同じと思いながらも同じではないことが起こり得ますので、確認は必要です。これも一般的な範囲のみですが例を挙げてみます。

  • 材料の種類が変わってないか
  • 材料の種類や商品名が同じでも成分の変更がないか
  • 材料の生産工場の変更がないか
  • 材料の製造メーカの違いがないか
  • 使用する予定の材料以外の混入がないか
  • 材料の入荷時期の管理はされているか、管理方法は定まっているか
  • 材料や購買品の受入検査をする場合の検査方法とデータの管理はされているか
  • 副資材の仕様予定の有無
  • 副資材の追加や削除がないか

材料については同じ商品名や種類であれば大丈夫だろうと思われるかもしれませんが、材料の種類とメーカによっては成分の変更が発生する可能性があるので注意が必要です。特に塗料や潤滑油などはモデルチェンジで使い勝手を向上させたりすることがあり得るので、変更が入りそうなものは製造元に確認するなどします。

もし製品の輸出などを検討している場合は製品に含まれる物質に対して環境規制対応の確認が必要になります。RoHS指令やREACH規則などは聞いたことがある人も多いかもしれませんが、各国がそれらを元にして独自の規制をしいているので輸出先に関して調査しましょう。

確認の参考になるサイトをリンクしますので参考にしてください。

ここが知りたいRoHS指令 – J-Net21

ここが知りたいREACH規則 – J-Net21

4.方法:Method

ここでは製品の生産に関わる全ての方法について確認します。

  • 加工方法
  • 各工程の治工具や機械の扱い方
  • 各工程での帳票類や書類の管理方法

加工方法はもちろんのこと、道具の管理の仕方や書類の管理の仕方も漏れがあると生産に影響します。特に書類は組織で業務にあたる以上、複数の人が対応するのになくてはならないものなので、存在するのか、内容に必要な物が含まれているか、更新が必要な場合に更新されるなど管理されているかを確認します。

製品の生産をお願いするということは常に同じ製品が納入されることを期待するわけですから、それそのものが品質が安定していることを要求しているということになります。

工業というのは再現性を確保したものであると「ものづくり」の3ステップでお話ししました。

工業における最大の価値は組織化された生産プロセスによる量産性の高さと 再現性の高さ(品質の安定)です。

「ものづくり」の3ステップ

この「再現性の高さ」とは「同じ材料で同じ道具を使って同じやり方をしてれば同じものができるはずだよね?」ということに他なりません。

すなわち製品を発注するということは「この材料を使って作ってほしいのですが、どの道具をどういう風に使って、どうやって管理しながら作るんですか?」ということであり、生産が開始されたら「最初に聞いたようにこの材料でこの道具をこうやって使いながら、日々管理して生産してるんですよね?」ということになります。

「管理図を書いています」とか「工程能力が高いです」という説明を受けることがありますが、工程能力や管理図などは管理方法や管理対象にすぎません。工程能力がいいからそれでいいわけではなく、「何をどうやって管理するか」が決まっていないと意味がありません。そのすべてにわたるプロセスを維持してこそ初めて品質の維持が可能になりますので、忘れないでおいてください。