イベントの写真を自社のPRに使う

毎年、年一回開催されるあるイベントの撮影を担当させて頂いております。今年もそのイベントが終わり、納品も完了してほっとしたところです。

その写真はイベントの主催者が広報素材としてSNSやパンフレット、フライヤーにしたりするのですが、イベントの現場写真というのはいくつかの意味で撮影することが多いです。

  1. 当日の記録
  2. 今後のプロモーション用の素材
  3. 出演者へのサービス

1はご理解頂けると思いますが、「開催しました!」という形でSNSなどに掲載される写真ですね。参加者がみんな笑顔になっている集合写真などと合わせて投稿されるとそれなりにインパクトがあります。

3は意外かもしれませんが実際に要望があることもあります。今では講師がそれぞれご自身のSNSやWebサイトなどで発信されることも多いので、それに使うためにご要望があります。

大事なのは2です。2の難しさは2つあります。ひとつはその写真を見て「この会おもしろそう!行きたい!」と思わせないといけないこと。ふたつめは次回以降も同じ状況や構成で開催されるか分からないのにその時にもある程度対応できる必要があることです。

・PRのためにイベントを撮る

実際の所、「次回で大幅に構成を変えることになったので前回のは使わなくなった」と言われることもあります。ですが会の構成が変わっても会場のセッティングが近ければ会場風景として使える可能性がありますし、聴衆が講演内容に聞き入っている顔や懇親会などの談笑風景は汎用性がありますので一通り押さえるなど工夫します。

※この時には必ず主催者に参加者に対して撮影される可能性がある事、その写真が公開される可能性があることは必ず周知することを依頼します。依頼できていない場合はどんなに主催者のためになるシーンであってもカメラを向けないなど撮影しないようにします(念のためと思って撮影してあって、一応注釈付きで納品した場合、万が一その注釈がクライアント側で周知されず公開されてしまうと大問題になるのでそもそも撮影も納品もしません)。

「行きたい!」と思わせるには参加者が楽しそうにしているか、体験する価値がある(イベント側が売りにしている)ワークなどが含まれている必要があるので、ある程度聴衆の雰囲気も含めて撮影します。この時、上の※の内容がフォローされてないと聴衆の表情が撮れないので、やはりある程度参加者への周知とカメラマンへの配慮というのは必要になります。

・カメラマンとカメラはイベントにとって「異物」

イベントというのは主催者と参加者がいて成り立ちます。他に必要な物はどこかしらの会場だったり、主催者以外の出演者や登壇者、講師などの人たちです。

お分かり頂けるようにイベントを開催するための構成要素にカメラマンは存在しません。つまり、イベントを撮影する目的が上に書いた1~3のどれであれ、またイベントを撮影するカメラマンがプロであれ、主催者側のスタッフが撮るのであれ、イベントそのものには不要なものです。

不要なものが入る以上イベントの参加者が得る体験価値自体をカメラマンが毀損する、下げてしまう可能性があります。カメラマンはその価値を下げない努力をすべきです。

そのために一番必要なことは何か?その答えはものすごく簡単なことです。カメラマン自身がイベントの価値を理解し楽しむことです。その場の講師や出演者の熱意、参加者の雰囲気に合わせることです。最低限の態度として、その場の雰囲気を乱すような行動や表情は絶対に出してはいけません。

・自分が笑顔でいれば相手も笑顔になる

少なくともカメラを持って人前にいる時点で、自分は他の参加者やスタッフよりも目立つ存在であることを自覚することです。そんな自分がふてくされてたり、眉間にしわを寄せていたり、ましてや無表情でずっと会場前方で液晶モニターをのぞき込んでいたりしては参加者が持つ印象は悪くなるばっかりです。

またイベント中はどんなことがどのタイミングで起こるか、それによって参加者がどんな表情をするかを常に見ていなければなりません。仮にタイムテーブルが決まっていてもそのタイムテーブルに沿って起こることを撮るためには会場全体を観察している必要があります。

そのためには顔を上げて会場を見ていなければいけないのですから、参加者はカメラマンの顔を見られる状態になるわけです。そこで不機嫌そうな顔をすることは参加者の気分を悪くします。結果として、参加者がカメラマンが持つカメラに対していい表情を向けることはあり得ません。

それを逆手に取り、どんな時にも笑顔で(笑顔が不自然な時もありますが)、前向きさが感じられる表情でいれば参加者は違和感を感じにくいですし、それに伴って場に溶け込むことができます。

笑顔の相手が撮りたければ、まず自分が笑顔になることです。

なぜ突然こんなことを書き出したかというと、やはり時々会場に溶け込めずにいるカメラマンを、参加者として訪問したイベントで見かけることがあるからです。

特にその主催者(企業)のチームのうち、若い人が記録係を受けていたりすることもあり、ご苦労されているシーンもよく見かけます。

ただせっかくカメラを持ってその場にいる以上は、その方がプロであるかどうかに関わらず、いい写真を持って帰って今後に活用して頂いた方がよかろうと思い、こんなことを書きました。

写真は企業にとってPR素材です。品質の高い素材を多く揃えて自社をアピールできるようにしましょう。

「来ればわかる」「使えばわかる」じゃわからない

先日、生で音楽を聴く機会がありました。その時、出演者の方は自分の出番が終わった後、本当に謙虚に会場にいるお客さんと言葉を交わされていました。私も簡単にご挨拶しましたが、「来てもらえて、聞いてもらえることがありがたい」という気持ちは嘘ではないでしょう。

過去に私が書籍に挿入される写真を撮影した際、出版記念イベントに招待され、簡単に撮影の内容などをお話ししたことがありました。その後、懇親会のような形になり、著者が他にいらっしゃるその会で私の出番はほぼ終わったようなものだったのですが、その中でも少なからず写真の撮影者ということでご挨拶に来て下さる方がいらっしゃいました。
「写真がよくて 『 誰が撮ったんだ?』と思った」とか「 本を読む上で写真の雰囲気も背中を押してくれた」とか仰って下さる方がいらっしゃったんですね。

・聞いてない人、見てない人は買わない

当然のことではあるんですが、そのアーティストの曲を聞いたことがない人はその人の他の曲やコンサートチケットにお金は払わないんですよね。私の写真を見たことがない人も、私の写真を見るまで、掲載された本や作品を買おうとは思いません。

つまり何らかの形で知ってもらわないことには購入に至らないことになります。ですのでAmazonなどの通販サイトでは商品画像を掲載したり、書籍の中も一部公開したりして購入の判断をしやすくしています。実際「Amazonで公開されていた写真のページが素敵でした」と仰って下さった方がいらっしゃいました。私の写真が購入の理由の一つになっているとのことで、とても嬉しいことですね。

これらがない状態で「買って下さい」ということは、事実上道端でチラシを配ってるのと大して違いがありません。興味も関心もない不特定多数の前で商品の名前を叫ぼうと、誰も聞いてくれません。

人が自分の商品や自分が企画したものを知ってもらいたいと思うとき、 それでも案外多くの人が道端でチラシを配ろうとします。その人が道端で配っているチラシもティッシュも受け取ったことがなくてもです。

・無料サンプルが次の一手

「だったら使ってもらおう」ということで多くの人が無料サンプルをチラシに付けたりします。それでも興味も関心もない人には使う理由がありませんので、チラシと一緒に捨てられます。

だったら、圧倒的に使う理由がある人のいる所で配るのが得策だと気が付きます。もうチラシの時点でお気づきかもしれませんが、無料サンプルを付けたらその意味はチラシだけより大きくなります。

だから世間では量販店の類似商品売り場でサンプル試用ができたり、キャンペーンイベントを開催したりしているわけですが、完全に個人もしくは中小企業でそんな広告費を掛けられない、掛けたところでそもそも自分たちのことを知ってる人がほとんどいない人はどうしたらいいでしょうか。

・本当に「友達だろ?」というべきとき

結論から言ってしまいますがサンプルを作ったら友達に使ってもらう、最低限、自分と近い属性の人に使ってみてもらうことが一番の近道です。必ずしもいい顔をされるとは限りませんが、ここは何とかして頼み込んで、一人でも多くの友達に使ってもらう機会を作りましょう。もちろん相手の迷惑にならない範囲で。

この結果得られるものは賛同する意見や応援だけではなく、「こんなもん使わせんなよ」とか「これ何の意味があるの?」など率直な意見も多く寄せられるでしょう。

友達というのは自分とある程度の交際期間があり、お互いの社会的バックボーンをある程度知っている相手ということになります。そうであれば、作ったものが相手のニーズに合致していたかどうかを確認するのが比較的容易になります。

不特定多数の大雑把な反応より、少数の詳細なフィードバックの方が商品特性のコントロールがしやすい情報が手に入る可能性が大きいです。その使ってもらった友達の属性やタイプ、ニーズごとに反応を区分するとマーケットが予測できます。そうすればチラシを配る時、広告を打つ時にあらかじめ対象の範囲を決めることが可能です。

・これは「要件定義」の第一歩

自分の企画を立ち上げたとき、次にするべきことがあります。それは「要件」や「要求」を決めることです。

「要件」や「要求」とは、「その製品は何のために作られるのか、どのような機能を持ちそれによりどうやって目的を達成するのか、ユーザは効果を得ることができるのか」で、「要件定義」は「要件や要求を企画者が定義する作業」です。

なぜ企画の次工程に相当するそんな上流の話を品質というテーマの中に置くのかと思われる方もいるかもしれませんが、ここで定義される要件そのものが、製品やサービスになった時に品質と呼ばれるものの一部になるからです。決して全部ではありません。しかし確実に品質の一部に要件定義の内容は含まれてきます。

要件定義なくして開発プロジェクトの立ち上げはあり得ません。

・「生もの」は代替品を用意する

この記事の最初に音楽と写真の例を出しました。特に音楽などは音源を再生して聴くならともかく、ライブの興奮や楽しさみたいなものは体験しないとなかなか分からないものだったりします。

でも「体験しないと分からないよ」といくら言っても体験する前の人はその価値が分からないんですから、不特定多数にチラシを配っている状況と大して変わらない環境にあります。

ではどうするか。もうそのライブを疑似体験するものを用意するしか方法がありません。例えば何らかの形でライブを再現するか、そのパフォーマンスの価値を反映した映像を用意したり、もっとリアリティを込めて体験できる方法があればそれでもいいでしょう。

ただあくまで代替品は代替品でしかないのも事実です。疑似体験は本当の体験には程遠いものになるでしょう。それでもそれをどのように作るのか、疑似体験は疑似体験で丁寧に企画し、どのように感じられるかを作り込むことが、「生もの」のプロモーションには必要な気がしています。

「写真を先に撮って欲しい」人の気持ち 

弊社では写真や映像製作のお仕事もさせて頂いております。そんななか、最近はサイト制作やパンフレットのご相談など、写真を使用するPR用制作物のご相談も増えています。

パンフレットやWebサイトはそのクライアントの方のやりたいことや思いが表現される物なので、クライアントのご意向やお気持ちをおうかがいしてどのようなものにしたいかを考えていきます。

その中で結構多いのが「写真を見てイメージを決めたい」、「写真が大事だから吉田さんまず撮ってよ」というお話です。これは弊社の、ひいては私の写真を気に入って頂いている証で、とても嬉しい名誉なことです。しかし、クライアントのお気持ちにあるのは写真を気に入ってくださるそのお気持ちだけではないようです。

そんな時のクライアントは「写真を見ながらサイトやパンフレットの雰囲気を決めよう…」とも思ってらっしゃるケースが多いようです。つまり、自分達の会社、仕事、製品のどこをどのように見せたらいいのかわからない、どのようにまとめるかアイデアがわかないなど、迷っている状況だということです。

企業のPRのためのサイトやパンフレットなどでは会社や製品、サービスの特徴だったり、魅力的な部分など、自社が見せたいと思う部分を見せがちです。ただ実はそれだけでは不足で、お客様が見たい、欲しいと思っている部分も適切に表現する必要があります。更にはお客様が想像していないけど、知るとお客様のメリットになったり魅力的に感じたりする部分が見せられたら最高です。

サイトなどで見せるべきものが定まらないということは、二つの要因があります。

  1. 自分達の製品やサービスで何を見せたいかわからない
  2. お客様が見たいと思っている部分がわからない

商売している人が自分の売り物を適切に理解することは大事なことですが、一方でそれが難しいことであるのも事実です。実際、「これは売れるぞ!」と思った商品が売れなかったり、「この商品の売りはここだ!」と思ってても、実際に買う人は違う理由で購入を決めていた、お客様が当初は想像していない使い方をしていた、などという経験は多くの方がしていると思います。これはそのまま「自分がいいと思っている部分」と「お客様がいいと思っている部分」が乖離していることを示します。

大手企業でも「宣伝部」などコンテンツ制作を社内で行うことがなくなった現在、カメラマンはクライアントにとって部外者です。かつ、カメラマンは視覚を主に使って、その企業や製品、サービスに含まれる表現したいストーリーを形にします。つまり部外者の視点を持って観察しています。更に出来上がった写真にはピントが合った所とぼやけたところができ、被写体の何を表現しようとしたか一目瞭然です。一方で、その前段階(お仕事の依頼を受けた段階)では、クライアントが考えているイメージをカメラマンは詳細に聞くことができます。

これによって、カメラマンの中では社内の視点(クライアントがいいと思っている部分)と社外の視点(お客様がいいと思っている部分)が同時に存在することになります。これはマーケティングのための調査をしているのにも似ています。この内容を元に、写真はもちろんパンフレットやWebサイトなどの制作物の方針も詰めていきます。

つまり、写真撮影を最初に依頼される方が考える「写真を通して自分たちの価値を再確認しよう」というアプローチは、写真撮影がPR用の制作物を作るプロジェクトの中でプロトタイピングとマーケティングの位置にあることと同じ意味を持ちます。

プロトタイピングとは「まずやってみて、その製品が作れるのか、作る意味があるのか調べてみる」ことを意味します。「やってみた結果」を見て、「結果を使った調査」をして、プロダクトに対する要求(要件定義)や仕様を考え、改善したり、複数の職種・業種にまたがるプロジェクトチームの認識を合わせて以後のコミュニケーションを円滑にしたりするためのプロセスです。

部外者をプロジェクトに投入するのは多くの場合で困難を伴います。なぜなら、部外者はそのプロジェクトの意味も、発案した人物や企業に関する情報も知りません。事前情報がないためプロジェクトメンバーと方向性が一致せず、受け入れた側が突拍子もないと感じる意見ばかりが出て「結局何の役にも立たなかった」と感じて終わってしまうことすらあり得ます。

では何故カメラマンならいいのかというと、上でも書いたように、依頼を受けた段階でクライアントは何を求めているか確認できるタイミングがあるからです。カメラマンに写真を発注すると必ず「どんな写真が欲しいですか?」と問われます。この問いのみで明確なイメージを伝えられるクライアントはほぼいませんので、追加でご質問をしていくことになります。

  • その写真はどのような使い方をするか
  • その使い方の目的は何か
  • どんなイメージがいいか
  • 被写体は実際にどのようなものでどのような使われ方をするか
  • 写真を見た結果、お客様はどのような気持ちになっていてほしいか
  • 被写体を通じて、お客様にどのように感じてほしいか

写真を使う目的が何か、被写体が何かにもよりますが、打合せの中で撮るために必要な情報を聞きだしていきます。弊社ではこのタイミングで、製造業でもよくつかわれる「なぜなぜ分析」と同じアプローチをします。被写体と作りたい制作物のお話を聞きながら、何を見せたいのか、クライアントはその被写体になるものをどのように育てていきたいのかを丁寧に聞き出します。

一方で部外者は時と場合によればユーザになる立場です。カメラマンが入ることで、カメラマン自身の中に「この製品ってこういう風に使えそうだな」とか「この被写体はここがすごく魅力的だな」とかいう感情が生まれます。そこで弊社では必ずクライアントに「最初に拝見した時、こういうところがすごくいいなぁと思いました」などと実際に感じたことをお伝えするようにしています。

そうするとクライアントの反応が悪いことはまずありません。こちらが感じたこととクライアントの思いが一致して「そうでしょう!」となるか、こちらの印象に対して意外な感想を持ち「そうお考えになりましたか」となるケースが多いです。前者の場合であれば、制作物のイメージを作るまで一直線に進みます。後者の場合ですとクライアントのイメージと弊社の印象のすり合わせを行い、方針を決めることになります。

その時、弊社は相手のいいところ、魅力的なところが明確にイメージできていることが求められます。まだ世に出ていないものの場合、マーケティングとしてはこの段階ではサンプル数は1なのでデータとして信用に足るものではないのは当然です。だからこそ、自分が何を感じたのか、その印象はなぜ生まれたと考えられるかを丁寧にご説明する必要があるのです。その結果にクライアントの視点とお客様の視点が交差するポイントが生まれるのです。

この様な理由で、写真はPR用プロダクトのプロトタイピングとして有効な一手法になり得ます。