品質を上げるために、形容詞と副詞を排除する

ミスをした時やアウトプットが想定よりも低かった場合、「ちゃんとしなさい」とか「きちんとしなさい」とか言われた経験がある人はたくさんいると思います。子供のころテストの点数が低かった時、「ちゃんと勉強してないからだ」と親に叱られたり、大人になってからご自身の子供が部屋を片付けない時に、「きちんと片付けなさい」と注意したり。

ではなにができてたら「ちゃんと」しているのでしょうか。どうなっていたら「きちんと」したと言えるのでしょうか。テストであれば100点に近ければ近いほど「ちゃんと勉強した」と評価されやすくなりそうですね。部屋の片付けであれば余計なものが床や机に出ていなければ「片付いている」と判断されるかもしれません。

ご自身が叱られた時、また誰かを叱った時、この「ちゃんと」や「きちんと」の中身を定義して叱ったことがある方はいらっしゃいますか?仕事の時はこれを定義しないとアウトプットに悪い影響を与える可能性があります。

・バラつきは言葉から生まれる

品質は製品開発と製造から得られるアウトプットです。アウトプットは製造された品物であったり測定されたデータです。それらは工程中の作業で作られ、工程中の作業は作業手順書に従って行われます。その作業手順書は製品の設計書から作られますから、帳票類の表現がそのまま落とし込まれます。

品質を安定させるためには帳票類に記載される文言のブレをなくす必要があります。そのために、まず最初に形容詞や副詞を排除し道具と方法の指示(名詞と動詞)と数字もしくは画像などによる設定値や出力値の明示を行います。

それぞれの帳票を作る時もそうですが、前工程で作成された帳票を参照して次の帳票を作る際にも解釈が人によってブレそうな部分は前工程の担当者に確認した上で書き換えます。

・曖昧さやわからないことは形容詞や副詞の使われ方から判断する

他の業務を担当する人が話す内容で曖昧なことやわからないこと、また外部に業務の一部を委託する上で不明点を明確にしたかったり、事前の確認をしたい時もあると思います。ではそのような時も含めて、会話をしている中で曖昧な所、わからない所があるかどうかを判断するにはどのようにしたらいいでしょうか。

これは筆者がよくやる方法なのですが、相手の言葉の中で形容詞や副詞を使って表現されている部分について、確認するようにしています。例えば「ちゃんとやります」と言われた場合、その「ちゃんと」というのはどういう状態のことを指すのかを確認します。「何がどの程度にどのような状態になっているのですか」とストレートに聞いてしまいます。

聞き方としてはちょっときついように聞こえてしまうかもしれません。ただここに至るまでには、その周辺の業務や作業の状況整理(仕様書や図面、作業手順書など帳票類の版管理の確認、整理や内容確認など)、残っている記録の確認などをし終わっていることがほとんどです。

その上でわからない部分をお聞きすることになるので、かなり細かいポイントにまで絞り込まれていることが多いです。そうであれば事細かに聞くような聞き方でも必ずしも相手はきつめには感じず、一緒に曖昧な点を明確にしようというという姿勢になって頂けることもしばしばです。

・「○○性」という言葉を疑う

「○○性」という接尾辞があります。「○○」という名詞に「性」という漢字一文字を付けることで「○○という性質を持つ」という意味になります。形容詞や副詞を書き換える時には「○○性」という言葉も一緒に書き換えます。

【例1:可能性】
例えばある装置の仕様書に「出力がXとなる可能性がある」という表現があるとします。「出力がXとなる可能性がある」ということは「出力がXとならない可能性もある」ということですよね。つまり出力がXとなる条件と出力がXとならない条件があると言っているわけです。ということは大きく以下の3パターンの条件と出力の組み合わせが存在します。

  1. 出力が確実にXになる条件
  2. 出力がもしかしたらXになる条件
  3. 出力が確実にXにならない条件

出力がXにならないといけないならば、1の条件以外を選択できないように動作制限を掛ける必要があります。XにならなくてもいいならX以外の出力値が得られる条件とその時の出力値を示します(もしかしたらこの時の条件と出力値の組み合わせはものすごく種類が多いかもしれません)。

仕様書の段階ではこのすべての条件か、出力値をXにするための動作制限が明示されている必要があります。動作制限が入るのであれば制限のトリガーになる条件も明示されていないといけないのですが…

【例2:耐熱性】
今度は性能の様に読み取れる「耐熱性」で考えてみます。

例えば容器として販売しようとしている製品の取扱説明書に耐熱性に関する記載をするとします。その時「この製品には耐熱性があります」と書くより、「この製品は150℃まで対応します」と書かれていれば通常生活で使用する上では沸騰させたお湯までは対応できるということが分かります。

さて、それだけで大丈夫でしょうか。150℃の温度に達する熱量が製品に均一にかかるなら大丈夫だけど、局所的な温度上昇がある場合は製品が破損するとしましょう。容器として販売する予定の製品ですので、以下の使われ方が想定できます。

  • 沸騰した100℃の熱湯を入れる
  • 水を入れて電子レンジで加熱する
  • 水を入れて直火で加熱する
  • 200℃に加熱された油を入れる

1つ目と2つ目は製品に均一に熱がかかると思われるので、破損はしないでしょう。しかし3つ目に関しては局所的な加熱ですし、4つ目については耐熱温度を超えています。つまり後半2つは使用方法として不適切ということになります。

実際に容器として販売されている製品の記載を読むと「直火にかけないでください」などと書いてある場合があります。おそらくその製品の仕様書にはこの様な指摘があるのでしょう。

「曖昧なことをしない」ようにしようにも、何が曖昧かわからないと表現が変えられません。曖昧さは閲覧者の誤解や困惑につながります。

これは曖昧さを検出して排除するための一つの方法ですので、念頭において帳票類を眺めると、その帳票の閲覧者が困る箇所が検出しやすくなるかもしれません。

品質とは、制御されるべきもの

過去3回にわたって「品質とは」という記事を書き続けました。

品質とは定義されるべきもの
品質とは設計されるべきもの
品質とは管理されるべきもの

品質とは、つまるところ制御されるべきものと言えます。その制御の主体とはその品質を持つ製品やサービスを作っている企業、組織です。企業や組織は、企画した製品やサービスの品質を定義して、それを実現するのに必要な知識や技術、材料を集め社会に提供できる形にします。

「そんなことわかってるよ。うちはちゃんといい品質に維持できてるよ」と思われた方、ちょっと待ってください。「いい」とはどういう意味でしょうか。

・品質はよければいいわけじゃない

よければいいわけじゃないと書いたもののよくするのは実際大変なのでなかなかそこまで行けないんですが…

少なくとも顧客企業から部品の製造を頼まれ、何らかの部品の加工と製造のみを担当するのであれば、顧客の要求を実現することができればそれは「いい」品質と言えます。実際に顧客の要求を実現するのも大変なことがたくさんあると思いますし、その状態を維持するのも簡単なことではないと思います。

しかし、自社で製品やサービスを企画しそれを社会に対してリリースする場合にはちょっと事情が違ってきます。

品質をよくするために何をすればいいでしょうか?
材料をよくしますか?そうすると価格が高くなりますよね。
加工を丁寧にしますか?そうすれば時間がかかります。すると一日の稼働時間を同じにするのであれば一日に作れる個数が減ります。稼働時間を伸ばすのであれば加工の前後の段取りのために作業者を付けなければいけないかもしれません。すると人件費が上がります。

つまり、品質を変えることによってコストと納期が変わります。

・自社におけるQCDの相互作用を理解する

もうお分かりいただけたと思いますが、品質(Quality)というのはQCDの他の二つのパラメータであるコスト(Cost)と納期(Delivery)と相互に影響しあう関係にあります。

コストを削減し、納期を早めたければ品質も抑えることを検討せざるを得ませんし、納期に余裕があれば加工の手間もかけられるかもしれません。むしろ品質を上げることが最優先事項で、多少納期がかかったり販売価格が上がったりすることも許容できるケースもあるかもしれません。


むしろ高級ブランドなどは価格が高くても、納品に時間がかかっても、場合によっては生産数量が少なくてもそのブランドとその商品に見合った品質になっていれば顧客が待ってくれるビジネスというのも存在します。この場合にはむしろ品質は下げてはいけないパラメータになります。

では自社におけるQCDの相互作用というのはどのように見極めればいいのでしょうか。そのための情報は要件定義に落とし込まれる前の企画段階にあります。企画を作った時には以下のようなことが念頭にあるはずです。

  • その企画は誰に向けたものか
  • どのように提供されるのか
  • どのくらいの期間使えるものなのか
  • ユーザはどのように使うものなのか
  • ユーザはそれにいくらくらい払うと考えられるのか

つまり、製品やサービスとして出来上がった時、品質はこれらの項目をすべて含み、すべて合致していなければならないのです。

子供向けの商品であれば子供が使用した時に怪我なく使用できるように、高齢者向けのサービスであればユーザの対象年齢に合わせたサービス内容になっているようにしなければなりません。同じ商品で大人も子供も使う場合が考えられるならば、使用条件がどちらかに偏っていてはいけません。

そして開発され、生産が決まった商品は販売期間中ずっとその企画を実現するために品質が維持された状態で出荷されなければいけません。

しかし「出荷検査で不良がなくても良品率100%にはならない」でも書いている通り、工程に投入される部品の品質は変動するものです。変動するからこそ管理が必要なのですが、品質はその管理によって企画当初に想定された状態に制御されるということになります。

つまり、品質というのは組織によって「制御(Control)」されなければいけないのです。

・“ Quality Control ”を「品質管理」と訳す不思議

どういうわけか日本ではQCというと品質管理と訳されます。でもここまでの話の通り、品質とは「定義」され「設計」され「管理」されることによって「制御される」ものなのです。

ちゃんと品質管理している、いい状態を維持しているということは素晴らしいことですが、その内容はこの順番に従って制御されている結果であることが本来は求められています。

そして組織は品質が制御された結果目標としていた企画を実現するものとなっていることを、品質管理し続けることを通して社会に対して「保証」します。

ISO9001を取得している企業では、組織は品質マネジメントシステム(QMS)を構築し運用することを求められています。システムというのは入力の結果何らかの出力を得るもののことを言います。企業というのは企画をインプットすることで商品やサービスを出力するシステムですと言えます。

つまりこの「品質マネジメントシステムを運用する」ということが、「品質に対して管理値(制御対象となる値)を用いたフィードバック制御を行う」ということを意味するのです。

もしこの話を読んで意外な感じがした方は、ぜひ今一度「自社で行っている品質保証や品質管理は品質を制御できているか?」と立ち止まって考えてみてください。

もしかしたら今まで想像もしてなかったことができる余地があるかもしれません。

品質とは設計されるべきもの

製品開発において、定義された品質は今度製品設計に落とし込まれます。要件定義が済んだ状態であれば仕様設計に、仕様設計が済んでいれば詳細設計に移行します。この時、要件定義の結果は要件定義書にされ、仕様設計時の参照書類になります。仕様設計の結果は仕様書にされ、詳細設計時の参照書類になります。

製品や機能の仕様設計や詳細設計が進むと製品に搭載する実際にどんな機能にするか、その機能の性能を適切に発揮するためにどのような構造にするか、技術的にどのようになっていればいいかが整理されてくるはずです。もし整理されていないならその仕様と設計はやり直しです。

・設計プロセスを保有するということ

「これは品質ではなく設計の話では?」と思われる方もいるかもしれません。確かに作業としては設計者の担当作業です。

しかし品質保証担当者はその設計部門内でプロセスがどのように定義されているかを知っておかなければいけません。またその結果としての仕様書や設計書の(当然その前段階の要件定義書も含めて)品質保証担当者は必要な項目が決定されているかを確認しなければなりません。

特に「対象の機能」が「すべての設定条件と設定値」に対して「動作」が決められ期待される「出力値」が定義されているかを確認しなければいけません。この中で一つでも決められていないものがあったり、他の条件の時の被っていたりする場合には設計上不備がないか、製品の動作上問題にならないか確認しなければなりません。

また各条件への分岐点がすべて洗い出せているのかを確認しなければなりません。つまり「書かれている条件だけで大丈夫だ」と無条件に考えてはいけないのです。「もしこうなった場合はどうなるのか」とか「この分岐点にはAとBという条件設定がされているがCは本当にあり得ないのか。Cのような状態が設定されてしまうことは本当にないのか」という問いを、書類に書かれていなくても自分で立て、設計者に問い合わせることが必要です。

「そんなことは設計者がやるべきだ」と思われるかもしれませんが違います。その問いを立てないまま形になった製品はその後工程で誰にも気づかれなければ不具合を内在したまま市場にリリースされます。その結果、その製品はエンドユーザのもとで品質事故を起こします。これはプロセスの適切な運用と管理、製品に対する業務遂行状況と管理が行われていることを確認しなければいけない品質保証担当者にも責任があります。

何より、自分が担当している仕事であっても作業をしている本人が見落としていて、周囲にいる人が気が付いて指摘するなどという場面はいろいろな局面であります。製品の設計作業も同じで、設計者がやったことに対して周囲の目も含めて確認するという行為が意味を持つことは多いので、必ず他職場の関係者を交えたレビューは行うようにします。

その設計書を元に製品設計が進みますが、ソフトウェアを動かすためのプログラムであればソースコードとして文字として書かれるでしょうし、製品に内蔵される機構であれば各条件分岐が物理的に存在します。それらが適切に設計されるプロセスを持っていることが必要になります。

・常に戻れる状態にしておく

どんなに慎重に確認したとしても何らかの見落としや思い込みが組織やチーム全体にある可能性は否定できません。ですので、設計が完了していても後工程で不備が発覚した時には、必ず要件定義書や仕様書、設計書に戻れるようにしておく必要があります。

とはいってもある段階においてはもう戻ることができなくなっている要素が出てくる可能性があります。ですので、重点的に確認するべき機能や要素の洗い出しもしておき、「開発期間のいつまでならこの箇所の修正は可能」という風に修正の締め切り日を設定します。これをしないとある機能aができていることを条件に稼働する機能bが存在した場合、最初の機能aの遅れが2番目の機能bの完成に大きく影響します。

もしソフトウェアであれば関連する箇所を明確にして機能aの遅延の影響範囲を小さくしたりするなどの工夫もできるかもしれません。ハードウェアの場合は構造的に積層される場合は影響が避けづらいので上記のように開発時期を分けるなどして対応します。

開発計画も戻ることを前提に入れて作成します。特に戻ることになった場合の作業内容や対象要素によりある程度作業工数を見積もっておきます。これは開発時に見積もりを作成しているはずなので、その該当箇所を参考にするといいと思います。また実際に手戻りが発生した場合は、状況に合わせて見積もりを元にしながら調整します。

品質保証担当者は修正箇所に対して修正作業が適切に完了したか検証する必要があります。検証作業を品質保証担当者が実施してもいいですし、設計者による検証結果を確認することで代替してもいいでしょう。これは修正箇所の重要度と修正作業の重さによります。

ここで注意するべきは修正が品質に与える影響を明確にするということです。直さなければいけないという事態が発生した場合、「直せばいいんだろう」とか「ほらこれでいいだろ?」とかいう形でただ修正しただけでは品質上の影響範囲が拡大する可能性があります。それを防ぐために品質保証担当者は修正作業の内容を把握しておく必要があります。そしてその作業方針の影響範囲が大きい場合は、検証範囲を調整します。

これらの段取りは開発を進めながら作るものではなく、先にある程度想定しておくべきです。製品も作るし開発プロセスも作るのでは抜けや漏れの発生は必ずあります。開発プロセスの整備は製品開発で可能な限り抜け漏れをなくしQCDをスムーズに作り込むためのものですので、事前にあるべきです。

また、品質面においてこれらの内容で不備があれば自社内であっても工程監査を実施すべきです。それは品質保証担当者が実施するのでもいいですが、製品開発を常に行っているようになったら内部監査部門を作って、社内の業務状況を常に管理しておくといいと思います。これは生産工程での日常管理と同じように業務状況を把握するためのものだからです。

この内部監査部門では開発部門の業務状況だけではなく、製品の環境対応の管理状況やISO9001などの認証を受けている企業の場合はその認証を満たしていることを管理することも業務に入ります。開発プロセスの業務状況の管理はISO9001の認証を受けている場合、ISO9001対応のみ帳票類の内容などの確認が不足するなど自社の業務に不足することも考えられるので注意してください。ISO9001に加えて自社の監査プランが構築できることが理想です。そしてこれらの評価は経営者が業務状況を管理するのに使用します。