未知なる領域へ臨むときに考える品質

2019年10月15~18日の会期で、千葉県幕張メッセにおいてCEATEC2019が開催されていました。少し遅くなりましたが、その中から今後の製造業やものづくりと、品質についての未来を考えさせられる話題について、QA+として興味深い話題について、何回かに渡ってご紹介をしたいと思います。

・日本初の月面探査実現に向けて

株式会社ダイモンは自社開発のローバーである“YAOKI”で日本初の月面探査を目指しています。CEATEC2019では、AVATAR Xの共創ブース内にて、YAOKIの走行体験を実施していました。2021年に米・Astorobic社のランダー(着陸船)に搭載され月面探査を予定しています。

ダイモン社のローバー、YAOKI。

YAOKIは小型軽量で大径車輪が特徴的なロボットで、コストが高くサイズに制限のある月輸送に対応したサイズと重量を実現し、月面での活動を考慮した走破性と強度を持たせた形状と構造になっています。砂地を再現した体験ブースでもスタックすることもなく起伏を越えることが可能でした。

ブースではリモコン操作も体験でき、実際の月面探査の際には地球上から無線制御で操作するとのことです。

月面での行動と宇宙空間の移動という通常想定される環境とは全く異なる環境条件での使用が前提となっている機械ですので、現時点で想定できる事項を可能な限り反映した設計になっているという印象です。

砂地での走破性と操作性を体験できるブース。実際に会場で参加者が操作することができた。壁面のモニターには会場にいるYAOKIから送信された映像が映し出されていた。

2021年に最初の1台を月面に送り込む予定になっているYAOKIは、ダイモン社代表の中島氏が一人で企画・開発・設計を行い3Dプリンターによる試作・製造を行っています。3Dプリンターの活用で設計変更の反映の時間短縮が可能となっており、また現時点での完成品についても設計強度を満足した個体を出展しています。

加工方法が開発フェーズとその費用、量産台数とコストとバランスするべきQCDに準じて検討されており、柔軟な開発体制や予算の見通しに影響していると感じられます。

株式会社ダイモンの中島代表。もともとは自動車の駆動系の技術者で、独立しダイモン社を創業している。

YAOKIによる月面探査事業については2019年10月29日に事業説明会が行われており、そちらも取材済みですので追ってお知らせしたいと思います。

新製品の販売環境を準備中です

2019年秋発売としている製品の販売と展示会出展や協賛のため、色々な作業をしております。製品の形態や梱包などはほぼ固まり、2019/10/23~10/25の期間で出展していたLink to Creativeでも2台ほど販売しました。

今行っている作業は以下のようなものです。

・販売サイト作り
・自社サイト内への商品ページ作り
・取扱説明書の更新
・サイト用写真の撮影

改めて自社での新製品のための画像やコンテンツを考えていると、本来誰に向けている商品か、どのようなチャネルで顧客にリーチするつもりかなど、普段お客様に問うている内容が自分に向かって来ていて考えさせられます。

ちなみに販売サイトの自社サイトの構成は、基本的に自社サイトに情報を掲載し、販売サイトにリンクする形にします。そしてお客様はそのどちらに先にアクセスしても情報を得られる形にします。製品ページと購入ページ双方に性能や仕様などを記載するか、片方にしてそのどちらかに記載してリンクするかなどは追って考えます。

販売サイトに使用するサービスは当面はSTORES.jpにしようと思います。国内でスト同様のサービスにBASEがありますが、1万円以上は月末の自動振り込みに対応していたり、英語記載などにも対応しているなど、オペレーションと今後の展開で比較的長期間使えそうに見えたのでSTORES.jpにしました。この辺りは登録時に利用規約やサービス内容をよく確認して選ぶといいと思います。またゆくゆくはAmazonでの小口販売なども利用しようと思っています。

今後販売を進めていく中で一番検討するべきは海外展開だと考えています。国内市場は縮小の一途なので、もはや国内を相手にビジネスできる期間はそう長くはないと考えていますので。

その場合はアリババなどのアジア圏に特化したサービスを利用するか、もしくはPaypaleBayを組み合わせるか、それぞれに出店するか、いずれかの方法が考えられます。これも追って調査と検討を進めるつもりです。

恐らく全世界規模だとeBayを優先した方がいいでしょう。そしてそれらで購入される場合は個人輸入の範疇になるので、各国の規制などのルールの影響を受けづらいというのもありますので、まずはそこで経験を貯めたいと思います。


それらを進めた結果、取扱説明書の内容充実がかなり重要なポイントになるかと思います。異なる文化を持つ人が同じ製品を使うとき、使い方の理解などに差が出る可能性があるので、「こんなことは言わなくてもわかるだろう」という前提に立つとかなり危険です。「日本人ならこれくらい当たり前だ」ということは、日本人以外は当たり前ではありません。そして日本人は現時点で世界の1/70しかいません。「当たり前」は全く当たり前ではなく、かなりのレアケースと捉えるべきです。

どこかのタイミングでテクニカルライティングの領域ができる人にご協力頂く事になります。そしてありがたいことにもうすでにご協力頂ける方が弊社(株式会社コルプ)には身近にいますので、まずはその方にご相談する予定でいます。


これらをすべてわかりやすく網羅するためにはイメージで見せることが重要です。そのための画像の意味や見せ方を、やはり今同時進行で検討しています。もともとビジネスとして顧客が使用する写真や映像を撮影してきましたが、自分が進めている事業の写真ともなると、何を撮ればいいかなど不鮮明な部分も多くあります。これはもう言い訳する余地もなく、自分が進めている事業に対する自分自身のイメージ不足ということですね。改めて顧客とコミュニケーションを取る時の勉強になっています。


これらの他にもアフターサービスの設定、顧客管理、返品の処理等考えることはまだまだあります。

まだこちらでは正確に商品の情報もお見せしていませんし、今後の販売のステータスと合わせて記事にしていきたいと思います。お待ちください。

北陸新幹線の直通運転再開の公式発表からJRの危機感を推測する

先週の話になりますが、2019年10月18日に北陸新幹線の被害状況についての公式情報と全線復旧目途と運転本数についてのリリースがありました。

まず被害状況から見てみましょう。

台風19号の影響による千曲川の氾濫等の影響で、北陸新幹線では長野~飯山間の線路、長野新幹線車両センター構内および新幹線車両が冠水するなど設備等に甚大な被害を受けました。

台風19号による北陸新幹線の設備等の主な被害状況について , 2019年10月18日東日本旅客鉄道株式会社 (引用:2019年10月21日)

別紙にある通り、大きく下記3点に分けられています。

(1)本線の被害
(2)長野車両センターの被害
(3)車両の被害

本線は信号用電源設備の交換が必要そうな様子が画像からわかります。車両センターも既報の通り営業車両のメンテナンスができるような状態ではないことがわかります。車両もやはり室内まで冠水し、おそらく構体内部まで浸水していると思われ、安心して運用できる状態ではないのではないかと推測されます。これは主に過去のQA+記事や他の予測情報でも推測されていた内容です。

注目するべきなのは同日発表された直通運転再開に関する情報です。

台風19号の影響 により、 北陸新幹線の一部区間(長野~上越妙高間)で運転を見合わせておりますが、復旧作業および安全確保の見通しが立ったことから、10月25日より北陸新幹線(東京~金沢間)の直通運転を再開する見込みです。

北陸新幹線(東京~金沢間)の直通運転再開見込みについて , 2019年10月18日東日本旅客鉄道株式会社 (引用:2019年10月21日)

過去のリリースで復旧目途は1~2週間、信号関係以外の復旧が必要な場合には更に期間を要するとの発表がありました。

現時点で信号関係の電源装置に甚大な被害が確認されており、この電源装置の復旧には概ね1~2週間程度かかる見込みです。ただし、信号制御装置等このほかの設備に不具合が認められた場合には、設備の復旧まで更に時間を要することになります。

北陸新幹線及び中央本線(高尾~大月間)の現況と今後の見通しについて , 2019年10月15日東日本旅客鉄道株式会社 (引用:2019年10月21日)

これは当初の調査以上の不具合はなかったということでしょう。まさに当初の見積もり通りの復旧目途となります。更に同じリリースの中で東京~金沢間の直通運転についても言及されています。

長野新幹線車両センターにおける新幹線車両の浸水被害により、限られた車両数での運用となり ます。 北陸新幹線の列車本数 は約8割となりますが、東京~金沢間の直通列車については約9 割の運転本数を確保いたします。

北陸新幹線(東京~金沢間)の直通運転再開見込みについて , 2019年10月18日東日本旅客鉄道株式会社 (引用:2019年10月21日)

上越新幹線用のE7系を優先して投入しても8割程度の本数となるということですが、興味深いのは東京~金沢間の直通列車については9割を確保するという点です。

北陸新幹線には富山~金沢間の区間運転列車である「つるぎ」があります。おそらくこの「つるぎ」の運用を減らして、直通列車の「かがやき」「はくたか」として富山以遠へも足を伸ばす形で走らせるものと思われます。その部分が「列車全体の本数は8割だが直通列車に関しては9割」という部分と思われます。

災害対応から復旧する時には暫定的に少ない輸送量から運用を再開し、設備状態を万全の体制まで復旧させるのが最善ではありますが、「つるぎ」は関西方面から北陸方面(富山)へのアクセス改善のために存在する列車です。「つるぎ」の本数が削減されるということは、多少ではあっても大阪~富山間のアクセスを悪化させる施策です。

ではなぜそこまでして直通列車を優先して走らせるのでしょうか。そもそも高速鉄道自体が長距離大量輸送のために存在するので、直通列車を優先するというのが当たり前ではあります。でも今回の判断が取られた背景には理由が2点あると考えます。

[1]航空路線対策

今回の北陸新幹線の被災に対応して、国内航空会社2社から北陸~東京便の増便が行われていました。10月18~19日の2日間にわたってANAは東京(羽田)~富山線で、JALは東京(羽田)~小松線で増便と機材の大型化を実施しています。

台風19号の影響で北陸新幹線の一部区間が不通となり、東京と北陸地方の間での移動に支障が出ていることから、ANA(全日本空輸)とJAL(日本航空)では臨時便を設定するなどしている。

ANAでは、羽田空港~富山空港間で臨時便を運航。JALでは、羽田空港~小松空港間で臨時便を運航するほか、機材の大型化も実施している。

ANAとJAL、北陸新幹線の一部不通に伴い臨時便設定 , トラベルWatch, 2019年10月17日 11:59 (引用:2019年10月21日)

以下の通り、機材変更(大型化)ならびに臨時便の設定を実施いたしますのでご案内をさせていただきます。

東京(羽田)-小松線、機材変更(大型化)ならびに臨時便設定のお知らせ , 2019年10月18日 日本航空 ,(引用:2019年10月21日)

増便・臨時便のお知らせ

ANA, (引用:2019年10月21日)

新幹線は高速での長距離大量輸送が使命で、航空路線が競合になることが多いものですが、おそらく今回も被災時の対応ではあるものの、JRとしてはそのまま航空路線の利用が定着することは避けたいと考えると思います。そのためには一刻も早く全線での運転を再開するべきというのがJRの判断としてあったと考えられます。

[2]東京からの直通乗客の多さ

「被災した北陸新幹線の営業面への影響を考える」でも引用したデータを見るとわかりますが、北陸新幹線の高崎~上越妙高間(JR東日本区間:2018年度:37,056人/日)と上越妙高~金沢間(JR西日本区間:2018年度:23,001人/日)の平均通過人員ではJR東日本区間に対してJR西日本区間は約60%程度になります。

そのデータで北陸本線の平均通過人員を見ると、米原~金沢間で2018年度には25,825人だったことが分かります(データで見るJR西日本: 区間別平均通過人員および旅客運輸収入(2018年度) )。つまり、関西方面から北陸方面への輸送量を考えても東京直通列車を優先した方がよいということになったと思われます。

北陸新幹線の10月中の直通運転再開により、新幹線の便利さと存在感が再認識されたといってもいいのではないかと感じます。これから年末に向けた首都圏からの輸送力の完全復旧に向けて、おそらく製作中の上越用E7系の納入前倒しなども検討されることと思います。

商品を量産して販売したい時につまずくあれこれ

さて、実際に企画を思いついて試作も実施してみて「良くできたからこれを販売しよう!」と思った時に気が付くことがあると思います。特にそれらは一人(自社のみ)でやっていて、しかも今まで商品を販売したことがないとなると特にいざ品物を発送できるようにしようと思った時に気が付く問題だったりします。

そんな問題をいくつかここにリストアップしておきます。「地道に手売りしていくからそんなこと気にしないよ」という方もいらっしゃるかもしれませんが、今はネットでも販売しやすくなっているので、もしかしたらそういうサービスも利用しようとすると何らかの形で影響するかもしれませんので、気に留めておいて損はないかと思います。

  1. 梱包
  2. 取扱説明書
  3. 保証期間と補償範囲
  4. アフターサービス
  5. 環境規制対応
  6. JANコード

1.梱包

何か袋に入れておけばいいだろと思うかもしれませんが、商品がホコリや傷が付きやすかったりするものであれば何らかの保護が必要ですよね。特に静電気を嫌う電子機器などはエアパッキン(プチプチ)も帯電防止用のものを使う必要があります。

手売りなら袋に入れてお渡しすればいいだけかもしれませんが、もしWeb販売などの通信販売を検討されているならば手渡しというわけにいかなくなってくると思います。その場合一般の物流ルートに乗せることになりますが、輸送中の衝撃で壊れないように梱包する必要があります。

箱を用意するにしても中が詰まってないと箱潰れの要因になりますし、上に他の物を積まないように依頼するにしても、自分が同じ商品を複数発送してしまうとそういうわけにいかなくなります。

商品の破損についてはお客様が購入して梱包箱を開けて使い始めるまでは販売者の責任です。お客様が最初に箱を開けた時(=製造業で言えば受入検査に相当)に不備がないようにしましょう。

かといって厳重にすると梱包そのものにかなり高額なコストがかかります。梱包も原価に含める必要がある資材と捉えて販売方法と輸送の計画を立てましょう。

2.取扱説明書

案外おろそかにしがちなのが取説です。「使い方なんて見ればわかるだろ」とは絶対に言ってはいけません。また取説には使い方だけではなく、やってはいけない使い方、その結果起こる可能性のある傷害レベルも記載する必要があります。

これも手売り手渡しの場合は問題になりにくいですが、通信販売で遠隔地に発送する場合はユーザがどんな人か、またどんな使い方をするかが全く想定できません。ですので取扱説明書である程度の指示を出しておく必要があります。

これも全く何も書面での指示がないと何らかの事故が発生した場合に生産者が製造物責任を問われることになりますので注意が必要です。

特に乳幼児が触れるた場合の安全性についても言及が必要です。また実際に触れる可能性を0にすることができないものであれば安全性の確認もしておいた方がいいでしょう。

3.保証期間と補償範囲

通常1年の保証期間を付けることが多いと思います。またその保証期間内であっても生産者の責任範囲の不具合しか補償範囲になりません。買う側でいる時にはそのことを認識しているつもりでも、自分の商品を買った人がすべてその理解でいるとは限りませんので、補償範囲を明示しましょう。

例えば落下による破損などは使用者の不注意で防げる問題なので、通常であれば使用者の責任範囲になると思います。

使用者の環境で起こりそうな事象とその補償のしかたについて決めておくことは自社のビジネスを守る上で必要なことなので、事業を継続する観点からも必ず実施しましょう。

4.アフターサービス

3の話と関連しますが、何らかの故障が起こった場合にどのように対応するかを決めておきましょう。故障した品物を送ってもらう必要があるのか、送ってもらってもどの程度の壊れ方なら修理するのか、もしくはそのまま新品と交換することになるのかなどの基準を作っておきます。

故障に関する問い合わせやクレーム受付窓口も決めて取扱説明書などに記載します。他の商品でも「お客様センター」などの問い合わせ窓口の記載があると思います。

5.環境規制対応

今環境負荷が低くなるように商品を作ることが求められています。欧州のRoHS指令やREACH規則はよく知られていると思いますが、それ以外の各国で規制がかけられていますので、販売対象地域の規制を確認しましょう。

特にREACH規則などは今後追加される予定の物質に対しても徐々に対応方法の検討を各企業に求めます。商品を作ったら一時的に販売して終わることはあり得ませんので、今後の見通しまで含めて確認しましょう。

6.JANコード

これは筆者も知人のデザイナーに言われて気が付いたことでもあります。小売店に卸売り販売する場合はJANコードがないと商品管理ができず受け入れてもらえないことがありますので、事業者登録と商品登録をしましょう。

弊社でもこれから対応予定です。

事業者登録
https://www.dsri.jp/jan/jan_apply.html

商品登録データベース
https://www.dsri.jp/database_service/jicfsifdb/

完成品メーカはこれらの対応をする部門が存在しますが、中小規模のメーカの場合はこれらの対応部門がないことが多いので手さぐりになります。商品を市場に流通させるときには必ず必要になる要素な上、量産開始後では対応が遅いものも多くあります。漏れがあった場合は仕様設計のタイミングまでさかのぼり、設計上対応できているかも含めて確認しましょう。

これらの項目の更に細かい要素はまた別の記事でご説明したいと思います。

被災した北陸新幹線の営業面への影響を考える

2019年10月12日~13日の台風19号の被害は非常に大きいものでした。各地で亡くなられた方にご冥福をお祈り致します。また被害にあわれた方にお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。

前回は車両が水没した北陸新幹線の復旧に求められる要件について考えてみました。

JR東日本から復旧見込みについて発表があったようですので、主に北陸新幹線の部分について確認してみます。中央本線についても言及がありますので、発表資料をリンクします。

【北陸新幹線】
○長野~飯山間の線路が冠水した影響で、北陸新幹線は長野~上越妙高間で運転を見合わせております。現在、東京~長野間及び上越妙高~金沢間で特別ダイヤにて折り返し運転を行っております。


○現地付近の浸水が解消されたことから、15日より長野~飯山間の線路冠水箇所の点検を開始しました。現時点で信号関係の電源装置に甚大な被害が確認されており、この電源装置の復旧には概ね1~2週間程度かかる見込みです。ただし、信号制御装置等このほかの設備に不具合が認められた場合には、設備の復旧まで更に時間を要することになります。これらの復旧ができ次第、長野~上越妙高間は運転を再開いたします。

○長野~上越妙高間の運転再開により、北陸新幹線は全線(東京~金沢間)での運転再開となりますが、長野新幹線車両センターにて新幹線車両が浸水したことにより、使用可能な車両が通常の3分の2程度になります。このため、北陸新幹線全線(東京~金沢間)運転再開後の運転本数はこれまでの5~6割程度となる見込みです。

北陸新幹線及び中央本線(高尾~大月間)の現況と今後の見通しについて , 2019年10月15日東日本旅客鉄道株式会社 (引用:2019/10/16)

地上側設備の被災状況と合わせて車両の被災の言及がされており、やはり運用に投入可能なのは2/3程度、全線での運転再開後の本数は5~6割とのことで、実際に運転再開した後の稼働率が2/3を切るのは、前回のでも書いた運用中の定期整備による運用離脱分も含んでの予測でしょう。

営業用車両は当然定期的に点検と整備が必要なため、地上側の設備の復旧が完了するまでは整備待ちの車両は営業に投入できないことになります。

JR東日本が持つ他の設備を使用するにしても、そちらは他路線で運用中の車両も入るので、順番待ちが発生すれば、北陸新幹線用の電車が後回しになることも考えられ、北陸新幹線の営業に対する影響は0ではないでしょう。

2019年台風19号の鉄道被害と、北陸新幹線の復旧要件を考える, 2019/10/15 QA+

・北陸新幹線の営業力の減少による減収分を予測する

車両が被災した影響は運転本数の減少、すなわち旅客数源による収入減少に現れます。北陸新幹線はJR東日本が営業する高崎~上越妙高間とJR西日本が営業する上越妙高~金沢間に分かれます。

【JR東日本区間の減収分】
JR東日本は「路線別ご利用状況」として各年度ごとの一日当たりの乗客数と最新年度の旅客運輸収入についての情報が公開されています。

高崎~上越妙高間の平均通過人員(人/日)
2015年度 37,050
2016年度 35,899
2017年度 36,127
2018年度 37,056

高崎~上越妙高間の旅客運輸収入(百万円)
2018年度 66,299

JR東日本 路線別ご利用状況(2014~2018年度)より2019/10/16引用

(筆者注)2014年度からのデータで2015年からの記載になっているのは北陸新幹線長野~金沢間の開業が2015年3月14日ダイヤ改正からのためと考えられます。

高崎~上越妙高間の平均通過人員(人/日)は2015~2018年度の平均で36533人/日となります。乗車率は時間によってばらつきがあると考えられますが、輸送力の減少に合わせて一様に乗客数も減るとすると全線での営業再開からしばらくは50~60%の約18270~22000人程度となると考えられます。

また2018年度の収入は66299百万円(662億9900万円)となり、一日当たりの旅客運輸収入に均等割りで換算すると約181.6百万円(約1億8160万円)となります。2019年度も何事もなければ2018年度と同程度の収入があったと仮定して、今回の台風分の減収分を試算します。前提条件は以下です。

・JR東日本発表の全線運転再開後の運転本数がそのまま収入に影響すると仮定する
・ JR東日本発表の全線運転再開後の運転本数が 年度内は維持されると仮定する(他線区からの支援増備が不可能な車両のため、整備が早く終わる以外の補充はなさそうと考えられるため)


全線運転再開後の収入は100%ダイヤ通り運行できた時と比較して50~60%と見積もって収入は約90.8~109百万円(約9080~1億900万円)となり、緩めの見積もりとして60%で運転できたとしても一日当たりの減収額は約72.7百万円(約7270万円)程度にはなりそうです。

仮に2週間後の2019年10月30日で全線で営業再開しても2019年度はあと154日ほどありますので、一日当たり72.7百万円の減収がその全期間にわたり発生したとすると、11195.8百万円(111億9580万円)の収入減となりそうです。これは2018年度の収入の約16.9%に相当することになります。

加えて、2019年10月29日までの15日間は高崎~長野間の区間運転となり、また投入できる車両が限られることからここでの収入減も発生します。高崎~長野間の過去4年度の平均通過人員は約42537人/日で、50~60%の運転本数となると約21268~25522人/日の輸送量となりそうです。

収入に対するこの区間の割合が示されていませんので、ここでは高崎~長野間の収入に関しては計算しません。

【JR西日本区間の減収分】
JR西日本は「データで見るJR西日本: 区間別平均通過人員および旅客運輸収入(2018年度) 」として2018年度の区間別平均通過人員と旅客運輸収入を公開しています。

それによると上越妙高~金沢間の2018年度の情報は以下のようになります。

上越妙高~金沢間の平均通過人員(人/日)
2018年度 23,001

上越妙高~金沢間の旅客運輸収入(百万円/年)
2018年度 42,954

JR西日本  データで見るJR西日本区間別平均通過人員および旅客運輸収入(2018年度)
より2019/10/16引用

JR東日本の場合と同様に、2019年度も何事もなければ2018年度と同程度の収入があったと仮定して、今回の台風分の減収分を試算しようと思いますが、JR西日本については少々状況が違います。その状況の違いを踏まえつつ前提条件は以下のように考えることにします。

・JR西日本の公式発表には上越妙高~金沢間の折り返し運転に関する間引き率の情報がないため、JR東日本の情報を転用する
・ JR西日本区間では金沢~富山間の「つるぎ」があり、また現時点で金沢車両センターにどの程度の車両が留置されているか分からず、またそれらが今後どのように運用されるかの見通しが立たないため、JR西日本区間については実際の運転本数の間引き率はもっと少ない可能性がある


JR西日本区間についてはJR東日本よりも運転本数は多い可能性がありますが、2019年10月16日時点では暫定的にJR東日本と同じ50~60%の運転本数と仮定します。

上越妙高~金沢間の平均通過人員(人/日)が2018年度の50~60%とすると約11500~13800人となります。

また2018年度の収入は42954百万円(429億5400万円)となり、一日当たりの旅客運輸収入に均等割りで換算すると約117.7百万円(約1億1770万円)となります。運転本数を 50~60%と見積もると収入は約58.8~70.6百万円(約5880~7060万円)となり、緩めの見積もりとして60%で運転できたとしても一日当たりの減収額は約47.1百万円(約4710万円)程度にはなりそうです。

JR西日本の営業線区は台風の影響を受けていませんので、すでに運転が再開されています。仮に2019年10月15日から運転を再開し、同じダイヤを維持するとなると2019年度の運転日は169日となります。

47.1百万円の減収が169日間にわたって発生すると、2019年度は約7955.3百万円(約79億5530万円)の収入減となりそうです。これは2018年度の収入の18.5%に相当することになります。

・被災エリアにないJR西日本の特異要素

今回被災しているのはJR東日本エリアでJR西日本エリアについては影響がありません。そのことがJR西日本に与える影響をプラス面とマイナス面に分けて考えてみます。

【プラス面】
・JR西日本エリアは復旧のコストが発生しない
・金沢~上越妙高間の運転は残された車両のみとはなるものの運転区間とダイヤを JR西日本のみでコントロールできる
・W7編成2本がJR東日本エリアで被災していることからJR東日本から何らかの補償 を受けられる可能性がある

【マイナス面】
・東京に直通する「かがやき」「はくたか」の乗客が期待できなくなる
・仮に輸送量オーバーになったり、定期点検で車両が足りなくなったりしても車両 の補充ができない

特にマイナス面のうち、東京からの直通の乗客がいなくなることの影響が読めません。運転本数が維持できても、直通運転がなくなることによる減収の方が大きい可能性があります。

上越妙高~長岡間を特急しらゆきを使用した上越ルートで迂回できますが、特急しらゆきの接続性に依存します。一日5往復の運行ですので乗り継ぎしやすいとは必ずしも言えないように思います。

特急「しらゆき」は、2015年(平成27年)3月14日に北陸新幹線・長野駅 – 金沢駅間延伸開業に合わせ、上越妙高駅での新幹線(主に富山・金沢方面)との接続列車として、1日5往復体制で運行が開始された。新潟県上越地方から柏崎市や長岡市などを経由して新潟市とを結ぶ列車で、このうち3往復が上越妙高駅発着で、2往復が妙高市新井地区方面の利便性確保のため新井駅発着で運行されている。

しらゆき (列車) , Wikipedia, (引用:2019/10/16)

復旧までは、鉄道での東京~北陸方面への移動は長岡・新潟経由か、米原経由かのいずれかで移動するしかなさそうで、北陸新幹線開業以前に戻った感すらあります。

ちなみに筆者はこの運休期間中と思われる時期に北陸方面への移動予定があり、どちら経由で移動しようか検討中です。

・再認識させられた新幹線運行におけるJR西日本の不遇

JR西日本は新幹線の運行において難しい立場に立たされることが多い企業です。JR西日本エリアの新幹線は山陽新幹線と北陸新幹線がありますが、山陽新幹線は東海道新幹線を営業するJR東海の要望から、九州新幹線直通列車の東京乗り入れができません。

東海道新幹線は輸送力に対して輸送量が常にほぼ上限で推移し、編成両数の少ない九州新幹線を乗り入れさせている余裕がないからです。東京駅で東海道新幹線の電車を見ていると16両編成しかないのはそのためで、新大阪まで行けば山陽新幹線区間のみの列車や九州新幹線の列車など種類が増えます。

東京から直通することができている北陸新幹線でも、今回の営業実績を見る限り、北陸のJR西日本区間は東京側よりも輸送量が小さいことが読み取れます。

そのような状況の中直通運転が停止された北陸新幹線は、営業面で被災前に戻るのには少し時間が必要なように思われます。そんな中で特にJR西日本には耐えて頂きたいと思います。

「足りないものがある」と思うならそれはできるということ

今まで顧客からの発注に対して、材料を加工して納品してきた加工メーカが自社で製品を作り販売しようとするといろいろな壁に直面します。今まである会社に勤めていた方が新しい職種、職場に転職しようとすると、実際に内定を得るまでに多くの企業が要求するスキルとミスマッチがあることを実感します。

今までにやったことがないことをやろうとすれば絶対にそこには足りないことがあるはずです。そして、特にビジネスにおいてやりたいと思い実際に足りないことを痛感するのは新しい領域に手を出そうとする時だと思います。

筆者は今初めて自分の会社で企画した製品のリリースに向けて活動していますが、その過程で感じたはまさにことを今のタイミングで簡単にまとめておこうと思います。

・一番どうにかなるのは方法=技術

自社製品を売り出そうにもまずは企画を考えなければいけません。実は今進めている企画はある材料と出会えたことで発想したものでした。つまりその材料との出会いがなければ思いつかなかったものでした。シーズベース、プロダクトアウトから始まった企画と言えますね。

そしてその企画を思いついた私はメーカからもらったサンプルを使用して機能試作品を作りました。それを自社が出展するあるイベントでプロトタイプとして展示しました。

そうしたらそれを見たイベント参加者はかなりの確率で私の製品に目を留めました。足を止めて見るまではいかずとも、「あれなんだろう」という表情で見ながら通り過ぎたり、時にはプロトタイプの前で立ち止まり「へー」と言って立ち去る人がいたりしました。

その中の何人かは「これどうなってるんですか?」とか「これはなんですか?」と質問して下さり、「それだったら自分はこういう時に使いたいです」と、それぞれが想定した使用シーンの話をして下さいました。

企画は思いついただけでは実行を判断するだけの情報になりません。実際に市場にリリースした時のお客さんがいなければそもそもビジネスにならないのですから、企画を思いついたらその企画にお客さんが付くかどうか確認しなければなりません。私はそれを自分が出展するイベントで実施しました。

「お客さんがいるか分からなくて不安」であれば実際に探してみればいいのです。自分が思いついた企画が本当に自分が思ったニーズがあるかどうかを確認していなければそれはビジネスではなく趣味でしかありません。

一方でその企画を思いついて、お客さんがいるとしてもそれを自社が作れるか分からないというケースもあると思います。その場合はその機能がどのように構成されるのかを考え、それを何らかの形で形作るものがこの世の中にないのか、探せばいいのです。案外やってくれる人や企業がいると思います。つまり、実は思いついたことを実現するための方法(=技術的なこと)は、案外どうにでもなるのです。

方法論が問題になるのは実際にリリースした後、コストと工数(納期)が見合わないとか、品質を市販レベルにするのに要求される作業がものすごく難しくてコストも納期も圧迫してしまうとか言う場合です。これは単純に工程設計が甘いだけなので、リリースを公表する前に量産性確認をすればいいだけです。

ちなみに量産後に量産性不良で困る人のタイプは大体決まっています。全部誰かに任せて自分では手を動かさない人です。企画を考えたのがあなたなら、あなた自身が一度は必ず手を動かしてみましょう。実現可能かどうかすぐわかるはずです。

・プロダクトアウトかマーケットインか

一応簡単に説明しておきますと、プロダクトアウトとはシーズベースで製品開発を始めることです。製品や技術が先にあって、その活用先を考える企画の立て方です。中小企業、特に製造業の方が商品開発をするときはどうしてもこの形になりがちです。元手をあまりかけないようにするため、自社にある材料と機械で開発しようとするからです。

一方でマーケットインとはニーズベースです。使い手がいて、どういう時にどういう使い方をする道具を作りたいかで、商品企画をします。

個人的にはこのどちらかで迷う必要はないと思います。理由としては買い手がつく可能性が未知数の企画に対して元手を掛けたくないのは誰でも同じで、一方でユーザがいるかいないかはどこかのタイミングで必ずわかることだからです。

上に書いたように私自身最初は品物を見てアイデアが浮かびました。その後、機能試作品を人に見せたことで、そこで聞いた意見でマーケットがあることを理解しました。ちなみに買い手になりそうな業界は複数あることが分かりましたので、今後それぞれの業界に合わせてプロモーション戦略を立てなければいけないという状況にあります。

技術が分かるというのは大きな強みです。企画さえ思いつけば実現への段取りを構築するのは早いはずです。一方でユーザの存在を見つけられていないというのはビジネスとして致命的です。

・常に新しい世界を探しに行く

歳をとればとるほど職場と家の往復で日々が過ぎていくようになる人が増えます。これは仕方のないことですが一方で新しい世界に触れないと自分の技術が必要とされる世界が他にないのか見つけることができません。かといって、違う業界の見本市や展示会にいきなり出展したところで新規の顧客が付くとは限りません。既にある業界は特に国内の業界の場合は既存の企業で成立していて新規の参入が困難なことがほとんどです。

そんな中で新しい企画と新しい顧客を発見するにはもっと思い切って視点を変化させる必要があります。今まで何気なく帰っていた自宅、自宅で生活している家族の様子から何か家事で使える物が作れないかとか、自分の趣味に通じるもので何かできないかとか、業界から、場合によっては仕事からも視点を変える必要があるかもしれません。

しかし「そんな小さい商品では自社の売り上げ構成比率が変わらない」と言って新規事業に踏み出さない企業も多いのが現状です。でも考えてみて頂きたいのは、そもそもあるかどうかすら分からない市場に新しい製品を持っていくんですから、はじめから売り上げが立つことを期待する方が間違ってるはずです。何らかの動きを起こす方が先ではないでしょうか。

技術の不足の話、ユーザの発見、企画の見つけ方と3つに分けて大雑把に書いてみました。足りない、分からないということが分かってるなら十分にアクションを起こす理由になります。

それさえクリアできれば、先へ進めるはずです。

イベントの写真を自社のPRに使う

毎年、年一回開催されるあるイベントの撮影を担当させて頂いております。今年もそのイベントが終わり、納品も完了してほっとしたところです。

その写真はイベントの主催者が広報素材としてSNSやパンフレット、フライヤーにしたりするのですが、イベントの現場写真というのはいくつかの意味で撮影することが多いです。

  1. 当日の記録
  2. 今後のプロモーション用の素材
  3. 出演者へのサービス

1はご理解頂けると思いますが、「開催しました!」という形でSNSなどに掲載される写真ですね。参加者がみんな笑顔になっている集合写真などと合わせて投稿されるとそれなりにインパクトがあります。

3は意外かもしれませんが実際に要望があることもあります。今では講師がそれぞれご自身のSNSやWebサイトなどで発信されることも多いので、それに使うためにご要望があります。

大事なのは2です。2の難しさは2つあります。ひとつはその写真を見て「この会おもしろそう!行きたい!」と思わせないといけないこと。ふたつめは次回以降も同じ状況や構成で開催されるか分からないのにその時にもある程度対応できる必要があることです。

・PRのためにイベントを撮る

実際の所、「次回で大幅に構成を変えることになったので前回のは使わなくなった」と言われることもあります。ですが会の構成が変わっても会場のセッティングが近ければ会場風景として使える可能性がありますし、聴衆が講演内容に聞き入っている顔や懇親会などの談笑風景は汎用性がありますので一通り押さえるなど工夫します。

※この時には必ず主催者に参加者に対して撮影される可能性がある事、その写真が公開される可能性があることは必ず周知することを依頼します。依頼できていない場合はどんなに主催者のためになるシーンであってもカメラを向けないなど撮影しないようにします(念のためと思って撮影してあって、一応注釈付きで納品した場合、万が一その注釈がクライアント側で周知されず公開されてしまうと大問題になるのでそもそも撮影も納品もしません)。

「行きたい!」と思わせるには参加者が楽しそうにしているか、体験する価値がある(イベント側が売りにしている)ワークなどが含まれている必要があるので、ある程度聴衆の雰囲気も含めて撮影します。この時、上の※の内容がフォローされてないと聴衆の表情が撮れないので、やはりある程度参加者への周知とカメラマンへの配慮というのは必要になります。

・カメラマンとカメラはイベントにとって「異物」

イベントというのは主催者と参加者がいて成り立ちます。他に必要な物はどこかしらの会場だったり、主催者以外の出演者や登壇者、講師などの人たちです。

お分かり頂けるようにイベントを開催するための構成要素にカメラマンは存在しません。つまり、イベントを撮影する目的が上に書いた1~3のどれであれ、またイベントを撮影するカメラマンがプロであれ、主催者側のスタッフが撮るのであれ、イベントそのものには不要なものです。

不要なものが入る以上イベントの参加者が得る体験価値自体をカメラマンが毀損する、下げてしまう可能性があります。カメラマンはその価値を下げない努力をすべきです。

そのために一番必要なことは何か?その答えはものすごく簡単なことです。カメラマン自身がイベントの価値を理解し楽しむことです。その場の講師や出演者の熱意、参加者の雰囲気に合わせることです。最低限の態度として、その場の雰囲気を乱すような行動や表情は絶対に出してはいけません。

・自分が笑顔でいれば相手も笑顔になる

少なくともカメラを持って人前にいる時点で、自分は他の参加者やスタッフよりも目立つ存在であることを自覚することです。そんな自分がふてくされてたり、眉間にしわを寄せていたり、ましてや無表情でずっと会場前方で液晶モニターをのぞき込んでいたりしては参加者が持つ印象は悪くなるばっかりです。

またイベント中はどんなことがどのタイミングで起こるか、それによって参加者がどんな表情をするかを常に見ていなければなりません。仮にタイムテーブルが決まっていてもそのタイムテーブルに沿って起こることを撮るためには会場全体を観察している必要があります。

そのためには顔を上げて会場を見ていなければいけないのですから、参加者はカメラマンの顔を見られる状態になるわけです。そこで不機嫌そうな顔をすることは参加者の気分を悪くします。結果として、参加者がカメラマンが持つカメラに対していい表情を向けることはあり得ません。

それを逆手に取り、どんな時にも笑顔で(笑顔が不自然な時もありますが)、前向きさが感じられる表情でいれば参加者は違和感を感じにくいですし、それに伴って場に溶け込むことができます。

笑顔の相手が撮りたければ、まず自分が笑顔になることです。

なぜ突然こんなことを書き出したかというと、やはり時々会場に溶け込めずにいるカメラマンを、参加者として訪問したイベントで見かけることがあるからです。

特にその主催者(企業)のチームのうち、若い人が記録係を受けていたりすることもあり、ご苦労されているシーンもよく見かけます。

ただせっかくカメラを持ってその場にいる以上は、その方がプロであるかどうかに関わらず、いい写真を持って帰って今後に活用して頂いた方がよかろうと思い、こんなことを書きました。

写真は企業にとってPR素材です。品質の高い素材を多く揃えて自社をアピールできるようにしましょう。

品質を上げるために、形容詞と副詞を排除する

ミスをした時やアウトプットが想定よりも低かった場合、「ちゃんとしなさい」とか「きちんとしなさい」とか言われた経験がある人はたくさんいると思います。子供のころテストの点数が低かった時、「ちゃんと勉強してないからだ」と親に叱られたり、大人になってからご自身の子供が部屋を片付けない時に、「きちんと片付けなさい」と注意したり。

ではなにができてたら「ちゃんと」しているのでしょうか。どうなっていたら「きちんと」したと言えるのでしょうか。テストであれば100点に近ければ近いほど「ちゃんと勉強した」と評価されやすくなりそうですね。部屋の片付けであれば余計なものが床や机に出ていなければ「片付いている」と判断されるかもしれません。

ご自身が叱られた時、また誰かを叱った時、この「ちゃんと」や「きちんと」の中身を定義して叱ったことがある方はいらっしゃいますか?仕事の時はこれを定義しないとアウトプットに悪い影響を与える可能性があります。

・バラつきは言葉から生まれる

品質は製品開発と製造から得られるアウトプットです。アウトプットは製造された品物であったり測定されたデータです。それらは工程中の作業で作られ、工程中の作業は作業手順書に従って行われます。その作業手順書は製品の設計書から作られますから、帳票類の表現がそのまま落とし込まれます。

品質を安定させるためには帳票類に記載される文言のブレをなくす必要があります。そのために、まず最初に形容詞や副詞を排除し道具と方法の指示(名詞と動詞)と数字もしくは画像などによる設定値や出力値の明示を行います。

それぞれの帳票を作る時もそうですが、前工程で作成された帳票を参照して次の帳票を作る際にも解釈が人によってブレそうな部分は前工程の担当者に確認した上で書き換えます。

・曖昧さやわからないことは形容詞や副詞の使われ方から判断する

他の業務を担当する人が話す内容で曖昧なことやわからないこと、また外部に業務の一部を委託する上で不明点を明確にしたかったり、事前の確認をしたい時もあると思います。ではそのような時も含めて、会話をしている中で曖昧な所、わからない所があるかどうかを判断するにはどのようにしたらいいでしょうか。

これは筆者がよくやる方法なのですが、相手の言葉の中で形容詞や副詞を使って表現されている部分について、確認するようにしています。例えば「ちゃんとやります」と言われた場合、その「ちゃんと」というのはどういう状態のことを指すのかを確認します。「何がどの程度にどのような状態になっているのですか」とストレートに聞いてしまいます。

聞き方としてはちょっときついように聞こえてしまうかもしれません。ただここに至るまでには、その周辺の業務や作業の状況整理(仕様書や図面、作業手順書など帳票類の版管理の確認、整理や内容確認など)、残っている記録の確認などをし終わっていることがほとんどです。

その上でわからない部分をお聞きすることになるので、かなり細かいポイントにまで絞り込まれていることが多いです。そうであれば事細かに聞くような聞き方でも必ずしも相手はきつめには感じず、一緒に曖昧な点を明確にしようというという姿勢になって頂けることもしばしばです。

・「○○性」という言葉を疑う

「○○性」という接尾辞があります。「○○」という名詞に「性」という漢字一文字を付けることで「○○という性質を持つ」という意味になります。形容詞や副詞を書き換える時には「○○性」という言葉も一緒に書き換えます。

【例1:可能性】
例えばある装置の仕様書に「出力がXとなる可能性がある」という表現があるとします。「出力がXとなる可能性がある」ということは「出力がXとならない可能性もある」ということですよね。つまり出力がXとなる条件と出力がXとならない条件があると言っているわけです。ということは大きく以下の3パターンの条件と出力の組み合わせが存在します。

  1. 出力が確実にXになる条件
  2. 出力がもしかしたらXになる条件
  3. 出力が確実にXにならない条件

出力がXにならないといけないならば、1の条件以外を選択できないように動作制限を掛ける必要があります。XにならなくてもいいならX以外の出力値が得られる条件とその時の出力値を示します(もしかしたらこの時の条件と出力値の組み合わせはものすごく種類が多いかもしれません)。

仕様書の段階ではこのすべての条件か、出力値をXにするための動作制限が明示されている必要があります。動作制限が入るのであれば制限のトリガーになる条件も明示されていないといけないのですが…

【例2:耐熱性】
今度は性能の様に読み取れる「耐熱性」で考えてみます。

例えば容器として販売しようとしている製品の取扱説明書に耐熱性に関する記載をするとします。その時「この製品には耐熱性があります」と書くより、「この製品は150℃まで対応します」と書かれていれば通常生活で使用する上では沸騰させたお湯までは対応できるということが分かります。

さて、それだけで大丈夫でしょうか。150℃の温度に達する熱量が製品に均一にかかるなら大丈夫だけど、局所的な温度上昇がある場合は製品が破損するとしましょう。容器として販売する予定の製品ですので、以下の使われ方が想定できます。

  • 沸騰した100℃の熱湯を入れる
  • 水を入れて電子レンジで加熱する
  • 水を入れて直火で加熱する
  • 200℃に加熱された油を入れる

1つ目と2つ目は製品に均一に熱がかかると思われるので、破損はしないでしょう。しかし3つ目に関しては局所的な加熱ですし、4つ目については耐熱温度を超えています。つまり後半2つは使用方法として不適切ということになります。

実際に容器として販売されている製品の記載を読むと「直火にかけないでください」などと書いてある場合があります。おそらくその製品の仕様書にはこの様な指摘があるのでしょう。

「曖昧なことをしない」ようにしようにも、何が曖昧かわからないと表現が変えられません。曖昧さは閲覧者の誤解や困惑につながります。

これは曖昧さを検出して排除するための一つの方法ですので、念頭において帳票類を眺めると、その帳票の閲覧者が困る箇所が検出しやすくなるかもしれません。

日本人に足りないのは “Trust, but Verify” かもしれない

筆者は社会人になってから一度大学院に入学していまして、“Trust, but Verify(信ぜよ、されど確認せよ)”はその講義の中で聞いた言葉です。それが何の講義だったかは記憶が定かではないのですが、経営者から従業員に対して仕事などの取り組みの中で使われると聞いた記憶があります。「あなたのことは信頼しているよ。でも、だからこそ確認はさせてもらうよ」という風に言うような事がある、との事でした。

私はこれを聞いた時に「あぁ、外注先の会社さんにお仕事をお願いする時や工程監査などに伺う時、自分もそんな気持ちだったなぁ」と思った記憶があり、それからずっと頭の中から離れない言葉です。

そのことを、サウスピークという英語学校のインタビューを受けた際に答えたことがあります。

–品質保証部の方から確認されるということは、責められているかのような感情を抱かれることはありませんか?

そのような感情をいだかれる方もいらっしゃいます。

ですので、こちら側が信頼していることを伝えることが大事だと思いました。海外では「Trust, But Verify」(信ぜよ、されど確認せよ)という言葉があると聞いたことがあります。相手に対して「あなたと一緒に仕事をしたい」「あなたには一定の技術力があることを評価している」と信頼を伝えること、その後に認識の齟齬を確認していく、という順序が必要です。

相手は、別の会社であれ、別部署であれ、自分たちの製品を作ることに協力してくれている仲間です。良い製品を作り、広くお客様へ届けて、使っていただくことで価値を社会に広めることが目的であることを忘れることはありません。

信ぜよ、されど確認せよ。品質保証の経験者に聞いた目的を実現するための仕事術 , サウスピーク(https://souspeak.com/ks/hinsho-shigoto/),引用日:2019/10/3

・もともとはロシアのことわざ

改めてこの言葉を簡単に検索してみたら、元はロシアのことわざだそうです。

Trust, but verify (Russian: Доверяй, но проверяй; Doveryai, no proveryai) is a Russian proverb. The phrase became internationally known in English when used by President Ronald Reagan on several occasions in the context of nuclear disarmament discussions with the Soviet Union.

Trust, but verify , Wikipedia,(https://en.wikipedia.org/wiki/Trust,_but_verify),引用日:2019/10/3

「アメリカのロナルドレーガン大統領がソ連との非核化協議の中で度々引用していることから国際的に知られた」とあります。

どういう経緯で元の言葉がことわざと言われるほどに頻繁にロシアで使われるようになったのかはわかりませんでしたが、国際的に使われるようになったのはいつ実弾を交えることになってもおかしくない東西冷戦下の非核化協議です。その経緯は、どう考えても和気あいあいとした穏やかな雰囲気ではなさそうです。

当時のアメリカとソ連は、お互いのバランスを崩さないようにただいつ攻められても対応できる戦力を残しながらギリギリの交渉を進めていたと思います。「信頼しているよ」と言いながらその心境はものすごく大きな恐怖心と、かついつ何らかの決断を下す必要が出てくるか分からない緊張感を伴うものだと思います。

・製造業の受発注関係も緊張感を伴うもの

筆者がその言葉を聞いた時、その「信頼している」と表明しながらも「だけど確認はさせてもらうよ」という強さ、「その信頼を実際の形として見せてほしい」と表明する意志が、実は製造業における受発注関係にも求められているし個人的には相手先企業に求めていたことだったなと思い至ったのです。

文化や習慣の違いを前提としたコミュニケーションこそが他社を巻き込むプロジェクトチームに必要な考え方です。

Vol.39 ITプロジェクトこそ、”trust but verify”(信ぜよ、されど確認せよ) , スフィアシステムコンサルティング株式会社,(http://sphere-sc.co.jp/column/2350.html),引用日:2019/10/3

同じ言葉をテーマにコラムを書かれていたIT企業がいらっしゃったので、そのコラムから引用させて頂きました。

そもそも自分にできないことだからこそできる人にお願いする意味があるわけですから、この考え方は外注先と取引する時に絶対に必要な考え方です。

しかしここで相手先企業と積極的にコミュニケーションをとる人はどの程度いるでしょうか。加工屋さんに部品の加工を依頼した時、「頼んだ先に細かいことを聞くのは失礼じゃ…」とか「図面も出したし頼んだんだからいちいち細かいこと言わせないでちゃんとやって来てくれよ」とか思ったりしていませんか?

受託事業を営んでいる会社さんでは発注後何も聞いてこないし確認もしてこないで、品物を納めた時に文句を言われた経験のある方はいらっしゃいませんか?または明らかに知らなさそうなのに知ったように言ってくるなぁと感じたことや、コスト面で有利になりそうな施策が講じられていない図面などが顧客から送られてきたことなどはありませんか?

製造業などの受発注関係でも、コミュニケーション上の緊張感があるんですよね。

・曖昧な点は必ず聞いて確認する習慣をつける

もしわからないことや曖昧な点があるのであれば必ず聞いて確認する習慣をつけることをお勧めします。受注する側であればこの部品が搭載される予定の製品が要求している性能はどの程度で、要求仕様や図面に書かれている内容が製品として妥当なものであるのかを確認してしまってもいいでしょう。図面が受け取れるということは機密保持契約は済んでいると思いますので、逆に業務上聞いてはいけない内容ではないと思います。聞いてはいけない内容なら相手先から「そこについてはお話しできません」と言われるはずですし。

発注側であれば、「自分はできないから頼んでるんだ」とか「頼んでるんだからちゃんとやれよ」とかではなく、頼んだ内容が理解されているか、実現のための道筋が立てられているかを確認する責任があります。その確認をしないまま出来上がったものを見て指摘するのは筋が違いますし、確認を怠った結果そのまま製品が納入されてしまえば修正が必要な場合もあり得ます。

発注するということは自分側にできない理由があることになります。時間的に自社の工程が空かないとか、自社にその設備がない、技術がないというケースもあります。特に設備や技術がなく自社でできない仕事であればわからないことや知らないことがあるのが当然です。であれば、相手側に質問する大義名分ができるのです。その大義名分を活用して、相手側に教えて頂き、勉強させてもらいましょう。その勉強は、必ず次回の発注に役立つはずです。

あえて大雑把なくくり方で書きますが、「日本人」は「行間を読む」ことや「空気を読む」ことを要求しがちです。また空気を読んでしまって、不思議に思ってもその場をやり過ごしてしまうこともあるでしょう。

その行間を読むことは、お互いが協力関係にあり、何らかの目的のために前に進まなければいけない開発の現場であれば、むしろない方がいいものかもしれません。

これからの未来のために、自分の状況を表明しためらわずに声を上げましょう。

製品開発のハードルを下げたい

仕事に関連する中でもあまりお話しする機会のない話というのがいくらかあります。せっかくなのでそんな話をこのサイトに書き残しておくようにしようかなと思います。

製造業の業務範囲というのはその企業それぞれで大きく変わります。完成品メーカであれば部材の調達もしくは生産、社内での仕上げ加工や組立て工程を持ち、エンドユーザが使用する上で品質上問題が起きないことを保証しながら販売しなければなりません。

部品加工を受託した会社は顧客の要望を満たしながら部品の出荷品質を安定させ、常に同じものを出荷しなければなりません。

その受託する会社も、機械加工品の様な社員数名~数十名で一社で一つの材料を加工し出荷している会社から、社内で複数工程を持ち、外注先と連携しながらいくつかの組立てを担当することもできる会社さんもあるでしょう。クライアント一社への依存率や業界への依存度も会社さんによってかなり異なるのが現状だと思います。

・大企業の発注をあてにできない

日本製品が必ずしも売れる時代じゃないのは今(2019年10月現在)これを読まれている皆さんもお分かりだと思います。また、今まで製品を出荷する形でビジネスを続けてきた会社が大規模なITサービス系企業と連携したり、場合によっては競合したりもしています。

トヨタ「ライバルはもうホンダではない」の真意 全ての企業の競争相手はGAFAである - PRESIDENT Online

製品販売以外の事業を展開したりして、相対的に製造業の部分のウェイトが下がっている企業もあります。日本だとソニーなどがいい例で、製品を作るだけでなく、音楽や映画、金融に手を広げ、売上高や営業利益などを見ると、そちらの方が製造業が関連する事業よりも額としては大きいものも見受けられます。

ソニー 2018年度決算説明資料  2019年4月26日

製造業の海外流出というような、生産現場が海外に移転したり、人件費の安い海外の会社に発注されてしまうという状況ではなくなり、そもそも日本国内での製造業の仕事が減っているのが現状です。その中でもなんとかまだ世界レベルで製品を売って歩ける会社があるのでいいのですが、でもそのような企業が危機感を抱いており、そのために作戦を考えて行動したことにより徐々に結果を出しているのが2019年の今と言えます。

・自分のやっていることを伝える

日本の中小の製造業の方(他の業種の方もそうかもしれませんが)、大きな企業から仕事を受けている会社が多いと思います。もちろんそれが悪いことなのではありませんが、その流れてきている仕事がなくなる、細くなるのが現在ということになりますし、その風を一身に受けている会社が非常に多いはずで、危機感を募らせてらっしゃると思います。そのために自社の技術を活用して製品を作ろうと思う会社さんが多いのも存じ上げております。

しかし、本当に数名で受託事業を行っている会社さんはこれをやる事すら厳しい状況にいらっしゃると思います。そのような会社さんが取り組めること、それが実は社内に品質保証体制を構築することだったりします。

なぜなら、品質保証体制というのは技術的な対応と開発管理、生産管理、それらを通じた品質管理の意味と内容を整理して、作り始めから販売までを網羅することだからです。つまり元手が0円で済みます。

それらの取り組みを自社のパンフレットでもポスターでもいいです、TwitterなどのSNSやもしお持ちであれば自社のwebサイトでもいいです。それらを公開しましょう。公開することで、「弊社は、ものづくりをこのように捉えて取り組んでいる会社です。」という説明ができます。

それができると自社で製品を作りたいと思った時にもいいことがあります。それは自社の製品がどの程度の生産数量でどの程度の納期なら対応可能なのか整理ができるからです。

実はQA+で今までの記事の内容の様な事を延々と書いているのは、その品質保証体制を構築する上での参考情報にして頂きたいからです。

「うちはISO9001取ってるよ」とか「○○という大企業の要求にずっと応え続けてきたから技術力はあるよ」とか説明できる会社さんはたくさんあると思います。ただそれらのもったいないところは、それだけでは皆さんがどのようなお仕事をしているか、どのように案件に取り組まれているかは説明しきれていない点です。これらの説明ができると、外部からの理解はものすごく高まります。

QA+を運営している株式会社コルプの目的は、ご自身の会社と事業がどのようなことができるのか、改めて見つめ直して頂くための機会のご提供なのです。