未知なる領域へ臨むときに考える品質

2019年10月15~18日の会期で、千葉県幕張メッセにおいてCEATEC2019が開催されていました。少し遅くなりましたが、その中から今後の製造業やものづくりと、品質についての未来を考えさせられる話題について、QA+として興味深い話題について、何回かに渡ってご紹介をしたいと思います。

・日本初の月面探査実現に向けて

株式会社ダイモンは自社開発のローバーである“YAOKI”で日本初の月面探査を目指しています。CEATEC2019では、AVATAR Xの共創ブース内にて、YAOKIの走行体験を実施していました。2021年に米・Astorobic社のランダー(着陸船)に搭載され月面探査を予定しています。

ダイモン社のローバー、YAOKI。

YAOKIは小型軽量で大径車輪が特徴的なロボットで、コストが高くサイズに制限のある月輸送に対応したサイズと重量を実現し、月面での活動を考慮した走破性と強度を持たせた形状と構造になっています。砂地を再現した体験ブースでもスタックすることもなく起伏を越えることが可能でした。

ブースではリモコン操作も体験でき、実際の月面探査の際には地球上から無線制御で操作するとのことです。

月面での行動と宇宙空間の移動という通常想定される環境とは全く異なる環境条件での使用が前提となっている機械ですので、現時点で想定できる事項を可能な限り反映した設計になっているという印象です。

砂地での走破性と操作性を体験できるブース。実際に会場で参加者が操作することができた。壁面のモニターには会場にいるYAOKIから送信された映像が映し出されていた。

2021年に最初の1台を月面に送り込む予定になっているYAOKIは、ダイモン社代表の中島氏が一人で企画・開発・設計を行い3Dプリンターによる試作・製造を行っています。3Dプリンターの活用で設計変更の反映の時間短縮が可能となっており、また現時点での完成品についても設計強度を満足した個体を出展しています。

加工方法が開発フェーズとその費用、量産台数とコストとバランスするべきQCDに準じて検討されており、柔軟な開発体制や予算の見通しに影響していると感じられます。

株式会社ダイモンの中島代表。もともとは自動車の駆動系の技術者で、独立しダイモン社を創業している。

YAOKIによる月面探査事業については2019年10月29日に事業説明会が行われており、そちらも取材済みですので追ってお知らせしたいと思います。

新製品の販売環境を準備中です

2019年秋発売としている製品の販売と展示会出展や協賛のため、色々な作業をしております。製品の形態や梱包などはほぼ固まり、2019/10/23~10/25の期間で出展していたLink to Creativeでも2台ほど販売しました。

今行っている作業は以下のようなものです。

・販売サイト作り
・自社サイト内への商品ページ作り
・取扱説明書の更新
・サイト用写真の撮影

改めて自社での新製品のための画像やコンテンツを考えていると、本来誰に向けている商品か、どのようなチャネルで顧客にリーチするつもりかなど、普段お客様に問うている内容が自分に向かって来ていて考えさせられます。

ちなみに販売サイトの自社サイトの構成は、基本的に自社サイトに情報を掲載し、販売サイトにリンクする形にします。そしてお客様はそのどちらに先にアクセスしても情報を得られる形にします。製品ページと購入ページ双方に性能や仕様などを記載するか、片方にしてそのどちらかに記載してリンクするかなどは追って考えます。

販売サイトに使用するサービスは当面はSTORES.jpにしようと思います。国内でスト同様のサービスにBASEがありますが、1万円以上は月末の自動振り込みに対応していたり、英語記載などにも対応しているなど、オペレーションと今後の展開で比較的長期間使えそうに見えたのでSTORES.jpにしました。この辺りは登録時に利用規約やサービス内容をよく確認して選ぶといいと思います。またゆくゆくはAmazonでの小口販売なども利用しようと思っています。

今後販売を進めていく中で一番検討するべきは海外展開だと考えています。国内市場は縮小の一途なので、もはや国内を相手にビジネスできる期間はそう長くはないと考えていますので。

その場合はアリババなどのアジア圏に特化したサービスを利用するか、もしくはPaypaleBayを組み合わせるか、それぞれに出店するか、いずれかの方法が考えられます。これも追って調査と検討を進めるつもりです。

恐らく全世界規模だとeBayを優先した方がいいでしょう。そしてそれらで購入される場合は個人輸入の範疇になるので、各国の規制などのルールの影響を受けづらいというのもありますので、まずはそこで経験を貯めたいと思います。


それらを進めた結果、取扱説明書の内容充実がかなり重要なポイントになるかと思います。異なる文化を持つ人が同じ製品を使うとき、使い方の理解などに差が出る可能性があるので、「こんなことは言わなくてもわかるだろう」という前提に立つとかなり危険です。「日本人ならこれくらい当たり前だ」ということは、日本人以外は当たり前ではありません。そして日本人は現時点で世界の1/70しかいません。「当たり前」は全く当たり前ではなく、かなりのレアケースと捉えるべきです。

どこかのタイミングでテクニカルライティングの領域ができる人にご協力頂く事になります。そしてありがたいことにもうすでにご協力頂ける方が弊社(株式会社コルプ)には身近にいますので、まずはその方にご相談する予定でいます。


これらをすべてわかりやすく網羅するためにはイメージで見せることが重要です。そのための画像の意味や見せ方を、やはり今同時進行で検討しています。もともとビジネスとして顧客が使用する写真や映像を撮影してきましたが、自分が進めている事業の写真ともなると、何を撮ればいいかなど不鮮明な部分も多くあります。これはもう言い訳する余地もなく、自分が進めている事業に対する自分自身のイメージ不足ということですね。改めて顧客とコミュニケーションを取る時の勉強になっています。


これらの他にもアフターサービスの設定、顧客管理、返品の処理等考えることはまだまだあります。

まだこちらでは正確に商品の情報もお見せしていませんし、今後の販売のステータスと合わせて記事にしていきたいと思います。お待ちください。

商品を量産して販売したい時につまずくあれこれ

さて、実際に企画を思いついて試作も実施してみて「良くできたからこれを販売しよう!」と思った時に気が付くことがあると思います。特にそれらは一人(自社のみ)でやっていて、しかも今まで商品を販売したことがないとなると特にいざ品物を発送できるようにしようと思った時に気が付く問題だったりします。

そんな問題をいくつかここにリストアップしておきます。「地道に手売りしていくからそんなこと気にしないよ」という方もいらっしゃるかもしれませんが、今はネットでも販売しやすくなっているので、もしかしたらそういうサービスも利用しようとすると何らかの形で影響するかもしれませんので、気に留めておいて損はないかと思います。

  1. 梱包
  2. 取扱説明書
  3. 保証期間と補償範囲
  4. アフターサービス
  5. 環境規制対応
  6. JANコード

1.梱包

何か袋に入れておけばいいだろと思うかもしれませんが、商品がホコリや傷が付きやすかったりするものであれば何らかの保護が必要ですよね。特に静電気を嫌う電子機器などはエアパッキン(プチプチ)も帯電防止用のものを使う必要があります。

手売りなら袋に入れてお渡しすればいいだけかもしれませんが、もしWeb販売などの通信販売を検討されているならば手渡しというわけにいかなくなってくると思います。その場合一般の物流ルートに乗せることになりますが、輸送中の衝撃で壊れないように梱包する必要があります。

箱を用意するにしても中が詰まってないと箱潰れの要因になりますし、上に他の物を積まないように依頼するにしても、自分が同じ商品を複数発送してしまうとそういうわけにいかなくなります。

商品の破損についてはお客様が購入して梱包箱を開けて使い始めるまでは販売者の責任です。お客様が最初に箱を開けた時(=製造業で言えば受入検査に相当)に不備がないようにしましょう。

かといって厳重にすると梱包そのものにかなり高額なコストがかかります。梱包も原価に含める必要がある資材と捉えて販売方法と輸送の計画を立てましょう。

2.取扱説明書

案外おろそかにしがちなのが取説です。「使い方なんて見ればわかるだろ」とは絶対に言ってはいけません。また取説には使い方だけではなく、やってはいけない使い方、その結果起こる可能性のある傷害レベルも記載する必要があります。

これも手売り手渡しの場合は問題になりにくいですが、通信販売で遠隔地に発送する場合はユーザがどんな人か、またどんな使い方をするかが全く想定できません。ですので取扱説明書である程度の指示を出しておく必要があります。

これも全く何も書面での指示がないと何らかの事故が発生した場合に生産者が製造物責任を問われることになりますので注意が必要です。

特に乳幼児が触れるた場合の安全性についても言及が必要です。また実際に触れる可能性を0にすることができないものであれば安全性の確認もしておいた方がいいでしょう。

3.保証期間と補償範囲

通常1年の保証期間を付けることが多いと思います。またその保証期間内であっても生産者の責任範囲の不具合しか補償範囲になりません。買う側でいる時にはそのことを認識しているつもりでも、自分の商品を買った人がすべてその理解でいるとは限りませんので、補償範囲を明示しましょう。

例えば落下による破損などは使用者の不注意で防げる問題なので、通常であれば使用者の責任範囲になると思います。

使用者の環境で起こりそうな事象とその補償のしかたについて決めておくことは自社のビジネスを守る上で必要なことなので、事業を継続する観点からも必ず実施しましょう。

4.アフターサービス

3の話と関連しますが、何らかの故障が起こった場合にどのように対応するかを決めておきましょう。故障した品物を送ってもらう必要があるのか、送ってもらってもどの程度の壊れ方なら修理するのか、もしくはそのまま新品と交換することになるのかなどの基準を作っておきます。

故障に関する問い合わせやクレーム受付窓口も決めて取扱説明書などに記載します。他の商品でも「お客様センター」などの問い合わせ窓口の記載があると思います。

5.環境規制対応

今環境負荷が低くなるように商品を作ることが求められています。欧州のRoHS指令やREACH規則はよく知られていると思いますが、それ以外の各国で規制がかけられていますので、販売対象地域の規制を確認しましょう。

特にREACH規則などは今後追加される予定の物質に対しても徐々に対応方法の検討を各企業に求めます。商品を作ったら一時的に販売して終わることはあり得ませんので、今後の見通しまで含めて確認しましょう。

6.JANコード

これは筆者も知人のデザイナーに言われて気が付いたことでもあります。小売店に卸売り販売する場合はJANコードがないと商品管理ができず受け入れてもらえないことがありますので、事業者登録と商品登録をしましょう。

弊社でもこれから対応予定です。

事業者登録
https://www.dsri.jp/jan/jan_apply.html

商品登録データベース
https://www.dsri.jp/database_service/jicfsifdb/

完成品メーカはこれらの対応をする部門が存在しますが、中小規模のメーカの場合はこれらの対応部門がないことが多いので手さぐりになります。商品を市場に流通させるときには必ず必要になる要素な上、量産開始後では対応が遅いものも多くあります。漏れがあった場合は仕様設計のタイミングまでさかのぼり、設計上対応できているかも含めて確認しましょう。

これらの項目の更に細かい要素はまた別の記事でご説明したいと思います。

「足りないものがある」と思うならそれはできるということ

今まで顧客からの発注に対して、材料を加工して納品してきた加工メーカが自社で製品を作り販売しようとするといろいろな壁に直面します。今まである会社に勤めていた方が新しい職種、職場に転職しようとすると、実際に内定を得るまでに多くの企業が要求するスキルとミスマッチがあることを実感します。

今までにやったことがないことをやろうとすれば絶対にそこには足りないことがあるはずです。そして、特にビジネスにおいてやりたいと思い実際に足りないことを痛感するのは新しい領域に手を出そうとする時だと思います。

筆者は今初めて自分の会社で企画した製品のリリースに向けて活動していますが、その過程で感じたはまさにことを今のタイミングで簡単にまとめておこうと思います。

・一番どうにかなるのは方法=技術

自社製品を売り出そうにもまずは企画を考えなければいけません。実は今進めている企画はある材料と出会えたことで発想したものでした。つまりその材料との出会いがなければ思いつかなかったものでした。シーズベース、プロダクトアウトから始まった企画と言えますね。

そしてその企画を思いついた私はメーカからもらったサンプルを使用して機能試作品を作りました。それを自社が出展するあるイベントでプロトタイプとして展示しました。

そうしたらそれを見たイベント参加者はかなりの確率で私の製品に目を留めました。足を止めて見るまではいかずとも、「あれなんだろう」という表情で見ながら通り過ぎたり、時にはプロトタイプの前で立ち止まり「へー」と言って立ち去る人がいたりしました。

その中の何人かは「これどうなってるんですか?」とか「これはなんですか?」と質問して下さり、「それだったら自分はこういう時に使いたいです」と、それぞれが想定した使用シーンの話をして下さいました。

企画は思いついただけでは実行を判断するだけの情報になりません。実際に市場にリリースした時のお客さんがいなければそもそもビジネスにならないのですから、企画を思いついたらその企画にお客さんが付くかどうか確認しなければなりません。私はそれを自分が出展するイベントで実施しました。

「お客さんがいるか分からなくて不安」であれば実際に探してみればいいのです。自分が思いついた企画が本当に自分が思ったニーズがあるかどうかを確認していなければそれはビジネスではなく趣味でしかありません。

一方でその企画を思いついて、お客さんがいるとしてもそれを自社が作れるか分からないというケースもあると思います。その場合はその機能がどのように構成されるのかを考え、それを何らかの形で形作るものがこの世の中にないのか、探せばいいのです。案外やってくれる人や企業がいると思います。つまり、実は思いついたことを実現するための方法(=技術的なこと)は、案外どうにでもなるのです。

方法論が問題になるのは実際にリリースした後、コストと工数(納期)が見合わないとか、品質を市販レベルにするのに要求される作業がものすごく難しくてコストも納期も圧迫してしまうとか言う場合です。これは単純に工程設計が甘いだけなので、リリースを公表する前に量産性確認をすればいいだけです。

ちなみに量産後に量産性不良で困る人のタイプは大体決まっています。全部誰かに任せて自分では手を動かさない人です。企画を考えたのがあなたなら、あなた自身が一度は必ず手を動かしてみましょう。実現可能かどうかすぐわかるはずです。

・プロダクトアウトかマーケットインか

一応簡単に説明しておきますと、プロダクトアウトとはシーズベースで製品開発を始めることです。製品や技術が先にあって、その活用先を考える企画の立て方です。中小企業、特に製造業の方が商品開発をするときはどうしてもこの形になりがちです。元手をあまりかけないようにするため、自社にある材料と機械で開発しようとするからです。

一方でマーケットインとはニーズベースです。使い手がいて、どういう時にどういう使い方をする道具を作りたいかで、商品企画をします。

個人的にはこのどちらかで迷う必要はないと思います。理由としては買い手がつく可能性が未知数の企画に対して元手を掛けたくないのは誰でも同じで、一方でユーザがいるかいないかはどこかのタイミングで必ずわかることだからです。

上に書いたように私自身最初は品物を見てアイデアが浮かびました。その後、機能試作品を人に見せたことで、そこで聞いた意見でマーケットがあることを理解しました。ちなみに買い手になりそうな業界は複数あることが分かりましたので、今後それぞれの業界に合わせてプロモーション戦略を立てなければいけないという状況にあります。

技術が分かるというのは大きな強みです。企画さえ思いつけば実現への段取りを構築するのは早いはずです。一方でユーザの存在を見つけられていないというのはビジネスとして致命的です。

・常に新しい世界を探しに行く

歳をとればとるほど職場と家の往復で日々が過ぎていくようになる人が増えます。これは仕方のないことですが一方で新しい世界に触れないと自分の技術が必要とされる世界が他にないのか見つけることができません。かといって、違う業界の見本市や展示会にいきなり出展したところで新規の顧客が付くとは限りません。既にある業界は特に国内の業界の場合は既存の企業で成立していて新規の参入が困難なことがほとんどです。

そんな中で新しい企画と新しい顧客を発見するにはもっと思い切って視点を変化させる必要があります。今まで何気なく帰っていた自宅、自宅で生活している家族の様子から何か家事で使える物が作れないかとか、自分の趣味に通じるもので何かできないかとか、業界から、場合によっては仕事からも視点を変える必要があるかもしれません。

しかし「そんな小さい商品では自社の売り上げ構成比率が変わらない」と言って新規事業に踏み出さない企業も多いのが現状です。でも考えてみて頂きたいのは、そもそもあるかどうかすら分からない市場に新しい製品を持っていくんですから、はじめから売り上げが立つことを期待する方が間違ってるはずです。何らかの動きを起こす方が先ではないでしょうか。

技術の不足の話、ユーザの発見、企画の見つけ方と3つに分けて大雑把に書いてみました。足りない、分からないということが分かってるなら十分にアクションを起こす理由になります。

それさえクリアできれば、先へ進めるはずです。

品質を上げるために、形容詞と副詞を排除する

ミスをした時やアウトプットが想定よりも低かった場合、「ちゃんとしなさい」とか「きちんとしなさい」とか言われた経験がある人はたくさんいると思います。子供のころテストの点数が低かった時、「ちゃんと勉強してないからだ」と親に叱られたり、大人になってからご自身の子供が部屋を片付けない時に、「きちんと片付けなさい」と注意したり。

ではなにができてたら「ちゃんと」しているのでしょうか。どうなっていたら「きちんと」したと言えるのでしょうか。テストであれば100点に近ければ近いほど「ちゃんと勉強した」と評価されやすくなりそうですね。部屋の片付けであれば余計なものが床や机に出ていなければ「片付いている」と判断されるかもしれません。

ご自身が叱られた時、また誰かを叱った時、この「ちゃんと」や「きちんと」の中身を定義して叱ったことがある方はいらっしゃいますか?仕事の時はこれを定義しないとアウトプットに悪い影響を与える可能性があります。

・バラつきは言葉から生まれる

品質は製品開発と製造から得られるアウトプットです。アウトプットは製造された品物であったり測定されたデータです。それらは工程中の作業で作られ、工程中の作業は作業手順書に従って行われます。その作業手順書は製品の設計書から作られますから、帳票類の表現がそのまま落とし込まれます。

品質を安定させるためには帳票類に記載される文言のブレをなくす必要があります。そのために、まず最初に形容詞や副詞を排除し道具と方法の指示(名詞と動詞)と数字もしくは画像などによる設定値や出力値の明示を行います。

それぞれの帳票を作る時もそうですが、前工程で作成された帳票を参照して次の帳票を作る際にも解釈が人によってブレそうな部分は前工程の担当者に確認した上で書き換えます。

・曖昧さやわからないことは形容詞や副詞の使われ方から判断する

他の業務を担当する人が話す内容で曖昧なことやわからないこと、また外部に業務の一部を委託する上で不明点を明確にしたかったり、事前の確認をしたい時もあると思います。ではそのような時も含めて、会話をしている中で曖昧な所、わからない所があるかどうかを判断するにはどのようにしたらいいでしょうか。

これは筆者がよくやる方法なのですが、相手の言葉の中で形容詞や副詞を使って表現されている部分について、確認するようにしています。例えば「ちゃんとやります」と言われた場合、その「ちゃんと」というのはどういう状態のことを指すのかを確認します。「何がどの程度にどのような状態になっているのですか」とストレートに聞いてしまいます。

聞き方としてはちょっときついように聞こえてしまうかもしれません。ただここに至るまでには、その周辺の業務や作業の状況整理(仕様書や図面、作業手順書など帳票類の版管理の確認、整理や内容確認など)、残っている記録の確認などをし終わっていることがほとんどです。

その上でわからない部分をお聞きすることになるので、かなり細かいポイントにまで絞り込まれていることが多いです。そうであれば事細かに聞くような聞き方でも必ずしも相手はきつめには感じず、一緒に曖昧な点を明確にしようというという姿勢になって頂けることもしばしばです。

・「○○性」という言葉を疑う

「○○性」という接尾辞があります。「○○」という名詞に「性」という漢字一文字を付けることで「○○という性質を持つ」という意味になります。形容詞や副詞を書き換える時には「○○性」という言葉も一緒に書き換えます。

【例1:可能性】
例えばある装置の仕様書に「出力がXとなる可能性がある」という表現があるとします。「出力がXとなる可能性がある」ということは「出力がXとならない可能性もある」ということですよね。つまり出力がXとなる条件と出力がXとならない条件があると言っているわけです。ということは大きく以下の3パターンの条件と出力の組み合わせが存在します。

  1. 出力が確実にXになる条件
  2. 出力がもしかしたらXになる条件
  3. 出力が確実にXにならない条件

出力がXにならないといけないならば、1の条件以外を選択できないように動作制限を掛ける必要があります。XにならなくてもいいならX以外の出力値が得られる条件とその時の出力値を示します(もしかしたらこの時の条件と出力値の組み合わせはものすごく種類が多いかもしれません)。

仕様書の段階ではこのすべての条件か、出力値をXにするための動作制限が明示されている必要があります。動作制限が入るのであれば制限のトリガーになる条件も明示されていないといけないのですが…

【例2:耐熱性】
今度は性能の様に読み取れる「耐熱性」で考えてみます。

例えば容器として販売しようとしている製品の取扱説明書に耐熱性に関する記載をするとします。その時「この製品には耐熱性があります」と書くより、「この製品は150℃まで対応します」と書かれていれば通常生活で使用する上では沸騰させたお湯までは対応できるということが分かります。

さて、それだけで大丈夫でしょうか。150℃の温度に達する熱量が製品に均一にかかるなら大丈夫だけど、局所的な温度上昇がある場合は製品が破損するとしましょう。容器として販売する予定の製品ですので、以下の使われ方が想定できます。

  • 沸騰した100℃の熱湯を入れる
  • 水を入れて電子レンジで加熱する
  • 水を入れて直火で加熱する
  • 200℃に加熱された油を入れる

1つ目と2つ目は製品に均一に熱がかかると思われるので、破損はしないでしょう。しかし3つ目に関しては局所的な加熱ですし、4つ目については耐熱温度を超えています。つまり後半2つは使用方法として不適切ということになります。

実際に容器として販売されている製品の記載を読むと「直火にかけないでください」などと書いてある場合があります。おそらくその製品の仕様書にはこの様な指摘があるのでしょう。

「曖昧なことをしない」ようにしようにも、何が曖昧かわからないと表現が変えられません。曖昧さは閲覧者の誤解や困惑につながります。

これは曖昧さを検出して排除するための一つの方法ですので、念頭において帳票類を眺めると、その帳票の閲覧者が困る箇所が検出しやすくなるかもしれません。

日本人に足りないのは “Trust, but Verify” かもしれない

筆者は社会人になってから一度大学院に入学していまして、“Trust, but Verify(信ぜよ、されど確認せよ)”はその講義の中で聞いた言葉です。それが何の講義だったかは記憶が定かではないのですが、経営者から従業員に対して仕事などの取り組みの中で使われると聞いた記憶があります。「あなたのことは信頼しているよ。でも、だからこそ確認はさせてもらうよ」という風に言うような事がある、との事でした。

私はこれを聞いた時に「あぁ、外注先の会社さんにお仕事をお願いする時や工程監査などに伺う時、自分もそんな気持ちだったなぁ」と思った記憶があり、それからずっと頭の中から離れない言葉です。

そのことを、サウスピークという英語学校のインタビューを受けた際に答えたことがあります。

–品質保証部の方から確認されるということは、責められているかのような感情を抱かれることはありませんか?

そのような感情をいだかれる方もいらっしゃいます。

ですので、こちら側が信頼していることを伝えることが大事だと思いました。海外では「Trust, But Verify」(信ぜよ、されど確認せよ)という言葉があると聞いたことがあります。相手に対して「あなたと一緒に仕事をしたい」「あなたには一定の技術力があることを評価している」と信頼を伝えること、その後に認識の齟齬を確認していく、という順序が必要です。

相手は、別の会社であれ、別部署であれ、自分たちの製品を作ることに協力してくれている仲間です。良い製品を作り、広くお客様へ届けて、使っていただくことで価値を社会に広めることが目的であることを忘れることはありません。

信ぜよ、されど確認せよ。品質保証の経験者に聞いた目的を実現するための仕事術 , サウスピーク(https://souspeak.com/ks/hinsho-shigoto/),引用日:2019/10/3

・もともとはロシアのことわざ

改めてこの言葉を簡単に検索してみたら、元はロシアのことわざだそうです。

Trust, but verify (Russian: Доверяй, но проверяй; Doveryai, no proveryai) is a Russian proverb. The phrase became internationally known in English when used by President Ronald Reagan on several occasions in the context of nuclear disarmament discussions with the Soviet Union.

Trust, but verify , Wikipedia,(https://en.wikipedia.org/wiki/Trust,_but_verify),引用日:2019/10/3

「アメリカのロナルドレーガン大統領がソ連との非核化協議の中で度々引用していることから国際的に知られた」とあります。

どういう経緯で元の言葉がことわざと言われるほどに頻繁にロシアで使われるようになったのかはわかりませんでしたが、国際的に使われるようになったのはいつ実弾を交えることになってもおかしくない東西冷戦下の非核化協議です。その経緯は、どう考えても和気あいあいとした穏やかな雰囲気ではなさそうです。

当時のアメリカとソ連は、お互いのバランスを崩さないようにただいつ攻められても対応できる戦力を残しながらギリギリの交渉を進めていたと思います。「信頼しているよ」と言いながらその心境はものすごく大きな恐怖心と、かついつ何らかの決断を下す必要が出てくるか分からない緊張感を伴うものだと思います。

・製造業の受発注関係も緊張感を伴うもの

筆者がその言葉を聞いた時、その「信頼している」と表明しながらも「だけど確認はさせてもらうよ」という強さ、「その信頼を実際の形として見せてほしい」と表明する意志が、実は製造業における受発注関係にも求められているし個人的には相手先企業に求めていたことだったなと思い至ったのです。

文化や習慣の違いを前提としたコミュニケーションこそが他社を巻き込むプロジェクトチームに必要な考え方です。

Vol.39 ITプロジェクトこそ、”trust but verify”(信ぜよ、されど確認せよ) , スフィアシステムコンサルティング株式会社,(http://sphere-sc.co.jp/column/2350.html),引用日:2019/10/3

同じ言葉をテーマにコラムを書かれていたIT企業がいらっしゃったので、そのコラムから引用させて頂きました。

そもそも自分にできないことだからこそできる人にお願いする意味があるわけですから、この考え方は外注先と取引する時に絶対に必要な考え方です。

しかしここで相手先企業と積極的にコミュニケーションをとる人はどの程度いるでしょうか。加工屋さんに部品の加工を依頼した時、「頼んだ先に細かいことを聞くのは失礼じゃ…」とか「図面も出したし頼んだんだからいちいち細かいこと言わせないでちゃんとやって来てくれよ」とか思ったりしていませんか?

受託事業を営んでいる会社さんでは発注後何も聞いてこないし確認もしてこないで、品物を納めた時に文句を言われた経験のある方はいらっしゃいませんか?または明らかに知らなさそうなのに知ったように言ってくるなぁと感じたことや、コスト面で有利になりそうな施策が講じられていない図面などが顧客から送られてきたことなどはありませんか?

製造業などの受発注関係でも、コミュニケーション上の緊張感があるんですよね。

・曖昧な点は必ず聞いて確認する習慣をつける

もしわからないことや曖昧な点があるのであれば必ず聞いて確認する習慣をつけることをお勧めします。受注する側であればこの部品が搭載される予定の製品が要求している性能はどの程度で、要求仕様や図面に書かれている内容が製品として妥当なものであるのかを確認してしまってもいいでしょう。図面が受け取れるということは機密保持契約は済んでいると思いますので、逆に業務上聞いてはいけない内容ではないと思います。聞いてはいけない内容なら相手先から「そこについてはお話しできません」と言われるはずですし。

発注側であれば、「自分はできないから頼んでるんだ」とか「頼んでるんだからちゃんとやれよ」とかではなく、頼んだ内容が理解されているか、実現のための道筋が立てられているかを確認する責任があります。その確認をしないまま出来上がったものを見て指摘するのは筋が違いますし、確認を怠った結果そのまま製品が納入されてしまえば修正が必要な場合もあり得ます。

発注するということは自分側にできない理由があることになります。時間的に自社の工程が空かないとか、自社にその設備がない、技術がないというケースもあります。特に設備や技術がなく自社でできない仕事であればわからないことや知らないことがあるのが当然です。であれば、相手側に質問する大義名分ができるのです。その大義名分を活用して、相手側に教えて頂き、勉強させてもらいましょう。その勉強は、必ず次回の発注に役立つはずです。

あえて大雑把なくくり方で書きますが、「日本人」は「行間を読む」ことや「空気を読む」ことを要求しがちです。また空気を読んでしまって、不思議に思ってもその場をやり過ごしてしまうこともあるでしょう。

その行間を読むことは、お互いが協力関係にあり、何らかの目的のために前に進まなければいけない開発の現場であれば、むしろない方がいいものかもしれません。

これからの未来のために、自分の状況を表明しためらわずに声を上げましょう。

製品開発のハードルを下げたい

仕事に関連する中でもあまりお話しする機会のない話というのがいくらかあります。せっかくなのでそんな話をこのサイトに書き残しておくようにしようかなと思います。

製造業の業務範囲というのはその企業それぞれで大きく変わります。完成品メーカであれば部材の調達もしくは生産、社内での仕上げ加工や組立て工程を持ち、エンドユーザが使用する上で品質上問題が起きないことを保証しながら販売しなければなりません。

部品加工を受託した会社は顧客の要望を満たしながら部品の出荷品質を安定させ、常に同じものを出荷しなければなりません。

その受託する会社も、機械加工品の様な社員数名~数十名で一社で一つの材料を加工し出荷している会社から、社内で複数工程を持ち、外注先と連携しながらいくつかの組立てを担当することもできる会社さんもあるでしょう。クライアント一社への依存率や業界への依存度も会社さんによってかなり異なるのが現状だと思います。

・大企業の発注をあてにできない

日本製品が必ずしも売れる時代じゃないのは今(2019年10月現在)これを読まれている皆さんもお分かりだと思います。また、今まで製品を出荷する形でビジネスを続けてきた会社が大規模なITサービス系企業と連携したり、場合によっては競合したりもしています。

トヨタ「ライバルはもうホンダではない」の真意 全ての企業の競争相手はGAFAである - PRESIDENT Online

製品販売以外の事業を展開したりして、相対的に製造業の部分のウェイトが下がっている企業もあります。日本だとソニーなどがいい例で、製品を作るだけでなく、音楽や映画、金融に手を広げ、売上高や営業利益などを見ると、そちらの方が製造業が関連する事業よりも額としては大きいものも見受けられます。

ソニー 2018年度決算説明資料  2019年4月26日

製造業の海外流出というような、生産現場が海外に移転したり、人件費の安い海外の会社に発注されてしまうという状況ではなくなり、そもそも日本国内での製造業の仕事が減っているのが現状です。その中でもなんとかまだ世界レベルで製品を売って歩ける会社があるのでいいのですが、でもそのような企業が危機感を抱いており、そのために作戦を考えて行動したことにより徐々に結果を出しているのが2019年の今と言えます。

・自分のやっていることを伝える

日本の中小の製造業の方(他の業種の方もそうかもしれませんが)、大きな企業から仕事を受けている会社が多いと思います。もちろんそれが悪いことなのではありませんが、その流れてきている仕事がなくなる、細くなるのが現在ということになりますし、その風を一身に受けている会社が非常に多いはずで、危機感を募らせてらっしゃると思います。そのために自社の技術を活用して製品を作ろうと思う会社さんが多いのも存じ上げております。

しかし、本当に数名で受託事業を行っている会社さんはこれをやる事すら厳しい状況にいらっしゃると思います。そのような会社さんが取り組めること、それが実は社内に品質保証体制を構築することだったりします。

なぜなら、品質保証体制というのは技術的な対応と開発管理、生産管理、それらを通じた品質管理の意味と内容を整理して、作り始めから販売までを網羅することだからです。つまり元手が0円で済みます。

それらの取り組みを自社のパンフレットでもポスターでもいいです、TwitterなどのSNSやもしお持ちであれば自社のwebサイトでもいいです。それらを公開しましょう。公開することで、「弊社は、ものづくりをこのように捉えて取り組んでいる会社です。」という説明ができます。

それができると自社で製品を作りたいと思った時にもいいことがあります。それは自社の製品がどの程度の生産数量でどの程度の納期なら対応可能なのか整理ができるからです。

実はQA+で今までの記事の内容の様な事を延々と書いているのは、その品質保証体制を構築する上での参考情報にして頂きたいからです。

「うちはISO9001取ってるよ」とか「○○という大企業の要求にずっと応え続けてきたから技術力はあるよ」とか説明できる会社さんはたくさんあると思います。ただそれらのもったいないところは、それだけでは皆さんがどのようなお仕事をしているか、どのように案件に取り組まれているかは説明しきれていない点です。これらの説明ができると、外部からの理解はものすごく高まります。

QA+を運営している株式会社コルプの目的は、ご自身の会社と事業がどのようなことができるのか、改めて見つめ直して頂くための機会のご提供なのです。

「なぜ」と一緒に「もし」を考える

なぜなぜ分析は何らかの事象に対して真因を探る際に用いる手法としてよく聞くと思います。そしてインターネットで検索するとなぜなぜ分析に関する情報ややり方の説明、その歴史などはたくさん出てくるので、読んだことがある方もたくさんいらっしゃると思います。

では、みなさんは実際にお仕事の中でなぜなぜ分析を使ったことはありますか?またはどのようにやるかと言われたらご自身は普段自分でやっているやり方を説明できますか?もしくはなぜなぜ分析を受けた時というのはどういう時でしょうか。

・仕事で「なぜ?」と聞かれると答えづらい

「なぜ?」と聞く時は基本的に原因や理由を知りたい時です。「なぜそれをしたの?」とか「なんでそこへ行ったの?」とかですね。

筆者自身、かつても今も、いろんな方とお仕事をご一緒させて頂く際によく「なぜ?」「どうして?」と質問することはよくあります。またされることもよくあります。

でもですね、普通に考えて仕事中に「なんでこんなことやってるの?」「どうしてこんなことになったの?」と聞かれて気分がいい人はいないと思うんです。仕事でわざわざ質問されるときというのは何か問題が起こった時です。しかもそれが実際にお仕事を頂いている顧客から「なんで?」「どうして?」と聞かれて怖くないわけがないですよね(笑)。

ただ業務上「なぜ?」と問われて答えづらいときにはただ嫌な気分だからとは言い切れない部分もあります。なぜなら、相手が抱えている案件は自社が発注したものだけではないからです。発注側と受注側で機密保持契約と取引基本契約書を取り交わしているとしたら、受注側は他社とも同じ関係を結んでいます。

しかし使う設備や場所は同じ場所だったりするわけです。もしかしたら「どうしてこんなことになったんですか?」と問い質されている仕事の前には別の顧客の案件の対応をしていたのかもしれません。そうであればそこに関連する話題の一部は言えないものかもしれません。

筆者の場合、もし自分が質問する側で、回答する側が答えに詰まるようなケースが起こったとしましょう。そういった場合には「なぜ?」と聞くのを一回止めます。その代わりに「もしかしてこういうことですか?」という一言を挟むのです。

・「もし」が意味するもの

なぜなぜ分析を実施する上でのポイントとして、「質問の回答が得られたらその前段階の疑問が解消すること」というのがあります。

この時、「もしかしてこういうことですか?」とか「もしかしたらこうじゃないんですか?」とか聞くというのは「質問する側としては回答の方向性をこういう風に予測しているよ」という表明になります。そうすると回答者はそれに対して同意する場合は「そうですね」と言いながら実際の状況の様子を教えてくれたりします。違う場合には「いえ、そうじゃないんです」と言いながらやっぱり実際の状況を教えてくれます。つまり「もしかして」という一言は回答を誘発(誘導じゃないんです)するための切り札になります。

この時の「もしかして」というときの注意点としては、自分からあまり話し過ぎないことです。例えば「もしかしてこういうことですか?そうじゃなければこんなことになるなんてありえないですよね?」などと言ってしまった日には「はい、その通りです。申し訳ありません。」で話が終わってしまいます。

たまにここで話過ぎてしまう人がいます。そうするとそれに対して Yes か No の答えしかなくなってしまって、回答者が実際とは違う答えをすることも可能になってしまうので、話過ぎは禁物です。あくまで目的は相手が置かれてる状況を理解し、事象の原因・真因が何なのかをつきとめることです。

・本当に求めるべきもの

なぜなぜ分析の目的として冒頭でも書いたように「事象の真因を求めること」と言われます。まず最初に起こった事象の真因という意味で何が起こったのかを知りたいのはそうだと思います。しかしそれは本当に求めるべきことでしょうか。また実際にその事象を起こした組織が求めたいのはそれでしょうか。

本当に求めたいのは開発する際に、または生産する工程を設計する際に同じようなミスを再発しないことではないのでしょうか?製品の不具合の再発は一回事故を起こせば修正を入れることは可能ですが、そこを次回以降の製品開発時も活用可能な情報にできたらその方が理想的です。

そのためにはその製品もしくはその工程を作っている際に何を考えてそうしたのか、その時に何が漏れていたのかを明らかにしておく必要があります。顧客に対する回答としてはその製品に関する原因究明でも十分かも知れませんが、実は組織内では次回以降の製品開発の効率が上がっていくことが理想ですから、製品開発の活動全体に対する改善活動になる場合が理想です。

すなわちなぜなぜ分析を通じて、実際に業務にあたる際に想定された判断ポイントの条件分岐を想像することが求められます。そのためにはなぜなぜ分析に入る前にすることがありますので、それについては別の記事でご説明します。

品質とは、制御されるべきもの

過去3回にわたって「品質とは」という記事を書き続けました。

品質とは定義されるべきもの
品質とは設計されるべきもの
品質とは管理されるべきもの

品質とは、つまるところ制御されるべきものと言えます。その制御の主体とはその品質を持つ製品やサービスを作っている企業、組織です。企業や組織は、企画した製品やサービスの品質を定義して、それを実現するのに必要な知識や技術、材料を集め社会に提供できる形にします。

「そんなことわかってるよ。うちはちゃんといい品質に維持できてるよ」と思われた方、ちょっと待ってください。「いい」とはどういう意味でしょうか。

・品質はよければいいわけじゃない

よければいいわけじゃないと書いたもののよくするのは実際大変なのでなかなかそこまで行けないんですが…

少なくとも顧客企業から部品の製造を頼まれ、何らかの部品の加工と製造のみを担当するのであれば、顧客の要求を実現することができればそれは「いい」品質と言えます。実際に顧客の要求を実現するのも大変なことがたくさんあると思いますし、その状態を維持するのも簡単なことではないと思います。

しかし、自社で製品やサービスを企画しそれを社会に対してリリースする場合にはちょっと事情が違ってきます。

品質をよくするために何をすればいいでしょうか?
材料をよくしますか?そうすると価格が高くなりますよね。
加工を丁寧にしますか?そうすれば時間がかかります。すると一日の稼働時間を同じにするのであれば一日に作れる個数が減ります。稼働時間を伸ばすのであれば加工の前後の段取りのために作業者を付けなければいけないかもしれません。すると人件費が上がります。

つまり、品質を変えることによってコストと納期が変わります。

・自社におけるQCDの相互作用を理解する

もうお分かりいただけたと思いますが、品質(Quality)というのはQCDの他の二つのパラメータであるコスト(Cost)と納期(Delivery)と相互に影響しあう関係にあります。

コストを削減し、納期を早めたければ品質も抑えることを検討せざるを得ませんし、納期に余裕があれば加工の手間もかけられるかもしれません。むしろ品質を上げることが最優先事項で、多少納期がかかったり販売価格が上がったりすることも許容できるケースもあるかもしれません。


むしろ高級ブランドなどは価格が高くても、納品に時間がかかっても、場合によっては生産数量が少なくてもそのブランドとその商品に見合った品質になっていれば顧客が待ってくれるビジネスというのも存在します。この場合にはむしろ品質は下げてはいけないパラメータになります。

では自社におけるQCDの相互作用というのはどのように見極めればいいのでしょうか。そのための情報は要件定義に落とし込まれる前の企画段階にあります。企画を作った時には以下のようなことが念頭にあるはずです。

  • その企画は誰に向けたものか
  • どのように提供されるのか
  • どのくらいの期間使えるものなのか
  • ユーザはどのように使うものなのか
  • ユーザはそれにいくらくらい払うと考えられるのか

つまり、製品やサービスとして出来上がった時、品質はこれらの項目をすべて含み、すべて合致していなければならないのです。

子供向けの商品であれば子供が使用した時に怪我なく使用できるように、高齢者向けのサービスであればユーザの対象年齢に合わせたサービス内容になっているようにしなければなりません。同じ商品で大人も子供も使う場合が考えられるならば、使用条件がどちらかに偏っていてはいけません。

そして開発され、生産が決まった商品は販売期間中ずっとその企画を実現するために品質が維持された状態で出荷されなければいけません。

しかし「出荷検査で不良がなくても良品率100%にはならない」でも書いている通り、工程に投入される部品の品質は変動するものです。変動するからこそ管理が必要なのですが、品質はその管理によって企画当初に想定された状態に制御されるということになります。

つまり、品質というのは組織によって「制御(Control)」されなければいけないのです。

・“ Quality Control ”を「品質管理」と訳す不思議

どういうわけか日本ではQCというと品質管理と訳されます。でもここまでの話の通り、品質とは「定義」され「設計」され「管理」されることによって「制御される」ものなのです。

ちゃんと品質管理している、いい状態を維持しているということは素晴らしいことですが、その内容はこの順番に従って制御されている結果であることが本来は求められています。

そして組織は品質が制御された結果目標としていた企画を実現するものとなっていることを、品質管理し続けることを通して社会に対して「保証」します。

ISO9001を取得している企業では、組織は品質マネジメントシステム(QMS)を構築し運用することを求められています。システムというのは入力の結果何らかの出力を得るもののことを言います。企業というのは企画をインプットすることで商品やサービスを出力するシステムですと言えます。

つまりこの「品質マネジメントシステムを運用する」ということが、「品質に対して管理値(制御対象となる値)を用いたフィードバック制御を行う」ということを意味するのです。

もしこの話を読んで意外な感じがした方は、ぜひ今一度「自社で行っている品質保証や品質管理は品質を制御できているか?」と立ち止まって考えてみてください。

もしかしたら今まで想像もしてなかったことができる余地があるかもしれません。

品質とは管理されるべきもの

ここまでで新製品の品質を定義し、設計してきました。

品質とは定義されるべきもの
品質とは設計されるべきもの

その品質を管理し、維持するためのシステムを構築するのが生産工程の設計です。
部品の発注先を選んだり、製品設計中から製品の構造から組立工程の構成を考えたり、量産に移行する前に試作品を使って性能や信頼性を評価をしたり、量産に移った後も工程内管理や検査や定期的な信頼性試験を実施するのも全て品質を管理して維持するための行動です。

これらが欠けたら生産する製品の品質は維持できず、歩留まりが下がるか、最悪のケースでは開発中や生産中の品質不良を検出できず市場に流出させることになります。

・開発中の品質管理

開発中の品質管理はまさに「品質の設計」で書いたような部分になります。開発中の品質管理は、製品の品質そのものは作り上げる最中なので、その製品品質を作るためのプロセスが想定通りに稼働しているかどうか、開発プロセスの業務状況が適切かがその管理対象になります。

自社がどのような開発業務を設定し、それに対応するためにどのような組織を作り、開発プロセスを運用しているか(=製品開発のためにどのような段取りをしているか)を決めておき、その通りに業務が進んでいることを確認します。

開発中の業務を通して品質を管理しますが、生産中と異なり、数値で確認するのが難しいように感じるかもしれません。そうであれば、内部監査の結果や日々作られる書類、帳票類の内容の機能に関する項目などを数えるなど、定量化する方法を検討して何らかの指標にするという手もあります。

・生産中の品質管理

生産中の品質管理の目的は開発終了し量産移行した時の品質を維持することです。

工程が当初設計した通りに稼働していることは設備の日常管理で取得できるデータや、各工程間で行われる工程内検査のデータで行っていると思います。
出荷検査で不良がなくても良品率100%にはならない

生産中の管理はこれだけではなく、製品によっては量産中にも信頼性試験を実施します。これも製品の特性や生産数から内容や対象となる抜き取り数が設定されることが多いようです。

・販売後のケア

販売後、不良品が流出していた場合には顧客の手元でその不良が顕在化することもあり得ます。その時のために問い合わせ窓口と修理対応や不良品交換の準備をしておきます。

いわゆるアフターサービスやサポート対応になりますが、この話を管理の所ですることにも意味があります。ユーザの手元で発生した不良品は、そのユーザの使用環境と使用方法によって故障が発生しています。それらは合わせて貴重なマーケティングデータであり設計データです。ですので、ユーザからの問い合わせやクレームをただ面倒なものとせず、その中から使用環境と使用条件、使い方、壊れ方を情報として収集できる体制が必要です。

特に使用環境や使用方法については注意を払って確認します。ユーザは作り手が想像もしなかったような使い方をしたり、想定していなかった使用環境で動作させたりするものです。メーカとしては「そんな使い方しないでくれよ!」と思うこともあるかもしれませんが、逆のことを言えば、ユーザは「こんな場所でこんな風に使えたらこの製品はおもしろいかも、意味があるかも」と感じているということですので、その使われ方をする市場にニーズがあるということです。もし製品仕様として対応できる方法であれば対応させることでビジネスを拡大することができます。

一方で本当に使ってはいけない方法や環境で使っている場合、取扱説明書やパッケージに記載する注意書きの内容が不足している可能性もあります。修理対応の件数によってはその問合せ数に対応して取扱説明書に記載する注意喚起の書き方などをより分かりやすいように変更する必要があります。これらは製造物責任に関連する問題ですのでより注意深く対応します。

ユーザの使用方法や環境が問題ないのに故障が発生している場合、単純に設計上弱い部分が顕在化していることになりますので、市場での不良発生時は開発担当者や設計担当者にも必ず情報を共有し、組織的な改善活動を行います。

これらの管理内容に対応するためには企画時、開発時に適切に品質が設計されていなければ生産時、最悪の場合には市場に向けて販売を開始してから問題が発生した場合に、対応する方法がなく製品を回収(リコール)するしかなくなるというケースも考えられますので、注意しながら進めます。